住宅ローンを利用してマイホームを手にする人も多くいますが、予期せぬ事態に見舞われて、住宅ローンが払えなくなるということも珍しいことではありません。
もしも、住宅ローンを組んだ後に返済ができなくなった場合、どうなってしまうのでしょうか。
そこで今回は、住宅ローンを払えなくなった場合に起こることと、払えない場合の対策について詳しく解説してきます!
- コロナ禍で「住宅ローンが払えない」相談が急増
- 住宅ローンを払えないとどうなる?
- 住宅ローンが払えない場合の7つの対策
- 住宅ローンが払えないときにやってはいけない5つのこと
- 住宅ローンが払えなくなったら早め早めの対策を
コロナ禍で「住宅ローンが払えない」相談が急増
2020年初頭から国際的に猛威を振るっている新型コロナウイルス。
飲食店の時短に代表されるように、各業界で未曽有の事態となっていますよね。
勤め先の休業や売り上げ低迷などによって、仕事や家計に打撃を受けている人は少なくありません。
職を失った人は言うまでもありませんが、毎月の給与が減額となった人やボーナスがゼロになった人など、少なからず家計に影響が出ているという人は多いでしょう。
そんなコロナ禍で、住宅ローンが払えないという相談が急増しています。
家計において、住宅ローンの返済は毎月のしかかってくる固定支出です。
コロナの影響で収入が減れば、家計のやりくりが難しくなり、住宅ローンが払えないという事態につながってくるわけです。
事実、GOEN株式会社「マイホームの購入」に関する調査によると住宅ローンを利用している5%の人が、「コロナの影響で返済状況が悪化している」と回答しています。
住宅ローンを組んだ時点では予期できなかった事態とはいえ、借りたお金を返せないことに頭を悩ませているという方も多いのです。
住宅ローンの返済は住宅ローンの支払いが滞るとどんな事態になるのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
住宅ローンを払えないとどうなる?
コロナを原因としたケースはもちろん、様々な事情で住宅ローンを払えなくなることはあります。
毎月の返済が滞ってしまった場合、どうなってしまうのでしょうか。
優遇金利適用がなくなるだけでなく、家も失う!?
多くの場合、住宅ローンの借り入れから一定期間または全期間、優遇金利が適用されています。
金利には、店頭金利と優遇金利の2種類があり、名前の通りですが優遇金利は店頭金利よりも金利が低く設定されています。
金融機関にもよりますが、住宅ローンの返済を滞納すると優遇金利から店頭金利に切り替わってしまう可能性があります!
要するに、住宅ローンを払えなくなったペナルティというわけです。
具体的な金利差はわずかであっても、借入総額や借入期間によっては総返済額で考えると少なくない負担増になるので注意が必要です。
また、住宅ローンの返済を怠っていると優遇金利の適用がなくなるだけでなく、最悪の場合、家を失う可能性が出てきます!
住宅ローン滞納から強制退去までの流れ
せっかく手にした夢のマイホームであっても、住宅ローンを払えない状況が続いてしまうと、強制退去という事態に陥ってしまいます。
具体的に、滞納から強制退去までの流れを見ていきましょう。
①督促状が届く
多くの場合一度滞納した程度では、金融機関から連絡が入り、すぐに返済するように言われるだけで済むようです。
しかし、2カ月続けて滞納をすると厳しい対応がとられるのが一般的です。
金融機関から督促状が届き、3カ月続くと個人信用情報に記録が残ります。
督促状が届いた段階ですぐに返済できれば良いですが、放置して個人信用情報に記録が残ると、住宅ローンだけでなく、車ローン等他の借り入れや、クレジットカードを作るときなどさまざまな影響が生じます。
②期限の利益の喪失
督促状をもさらに無視して滞納が6カ月続くと、「期限の利益の喪失」を知らせる通知が金融機関から届きます。
滞納が続いてこの期限の利益が喪失すると、金融機関が請求すれば、債務者は残っている住宅ローンの一括返済をしなくてはならなくなるのです!
③競売開始決定
6カ月以上滞納が続くということは、債務者は多くの場合、残りの住宅ローンを一括返済することができない状況にあります。
そのため、保証会社が代位弁済という形をとります。
そして保証会社は代わりに支払った住宅ローンの借入額を取り戻すために、持ち家を売却して住宅ローンの一括返済をするよう、裁判所に競売の申し立てをします。
任意売却の方向で進められるケースもありますが、一定期間買い手が見つからないと競売開始決定となります。
④競売入札期間の通知
競売開始が決定されると、裁判所の執行官などによって住宅の査定が行われます。
事前に住宅査定のお知らせなどは届きますが、この段階になると拒否することはできなくなるでしょう。
査定から1カ月後には、競売入札期間の通知が届きます。
査定に基づく入札価格も知らされ、しばらくすると入札が開始します。
⑤立ち退き
競売に掛けられて入札が開始されると、とうとう自分の住宅ではなくなり、立ち退く必要が生じます。
滞納から1年程度で立ち退く事態になることが多いようです。
この流れからわかるように、競馬まではわりとスムーズに事が運みます。
大切な家を失わないためにも、絶対に督促状や裁判所からの通知などを無視せず、早め早めの対策が必要といえるでしょう。
住宅ローンが払えない場合の7つの対策
住宅ローンを払えないまま放置することの恐ろしさについては理解いただけたかと思いますが、実際に住宅ローンを払えなくなった場合、どうしたらよいのでしょうか?
打てる対策を事前に知っておけば、いざというときに役立つので押さえておきましょう。
1.家計の見直し
住宅ローンの返済が苦しくなったら、早い段階でまずは家計の見直しをしましょう。
収入と支出のバランスをよく分析し、収入面であれば夫婦共働きをしたり、副業や転職を考えるのはもちろん、不要なものを売却しましょう。
支出面であれば、携帯電話料金や電気代など会社毎に比較してより低価格な会社に変更したり、不必要なサブスクリプションサービスを解約したりしましょう。
2.病気やケガが原因の場合は、加入している保険を確認
病気やケガが原因の場合、各種保険が適用されないか加入している補償内容を確認してみましょう。
フラット35以外のほとんどの金融機関では加入が義務付けられている団体信用生命保険は、死亡や高度障害で保険が適用されますが、契約内容によっては三大疾病などでも住宅ローン免除の対象となっています。
また最近の団信では、収入保障保険や就業不能保険なども増えてきており、加入していれば働けない場合に毎月の住宅ローン返済を保障してくれるものもあります。
団信以外でも個人で保険加入している場合は、保険金が支払われる対象にならないか、保険会社に問合せしてみましょう。
医療保険に加入したきりの方は、保障内容が古い可能性があり、最新の医療にかかる費用が対象外となることも珍しくないため注意が必要です!
FPなどの保険の専門家に相談してみるのもよいでしょう。
3.住宅ローンの返済条件を見直す
金融機関に相談して、住宅ローンの返済条件を見直すというのも一つの手といえます。
返済期間を延ばす代わりに月々の返済額を減額してもらったり、ボーナス払いの設定を変更したりすることで乗り切れるケースもあります。
お金を借りるというのは言わば信用問題ですから、無断で滞納するよりも真摯に相談した方が対応してくれる可能性もあるでしょう。
また、コロナの影響を受けた債務者を対象に返済条件の変更に応じてくれる金融機関も多いので、一度相談に行くことをおすすめします。
4.住宅ローンの借り換えを検討
この際、住宅ローンの借り換えを検討するのも良いでしょう。
住宅ローンの借り換えとは、より好条件の住宅ローンに変更することを言います。
特にかなり前に契約した住宅ローンは高い金利が適用されているケースもあり、借り換えることで総返済額を圧縮できることがあります。
借り換えには手数料もかかるので総合的に判断する必要はありますが、月々の返済額を減らせる可能性がある手段として覚えておくと良いでしょう。
自分で様々な金融機関の比較をするのはなかなか大変なので、住宅ローンの専門家に相談してみるのはいかがでしょうか?
無料で相談に乗ってくれるだけでなく、自分にぴったりの金融機関の借り換えシミュレーションを出してくれ、手続き完了までサポートしてもらえるので心強いですよね。
借り換えの相談サイト:あなたに合った、住宅ローンの借換を。
5.コロナが原因の場合は、コロナ版減免制度を利用する
コロナが原因で住宅ローンが支払えなくなってしまった場合は、2020年12月から適用が開始したコロナ版減免制度を利用しましょう。
この制度自体は、東日本大震災などの自然災害で被災された人向けにできたのですが、コロナによる影響が大きいことから特別措置として新たに設けられました。
こちらの制度は、新型コロナウイルスの影響で失業をしたり、収入や売上が減少したことで債務の返済が困難となった個人や個人事業主に対して、生活や事業再建をサポートするものです。
通常、住宅ローンが支払えなくなり自己破産をする場合、当然ながらローン対象住宅を手放すことになってしまいますが、この制度を利用すれば、自宅を手放さずに債務の減額や免除を受けられます。
また個人信用情報への登録を免れられるという利点もあります。
対象となるのは以下の債務になります。
- 2020年2月1日以前に借り入れた債務
- 2020年2月2日~10月30日に借り入れた新型コロナウイルス関連の債務
自己破産しなくてはいけないくらいのひっ迫した状況の際は、利用を検討すると良いでしょう。
6.売却または任意売却
自宅が競売にかけられる前に、売却してしまうという手段もあります。
一般的に競売よりは高く売却できるケースが多いですし、早めに動けば立ち退きの事態を防ぐことができます。
ただし、住宅ローンが残った状態での売却には、抵当権の抹消手続きなど手間がかかり、住宅ローンを組んだばかりだと返済額を上回る売却ができない可能性もあります。
通常の売却に対して、債権者の同意を得て行う売却を任意売却といい、どちらが受ける恩恵が大きいかよく判断する必要があるでしょう。
7.高齢者の場合、リバースモーゲージを利用
リバースモーゲージとは、自宅を担保にして融資を受けることで、生存中は利息の支払いのみ、自分が亡くなった後に自宅を売却して元本を返済するという仕組みをいいます。
その特性上、高齢者でないと契約できなかったり、相続人全員の同意が必要だったりしますが、老後資金を確保する選択肢として押さえておくと良いでしょう。
住宅ローンが払えないときにやってはいけない5つのこと
ここまで住宅ローンを払えない場合に起こることとできる対策について見てきましたが、最後に絶対にやってはいけない注意点も5つ紹介しておきます。
1.放置して逃げる
お金を借りている以上、放置することは当然好ましくありません。
逃げたとしても差押えや保証人に迷惑が掛かりますし、悪質な場合には法律に抵触する可能性があります。
そうした事態にならないためにも督促状が来た段階で、銀行に相談するなど早めの対処が必要です。
2.カードローンやキャッシングの利用
お金が足りなってカードローンやキャッシング、さらにはヤミ金融にまで手を出すと取り返しのつかないことになります。
これらは高金利であることが一般的で、より負担が重くなり、悪循環に陥ることになるので注意が必要です。
一時的に問題を先送りにするよりも、根本的な解決方法を考えましょう。
3.賃貸に出す
住宅ローンを払えないことを理由に、自宅を賃貸に出すという方法は何も問題ないようにも見えます。
しかし、無断でそのような手段を取っていると、契約違反として一括返済を求められたり、より金利が高いローンに切り替えられたりすることがあるので注意が必要です。
金融機関が事前に承認しているケースは問題ありませんし、収入減で特別に賃貸に出すことを認めるケースもありますが、基本的にはNGだということを頭に入れておきましょう。
4.競売にかける
前述した通り、住宅ローンが支払えなくなると最終的には競売にかけられて立ち退きすることになります。
競売にかけられると、任意売却よりも安く入札されることも多く、またそもそもその段階まで進んでしまうと個人信用情報にも傷がつきます。
競売にかけられる前に、なるべく早い段階での対策が必要といえるでしょう。
5.生活保護や自己破産の申請
売却しても住宅ローンの全額返済に及ばず、自己資金でもまかなえないといった場合には、生活保護や自己破産という選択肢もあります。
ただし、これらはあくまで最終手段であり、生活に制限がかかるなどのデメリットも数多くあります。
まずは今回紹介したように考えられる対策を講じてみましょう。
住宅ローンが払えなくなったら早め早めの対策を
今回紹介したように、住宅ローンが払えなくなると最悪の場合、競売や立ち退きなどの事態になってしまいます。
せっかく手に入れた資産を手放すことになる前にできる対策や注意点は多くあるので、後回しにせずにしっかり考えていく必要があります。
特にコロナの影響で返済が難しくなった人には、助成金や融資制度などが用意されています。
どんな手段がとれるかをよく確認したうえで、早め早めの対策を心がけましょう。
監修者からのコメント
私たちは、定期に健康診断を行いますが、そこで少しでも異常があるとどうでしょうか?
指摘事項によりますが、命にかかわるかもしれない不安から、「早く病院にいかないと!」と大半の人は思いますよね。
今回の記事の大きなポイントは、お金のやりくりです。
お金に関してはみんな興味はあるものの、対策に動き出すには腰が重く、ギリギリまで放置しがちです。
初期段階では「まだ何とかなる」と思っていても、気がつくと取り戻せないほど状況が悪化してしまい、今回の記事のように、住宅ローンの返済に困るほどになってしまいます。
そうなる前に対策は早めに行っておきたいものです。
しかしお金についての知識は、学校では習いませんし、自助努力で培うほかありません。
銀行や証券会社等の相談窓口へ足を運んだり、家計に関連した本を購入して知識を深めてみるのも良いでしょう。
また、お金のやりくりは住宅ローンに留まりませんので、ファイナンシャルプランナーに相談してみるのも手ですよ。
この記事を監修した人
株式会社フィナンシャルクリエイト
FP2級技能士
中本 憲宏
メガバンク出身で30年にわたり法人・個人共に幅広い業務に従事。
特に住宅ローンには専門部署や営業店併せて14年間携わり、ローンの受付から申し込みまでの現場経験で培った知見を活かし、住宅に関わるリアルな情報を発信している。
⇒Youtube「お金の教育チャンネル」にて住宅ローンについて解説
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