定年後の返済を少なくするためのテクニック
定年後の返済を少なくするためのテクニックとしては、以下の3つの方法があります。
- 繰上返済して毎月の返済額を減らす
- 10年固定と20年固定のミックスローン
- リバースモーゲージ
それぞれご紹介しましょう。例として、50歳で年収600万円、貯蓄を2000万円とします。式にあてはめると…
3020万円=600万円×0.17×10+2000万円
約3000万円の家を購入できるということになりますね。
繰上返済して毎月の返済額を減らす
定年時に繰上返済して毎月の返済額を減らせば、嘱託社員になって収入が半減しても、またその後年金収入のみとなってさらに収入が減少しても、支払を継続することが可能ですよね。
なお、繰上返済には二つのタイプがあります。
✓期間短縮型は繰上返済によって返済期間を短縮するタイプで、毎月の元利均等返済額はそのまま。
✓返済額軽減型は繰上返済によって毎月の元利均等返済額を減らすタイプで、返済期間はそのまま。
期間を短縮する方が支払利息を安くできるので期間短縮型を勧める人もいますが、今回は支払を減らして、定年退職後も継続することを前提にしていますので、「返済額軽減型」を選択します。
《3000万円を29年元利均等返済0.5%で借りた場合》
この場合選ぶのは変動金利(0.5%)で、期間は最長の29年とします。
多くの銀行で住宅ローンを組めるのは80歳未満となっているためですね。
そうすると、10年後の定年時の残高は2千万円です。
このうちの半分を繰上返済すると、その後の毎月返済額も約半分になるのです。
そして、元の自己資金の2000万円のうち、約半分は温存出来ているということです。
60歳定年時に 半額繰上返済 |
変動金利 0.5% |
---|---|
毎月返済 | 92,626 |
60歳残高 | 20,142,573 |
繰上返済 | 10,142,573 |
その後毎月返済 | 45,985 |
(単位:円)
いかがでしょうか。これならば、定年後に嘱託になったとしても、また年金だけになったとしても続けて行けそうですよね。
なお、変動金利の場合は返済額の25%を貯蓄した上で手取り月収の4割以下にすることをセオリーとして推奨しておりますが、今回その条件は不要です。
なぜか?
2000万円の自己資金を温存していますので、いつでも元本を減らして利息の負担を減らすことが出来るからです。
また5年ルールがありますから、金利が上がっても5年間は返済額は増えませんよね。
加えて、当初の10年間は住宅ローン控除があり、年末の住宅ローン残高の1%の税金が還付されますから金利の上昇による負担はかなり相殺されるのです。
これらの変動金利のポイントについて、詳しくはこちらをどうぞ。
10年と20年のミックスローン又はフラット35Sで定年時に繰上返済する
十分な貯蓄があれば、変動金利で繰上返済することで対応できますが、金利変動リスクをできるだけ負いたくない、という人もいると思います。
そういう場合は10年と20年のミックスローンかフラット35Sで借りて繰上返済することをお勧めします。
《3000万円を29年元利均等返済で10年固定(0.66%)と20年固定(1.01%)半分ずつミックス》
10年固定の方だけを10年後の定年時に全額繰上返済すれば、残るのは20年固定の方だけですね。
つまり、定年後の毎月の返済額は半分となります。
そして、元の自己資金の2000万円のうち、約半分は温存出来ているということです。
変動金利のときよりも少し支払いが多くなりますね。
金利変動リスクを負わないことが支払いに影響しているのです。
60歳定年時に 10年固定繰上返済 |
10年固定 0.66% |
20年固定 1.01% |
計 |
---|---|---|---|
毎月返済 | 47,372 | 49,742 | 97,114 |
60歳残高 | 10,148,378 | 10,315,377 | 20,463,755 |
繰上返済 | 10,148,378 | 0 | 10,148,378 |
その後毎月返済 | 0 | 49,742 | 49,742 |
(単位:円)
《3000万円を29年元利均等返済でフラット35S金利Aプラン(0.82%→1.12%)で借りた場合》
フラット35Sは当初の10年(金利Aプラン)の金利を0.3%引き下げるもので、省エネルギー性、耐震性など質の高い住宅を取得した場合に金利優遇される制度です。
10年後に約半分を繰上返済すれば、その後の返済額が半分になります。
ミックスローンとほぼ近似した結果が得られます。
ただしフラット35は団信保険料が任意で、別契約となっていますので、加入する場合はこれに加えて年1回の団信保険料が必要になります。
60歳定年時に 半額繰上返済 |
フラット35S 0.82%→1.12% |
---|---|
毎月返済 | 96,892 |
60歳残高 | 20.450,014 |
繰上返済 | 10,450,014 |
その後毎月返済 | 48,712 |
(単位:円)
ざっと簡単な説明でしたが、詳しくはこちらをご一読ください。
リバースモーゲージで元本は返済せずに利息だけ払う
そして、最後がリバースモーゲージです。
あまり聞きなれない言葉かもしれませんね。どういうものか、ご説明しましょう。
マイホームを担保にお金を借りて存命中は利息だけ支払い、死亡時に家を処分して元本を返済するスキームです。
いわゆる住宅ローンのリバース(逆)ですね。
住宅ローンの完済時には抵当権が外れますが、再度、家に抵当権を設定して、老後の生活資金や家の修繕に充てる資金を借り入れるということです。
リバースモーゲージは元本を払わず利息だけを払いますので、支払い負担は小さくなります。
最近月々の利息を支払う必要がない商品も増えています。
定年までは普通の住宅ローンを借りて、定年になったらリバースモーゲージに借り換えるという方法です。
そして契約者が死亡した後は配偶者に引き継ぐことが出来ます。
なお、リバースモーゲージの金利は変動金利のみです。
優遇金利などはなく、店頭金利(3%弱)がそのまま適用される感じです。
固定金利は選択できません。
終了の時期が予め決められないからですね。
リバースモーゲージの注意点
元本は最終的に家を売却して回収に充てられることになります。
「契約者が死亡した後は配偶者に引き継げる」ので、その点は安心ですね。
あくまで元本は夫婦両方が他界した後に銀行が家を売却した代金で充てられます。
ですから、その家を子供たちに相続させるということは出来ません。
なので、リバースモーゲージを組む場合には推定相続人全員の書面での同意が必要になります。
また、リバースモーゲージは自宅の担保価値まで借り入れることが出来ます。
そしてその資金の用途は広く、本人又は配偶者の生活にかかる資金であれば何でもOKとなっています(ただし事業目的、投資目的はダメです)。
ですから、医療費や介護費など万が一の時に必要になったら上記の上限の範囲内で何度でも借りることが出来ます。
ただし、自宅の担保価値が上限で年に1回その見直しをしますので、自宅の担保価値が借入額を下回った場合は、下回った部分を1年以内に一括または分割で返済しなければならない点に注意が必要です。
まとめ~今後注目されるリバースモーゲージで定年後も持続可能なプランを立てる
リバースモーゲージは海外では欧米を中心にシニア層の自宅の有効活用法として広く利用されているものですが、日本ではまだまだ知られていないです。
前例も少ないのでよく条件を確認する必要がありますね。
しかし、リバースモーゲージは60歳以上の持家率が9割を超える日本社会が少子高齢化で直面するであろう空き家問題の解決策としても注目されています。
これから徐々に増えていくのではないでしょうか。
そして、ゆとりのある老後生活をするためには、リバースモーゲージもおすすめです。
年齢と年収をもとに専門家に無料相談してみましょう
いまのあなたの年齢や年収から、どのようなマイホーム購入のプランを設計できるのか、ご自身ではなかなか想像できないという方も多いのではないでしょうか。
年齢や年収をもとに満足できる家選びができるように、住宅ローン専門家が無料相談でサポートします。お気軽にご利用ください。
住宅ローンについてもっと知りたい・・・
この記事は役に立ちましたか?
もっと知りたいことがあれば、お気軽にお問い合わせくださいね。