当然通るものと思っていた住宅ローン審査に落ちてしまうと、「もう家を建てることができないのではないか」と悲観してしまう人もいるのではないでしょうか。
しかし、住宅ローン審査に一度落ちたからといってマイホームを諦める必要はありません!
落ちた理由を正しく理解し対策をすることで、住宅ローン審査に通る可能性は十分にあります。
この記事では、どのような理由で住宅ローン審査に落ちるのか、その具体的な理由などについて解説していきます。
住宅ローン審査は、通常「事前審査」と「本審査」の2段構えで行われます。
事前審査はいわゆる簡易審査で、本審査ではより細かく書類等が確認されるという仕組みです。
無事借入するためには、両方の審査に通らなければならないのですが、実際はどちらかの審査で落ちてしまうことも少なくありません。
また複数の金融機関で住宅ローン審査を受けると、ある金融機関では通ったのに、別の金融機関では落ちるということも起こり得ます。
住宅ローンを確実に借りるためには、落ちる原因をきちんと理解してしっかりとした対策をとることが必要です。
誰でも審査を落ちる可能性があるということを前提に、審査に落ちる具体的な理由について見ていきましょう。
住宅ローン審査で落ちる際、まず頭によぎるのが「年収が低いから?」ではないでしょうか。
しかし、年収が高いにも関わらず審査に落ちてしまうこともあるのです!
もちろん金融機関によっては審査基準に含まれない可能性はありますが、年収が高くても住宅ローン審査に落ちる理由として多いケースを解説していきます。
自営業や会社役員の審査では、収入の金額以上に安定性が重視されます。
審査の時点では収入が十分あっても、経営している店舗や会社の状態が傾けば業務上の損失を補填しなければならないといったことが起こりうります。
そうなってしまうと、ローン返済にお金を回せなくなる可能性がありますよね。
そういったことが起こらないよう、自営業者や会社役員の場合には店舗や会社の経営状況なども加味した審査になるのです。
また、住宅ローン審査では家計の中からローンを返済していく余力があるかどうか、という点が特に注目されます。
そのため、審査の際の年収は確定申告でいう「総所得」の金額です。
「総収入」の金額が多いにも関わらず、経費などを差し引いた「総所得」が少ない場合は、審査に落ちてしまうかもしれません。
いくら総収入が多くても、総所得が少なければいずれローン返済が苦しくなるだろうと判断されるからです。
報酬体系が外交員報酬制の場合も、審査にネガティブな影響がある可能性があります。
外交員報酬制とは、保険外交員や不動産営業マンなどの歩合制で働く外交員の報酬を指します。
歩合制は毎月の給与が一定ではなく収入に波があるため、安定性が低いと評価されます。
安定性が低いということはローン返済が滞るリスクがあるとみなされてしまい、審査に通らないという結果になってしまうのです。
毎月ほぼ同じ金額が入ってくる固定給制の人とは審査内容が同じにはならないのは、言うまでもありません。
投資物件を複数持っている場合も、審査を落ちる理由になる可能性があります。
投資物件は投資用のローンを組んで購入するケースが多いため、自宅用の住宅ローンを組む際には審査で返済比率がクリアしているかがチェックされます。
その際、投資用ローンの返済をしながら、自宅用のローンの返済も滞りなくできるのか?というのが懸念点となるのです。
現状では入居者がいて家賃収入から返済ができていたとしても、いつ空き家になり、自分の収入から投資用ローンの返済を行わなければならなくなるかわかりません。
そうなると、ローンが重なり返済できなくなるかもしれないという判断になるのです。
懸念されるポイントは返済比率の問題だけではありません。
自分が住むための家の購入でも「不動産投資用なのではないか」と疑問をもたれ、住宅ローン審査に落ちることも!
なぜなら、投資用のローンの金利は3~4%程度であるのに対し、住宅ローンは1%未満であるためです。
実際、不動産投資用の物件を居住用として虚偽報告をして、住宅ローン審査を通す不正融資が増えており、金融機関の審査が厳しくなっています。
クレジットカードやキャッシングなどの利用履歴がまったくない人のことを「スーパーホワイト」といいます。
金融機関が信用情報の照会をしても、何の情報も載っていない真っ白な状態なのでスーパーホワイトと呼ばれています。
クレジットカードやキャッシングの利用状況から、金融機関が貸し出す相手としてふさわしくないと判断する通称「ブラックリスト」とは真逆の状態です。
実は住宅ローン審査において、意外な落とし穴となりかねないのがこのスーパーホワイトなのです。
スーパーホワイトのように現金払いのみであることは、手元にお金があるということですので、通常ならよいことだと思われがちです。
しかし、住宅ローン審査の場合はそれがハードルとなるのです!
なぜなら、「きちんと借りたお金を期限内に返済できる」という経験を確認できない人に数千万円の多額の融資をして大丈夫なのか?」と金融機関は思うからです。
また信用情報を照会しても何も情報が出てこないので、そのこと自体も何か問題があるからではないかと考えるケースがあります。
など、お金に余裕があるからこそ、これまでクレジットカード等を利用することがなく、現金主義を貫いていただけという場合でも、あらぬ疑いをかけられかねません。
他に思い当たる理由がなく、現金主義の人は、スーパーホワイトが住宅ローン審査の障壁になっている可能性が高いでしょう。
住宅ローン審査の基準は金融機関によって異なります。
そのため、A銀行では通ったのに、B銀行では落ちてしまったということは比較的起こりうる可能性が高いといえます。
とはいえ、まるっきり異なる基準で審査しているのかというとそうではありません。
いずれの金融機関も、安定してローンを返済し続けられるかという点は必ずチェックしています。
そのため、審査で確認される大部分は共通しているといってよいでしょう。
ここでは、どの金融機関でも厳しく審査される傾向があるポイントを3つ挙げて解説します。
住宅ローンは、家計支出の中でも特に大きな割合を占めるものになります。
生活していく上では当然住居費以外にもお金がかかるため、収入の大部分を住宅ローンが占めてしまうと返済が滞りかねません。
そこで金融機関は、収入とのバランスを見て適切な借入金額かどうかを判断します。
その際に重視するのが返済比率です。
返済比率は、年収のうち返済額がどれくらいの割合を占めているかを表すもので、無理なく返済できるのは20~25%だと言われています。
ただし審査時に判断する返済比率は、金融機関により異なります。
20%を基準とする金融機関もあれば、30%を超えていても貸し出せると判断する金融機関もあります。
また、審査時は実際に適用される金利ではなく、審査金利というもので返済比率を計算されるため、低金利の住宅ローンだから返済比率が治まると安易に考えてはいけません。
収入に応じた借入金額にしないと、借りた後に苦しむこととなります。
ゆとりを持った借入金額になるように気を付けましょう。
住宅ローンは借入金額が大きく、長期間かけて返済するため、雇用形態と勤続年数も住宅ローン審査ではかなり厳しく見られる要素だといえます。
雇用が安定していなければ、いつ収入が減り返済できなくなるかわかりません。
正規雇用で働いている人の方が、非正規雇用で働いている人よりも審査に通りやすいのはそのためです。
勤続年数については、ほとんどの金融機関で1年以上勤務していればローンを組めるとしています。
これは貸し倒れを防ぐためです。
勤続年数が短い場合は、何度も転職を繰り返しているのではないか?と疑われることがあるためです。
何度も転職を繰り返すと収入が減ることも予想されるため、金融機関は将来的に返済が難しくなる危険があると判断します。
そうなると、金融機関としては返済能力が低いと判断せざるを得なくなり、審査には通りづらくなってしまうのです。
金融機関は住宅ローンに限らず、ローンの申し込みがあると必ず確認するのが、申込者の個人信用情報です。
個人信用情報とは、信用取引の客観的な事実を示すもので、借入金やクレジットカードの支払い状況などがわかるようになっており、申込者に信用力があるかどうかを判断する材料としてとても重要です。
また個人信用情報は、個人信用情報機関がそれぞれが独自に収集、管理をしており、日本の場合だと、以下3つの機関が管理しています。
金融機関はこの3つ機関のいずれかから情報の提供を受け審査に活用していますが、個人でも取得することができます。
住宅ローンの審査基準は金融機関によって異なりますし、審査に落ちた理由は公表されないことが一般的です。
そのため落ちた理由を自己分析して対策をしておきましょう。
例えば、スーパーホワイトが落ちた理由である可能性がある場合は、クレジットカードを1枚作り、数か月間買い物や公共料金の支払いなどに使うというのもひとつの方法です。
個人信用情報が書きこまれるので、スーパーホワイトではなくなります。
既存のローン借入が落ちた理由と考えられる場合は、できるだけ完済しておくようにしましょう。
勤続年数が短い場合は、1年経つまで待てば落ちにくくなるはずです。
新たに住宅ローンの申し込みをするなら、落ちる理由として想定できるものは可能な限り解決しておくことが大切です。
住宅ローン審査に落ちても、他の金融機関に申し込めば審査に通る可能性があります。
ただし、落ちる理由を分析せず、問題を解決しないまま申し込んだのでは、結果は同じかもしれません。
落ちた理由をきちんと分析して、次の申し込みに備えて体制を整えることが重要です。
そうすることによって、無理のない形で住宅ローンを組めるようになるでしょう。
大切なのは、事前にさまざまな準備しておくことです。多くの人は「将来自宅を購入しようかな」と思ってから、実際に購入するまで多くの時間がありますよね。
その期間に当記事で紹介されている審査に落ちてしまう理由を踏まえて、具体的な準備をしっかりしておきましょう。
特にあまり知られていないスーパーホワイトに関しては、その理由が現金主義ということだけであればすぐに対応が出来ますよね。
また金融機関に「しっかりと返済出来できる」というアピールの為にも貯蓄額は重要です。
例えば、年収500万円・勤続5年・家賃10万円の人の貯蓄が500万円あるとします。
その場合、金融機関からは「家賃払いながら年間100万円も貯蓄できる人なんだ!」と思われます。
このように、収支バランスがきちんととれている人の方が、当然ながら金融機関の印象も良くなります。
人生で一番高額の買い物となるわけですから、住宅ローンを組むために、計画的に準備を行ってきましょう。
株式会社フィナンシャルクリエイト
FP1級技能士・CFP認定者
鈴木 厚
不動産を活用した資産運用のコンサルティングを経験し、その後大手保険代理店で管理職を務める。
現在は独立系ファイナンシャルアドバイザーであるIFAとなり、ウェルスマネジメントとリスクマネジメントの両方の観点からコンサルティングを行う、お金の専門家として活動中。
⇒Youtube「お金の教育チャンネル」にて情報を発信
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