住宅は家財よりも建物の価値が高いと考える方が大半のため、地震保険に家財の補償は必要ないと思われがちです。しかし、買い直しや廃棄処理費用など、意外に高額な費用がかかります。
そこで今回は、地震保険における家財の補償の必要性を紹介します。地震保険の査定基準や補償される範囲なども解説していますので、参考にしてください。
地震保険とは
地震保険とは、地震・噴火・津波を原因として建物や家財が損害を受けたときに、保険金が支払われるものです。
火災保険は火災・水災・風災・雪災などの自然災害や盗難や水濡れ、その他突発的な事故による損害などが対象になるもので、地震保険と火災保険は、損害の対象原因が異なります。地震による火災が原因での損害は、火災保険の加入だけでは補償が受けられません。
住宅ローンを金融機関で契約する際、火災保険は加入必須となっています。それは、火災により被害を受けて住めなくなった場合でも、住宅ローンの返済義務は続くからです。住宅ローンの支払い不可になるのを防ぐために、加入が必須となっています。
一方地震保険は、加入必須となっている金融機関は多くありません。そのため、保険料の負担を減らすために地震保険の加入を見送る人が多く、損害保険料率算出機構によると2018年の世帯加入率は32.2%です。
しかし、近年多くなっている大地震に備えるため、火災保険と合わせて地震保険の加入をおすすめします。もし、地震保険料の支払いを負担に感じる場合は、住宅ローンに組み込むこともできるため、検討してみましょう。
単体での加入は不可
地震保険は火災保険とセットでないと加入できません。すでに火災保険に加入している場合、追加で地震保険に加入することもできます。
契約パターンは3つ
地震保険での補償対象は建物と家財です。建物のみ・家財のみ・建物と家財の3つの契約パターンから選択できます。火災保険の契約パターンも同じ3つですか、それぞれ契約パターンが異なっても構いません。
地震保険の査定基準
地震保険は損害の程度に応じた補償を受けられます。損害の程度は建物と家財、それぞれ全損・大半損・小半損・一部損に分けられます。
建物と家財では、同じ認定でも損害基準が異なるところを注意しましょう。地震保険はさまざまな保険会社から販売されていますが、地震保険法に基づき政府と民間の損害保険会社が共同で補償する形になっているため、どの保険会社で加入しても損害基準は同一です。
地震の被害を受けていたとしても、一番程度の低い一部損にも満たない場合、保険金は支払われません。また、損害保険会社全社の支払金総額は、1回の地震などに対して12.0兆円までと設定されています。もし、12.0兆円を超える場合は、割合に応じて削減される場合もあります。
建物
建物の損害基準をそれぞれ確認しましょう。損害基準は建物の時価に対してどれくらいの割合で損害を受けているのか、床面積に対してどれくらいの割合で損害を受けているのかで判断します。損害基準と合わせて保険金支払額もチェックしましょう。
時価とは、保険対象の建物と同等のものを再建築するために必要な金額から、経年劣化など消耗分を差し引いた金額のことです。時価は築年数が経過するごとに低くなることを抑えておきましょう。
全損
基礎・軸組・屋根・外壁など、建物の主要構造部分の損害額が、建物の時価額の50%以上であれば全損とみなされます。また、焼失・流失した床面積が建物の延床面積の70%以上の場合も全損です。延床面積とは、建物すべての階の床面積を合わせた面積のことです。
全損の保険金支払額は、地震保険の建物に対する保険金額の100%です。時価額が限度となります。
大半損
主要構造部分の損害額が、建物の時価額の40%以上から50%未満であれば大半損とみなされます。また、焼失・流失した床面積が建物の延床面積の50%以上から70%未満の場合も大半損です。
大半損の保険金支払額は、地震保険の建物に対する保険金額の60%です。時価額の60%が限度となります。
小半損
主要構造部分の損害額が、建物の時価額の20%以上から40%未満であれば、小半損とみなされます。また、焼失・流失した床面積が建物の延床面積の20%以上から50%未満の場合も小半損です。
小半損の保険金支払額は、地震保険の建物に対する保険金額の30%です。時価額の30%が限度となります。
一部損
主要構造部分の損害額が、建物の時価額の3%以上から20%未満であれば、一部損とみなされます。また、全損・大半損・小半損に至らない建物が、床上浸水か地盤面より45cmを超える浸水を受けた場合は一部損と判断されます。
一部損の保険金支払額は、地震保険の建物に対する保険金額の5%です。時価額の5%が限度となります。
家財
次に、家財の損害基準を紹介します。損害基準は家財全体の時価に対してどれくらいの割合で損害を受けているのかで判断します。保険金支払額とあわせて確認しましょう。
全損
損害額が家財全体の時価80%以上であれば、全損とみなされます。全損の保険金支払額は、地震保険の家財に対する保険金額の100%です。時価額が限度となります。
大半損
損害額が家財全体の時価60%以上から80%未満であれば、大半損とみなされます。大半損の保険金支払額は、地震保険の家財に対する保険金額の60%です。時価額の60%が限度となります。
小半損
損害額が家財全体の時価30%以上から60%未満であれば、小半損とみなされます。小半損の保険金支払額は、地震保険の家財に対する保険金額の30%です。時価額の30%が限度となります。
一部損
損害額が家財全体の時価10%以上から30%未満であれば、一部損とみなされます。一部損の保険金支払額は、地震保険の家財に対する保険金額の5%です。時価額の5%が限度となります。
地震保険における家財補償の必要性
建物と家財の両方に地震保険を付けると、もちろん保険料が高くなります。建物は高額なため、多くの方が地震保険を付けようと考えますが、家財に対しては「高額なものはないから構わない」と付けない方もいます。しかし、地震保険は家財に対しても備えておくにがおすすめです。
家財の損害は建物補償ではカバーされない
地震保険の建物補償は、家財の損害はカバーできません。建物内にある家財が損害を受けた場合でも、建物補償しか付けていなければ、家財の再購入などは自費で賄う必要があります。高額な家財は必要なくても、まとめて揃えるとなると費用は高額になりがちです。
地震による被害は、建物の方が大きいとは限りません。現在は大地震に備えて建物に対しての耐震基準が高くなっています。そのため、建物の被害が小さく、家財が大きな被害を受けることもあります。
地震保険は損害の程度に応じて保険金が支払われます。建物補償のみしかつけていなければ、たとえ家財の損害が大きくても、建物の損害が小さければ支払われる保険金が少ないため、保険金だけでは修復できません。
家財の損害は生活再建に大きな影響を与える
大地震の発生後は、使用できなくなった家財の処理も大変です。洗濯機や冷蔵庫などの高額な家電の買い替えにも費用がかかりますが、使用不可になった家財の廃棄費用がかかる場合もあります。家財補償があれば、廃棄費用に充てることも可能です。
そのほか、住宅がすぐに住める状況でなければ仮住まいの賃料や引っ越し費用など、家財以外の生活再建費用に充てることもできます。
地震保険により支払われる保険金は、使い道が限定されないため、生活再建費用に幅広く利用できます。
地震保険料は割引制度で負担を軽減できる
建物と家財の両方を補償したくても保険料が高いと感じるなら、割引制度を利用しましょう。地震保険は建物の耐震性や築年数によって割引が適用されます。地震保険料は保険会社による違いはないため、どの保険会社の地震保険でも同一です。割引制度の内容は、以下のようになっています。
●建築年数割引
昭和56年6月1日以降に新築された新耐震基準の建物なら10%割引
●耐震診断割引
建築年数割引対象の建物でなくても、地方公共団体などによる耐震診断や耐震改修の結果、建築基準法「(昭和56年6月1日施行)」の耐震基準を満たす場合は10%割引
●耐震等級割引
耐震等級1:10%割引
耐震等級2:30%割引
耐震等級3:50%割引
●免震建築物割引
「住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく「免震建築物」である場合は50%割引
免震建築物とは、地面の上に免震装置(地震の力を緩衝する装置)があり、その上に建てられている建物のこと
割引制度は併用できませんので、最も割引率が高い制度を利用しましょう。
地震保険で補償される家財の範囲
具体的に、どのようなものが地震保険で補償される家財にあたるのかを確認します。家財に含まれないものの中には、一般的に家財と判断されそうなものもあるため気をつけましょう。
家財に含まれるもの
家財に含まれるものは、外に運び出せる電気機器類・食器陶器類・家具類・身の回り品・衣類寝具類が代表的なものです。
●電気器具類
洗濯機・冷蔵庫・テレビ・電子レンジ・パソコンなど
●食器陶器類
食器・調理機器・食料品など
●家具類
タンス・棚・机・椅子など
●身の回り品
靴・かばん・本など
●衣類寝具類
ベッド・布団・服など
品目ごとに家財全体の損害に対する構成割合が定められています。割合を超えた分の補償は受けられないため、注意しましょう。
家財に含まれないもの
外に運び出せるものでも、以下の内容のものは家財に含まれません。
- 通貨
- 切手
- 印紙
- 有価証券
- 設計書
- データ
- 預貯金証書
- 1個または1組の価格が30万円を超える高額な貴金属や美術品
これら以外にも動物や植物、自動車も家財ではありません。また、商品・什器・設備など業務に関する動産も家財補償の対象外です。
火災保険にも建物と家財の補償があります。火災保険では家財となるものでも、地震保険では家財にならないものもあるため注意しましょう。
地震保険に加入する際のポイント
地震保険はさまざまな会社から販売されており、特約は選ぶ必要があります。地震保険に加入する際のポイントを確認しましょう。
付帯できる特約を確認する
地震保険は付帯できる特約を確認して、必要と考えるものは追加しましょう。地震保険の支払額は火災保険の支払額の50%です。また、品目ごとに構成割合が定められているため、地震による損害をすべてカバーできるわけではありません。
付帯できる特約は保険会社によって異なりますが、地震保険の補償金額を100%にできる火災保険の特約を付帯できるところもあります。
保険料や補償内容はどの保険会社でも同じ
地震保険は保険会社が異なっても保険料や補償内容は同じです。地震保険は地震保険法に基づいて政府と損害保険会社が共通で運営されています。そのため、補償内容も保険料も違いがありません。
しかし、火災保険の特約によって違いが出る場合があります。上記で説明した上乗せの特約補償特約をつけると、保険料や補償内容は異なってきます。
保険金が支払われない場合もある
地震によって被害を受けたとしても、以下のケースであれば保険金は支払われません。
- 建物や家財の紛失、または盗難による損害
- 地震が発生した日から10日経過したあとに生じた損害
- 保険契約者・被保険者またはこれらの者の法定代理人の故意もしくは重大な過失、または法令違反にあたる損害
- 塀・垣・門のみに生じた損害
これらのケースに加えて、家財に含まれないもので紹介したものに対する損害も保障されません。
次にこちらでは、住宅ローンの仮審査と本審査について、チェック基準や承認を得るコツを解説します。住宅ローンを利用する際に役立つ情報となっておりますので、ぜひご覧ください。
まとめ
近年の住宅における耐震性の向上から、地震による被害は必ずしも建物の方が大きいとは限りません。家財は買い直しの費用だけでなく廃棄費用がかかる場合もあるため、予想外の負担がかかることもあります。
多くの金融機関では、住宅ローンを組む場合に火災保険の加入が必須となっています。地震保険は必須となっていない金融機関もありますが、新居を自然災害から守るためにも、地震保険も同時に加入しましょう。
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