9月15日の北朝鮮による2発目のミサイル発射によって一時長期金利が下がりましたが、それほど大きくは下がらず、今は上がってきてます。これに対して専門家は「市場は冷静に対応した」と評しています。
でも、このまま行くと北朝鮮は核ミサイルを完成させ『核保有国』になるのは時間の問題ですよね。そうでなくても、冷静に考えて、自分の国の上空を核を搭載(している可能性のある)ミサイルが通過してて、自分を含めよくこんなにも冷静でいられるなと思います。
では、この市場の金利に対して住宅ローンの金利がどう動くのか?についてお話ししたいと思います。
民間金融機関の住宅ローンとフラット35の住宅ローンでこう違う
借りるときの手続きは同じように銀行でやりますけど、その中身は全然違います。中身が違う、つまりお金の出どころが違うということです。お金の出どころが違うと、金利の決まり方も違ってくるという事です。
民間金融機関の住宅ローンの金利はそれぞれの銀行が決める
銀行は私たちに貸す住宅ローンの資金を金融市場から調達しています。そして自分の利益を乗せて我々に住宅ローンを貸しているのです。
例えば銀行が金融市場からお金を調達するときの金利が0.3%の時に1%で住宅ローンを貸すと、その差の0.7%が銀行の儲けとなります。
つまり、0.7%儲けられるだろうと思って1%という住宅ローンの値決めをするわけです。
民間銀行の住宅ローンの金利は毎月の1日に発表され、原則としてその月はその金利がずっと適用されます。金融市場の金利は下のグラフのように日々上がったり下がったりするんですが、あくまで1日に発表された金利で住宅ローンを貸すということです。
しかし、金融市場の長期金利というのは、なかなか読みにくいんですよ。これは北朝鮮リスクに対する最近の長期金利を見てもわかりますよね。
銀行自身も金融市場に参加していますが、市場総体としてどんな動きになるのか?ある程度の法則や理論はあるものの、一見大きなリスクに対して無関心だったと思うと、センセーショナルな事件に対してはヒステリックに過剰反応することもあり、一筋縄ではいかないのです。
ですから、銀行が住宅ローンの金利を決めるにあたって考えることというのは…
✓金利が上がりそうな時は今より少し高めの住宅ローンの金利設定にする。
✓金利が下がりそうな時は今より少し低めの住宅ローンの金利設定にする。
これが基本になります。
また、市場の金利動向以外の要素も加わります。基本的には今後の長期金利が上がりそうなら、住宅ローンの金利も上がりそうだという予想になるのですが、そう一筋縄にもいかないのです。各銀行の営業戦略も絡んでくるんですよ。
✓金利が上がりそうでも住宅ローンを獲得したい場合はあえて低めの金利設定にする。
✓金利が下がりそうでも自行の利益率を上昇させたい場合は高めの金利設定にする。
こうした営業戦略を決めるのはそれぞれの銀行です。なので、銀行の住宅ローンの金利動向というのは、必ずしも金融市場の動向と完全に一致するとは限らない、という予想の難しさがあります。
金融市場の金利がダイレクトに反映するフラット35
フラット35の金利は、住宅金融支援機構がその事務を代行する金融機関からフラット35の債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて「機構債(RMBS・住宅ローン債権担保証券)」という形で販売しています。分かりやすく図に表すとこんな感じです。
銀行は融資事務を代行して右から左に資金を流すだけですから、固定の手数料を取るだけです。そして住宅金融支援機構は国の出先機関ですから、これも固定的な経費を取るだけです。
私たちが借りるフラット35の金利は機関投資家が買う機構債の利回りに事務コスト(機構と取扱金融機関)を足して決まります。つまり、より市場に近いところで金利が決まり、銀行の営業方針が間に挟まることが無いのですよ。金融市場の金利が比較的ダイレクトに反映しやすいのがフラット35の金利なのです。
直近までのフラット35の金利推移とその資金になる機構債の表面利率が発表された日の長期金利(10年国債利回り)の推移を並べてみると、ほぼ同じ動きになっていることが分かると思います。機構債の表面利率は毎月の20日前後に公表されます。ですから、それが分かれば翌月のフラット35の金利がかなり正確に予測できるのです。
フラット35は10月から新団信制度で団信保険料が金利に込みになる
それと忘れてならないのが、2017年10月1日の申し込みからのフラット35の機構団信のリニューアルです。
団信(団体信用生命保険)とは、取扱金融機関が住宅ローン利用者を被保険者として生命保険に加入するものです。利用者に万が一のことがあった場合には保険会社から金融機関にその時点での借入残高相当額の保険金が支払われて、住宅ローン残高はゼロになります。
この団信の新制度の骨子は以下の2つです。
✓従来の団信保険料は年一回ローン残高の0.358%を払う方式だったが、今後はフラット35の金利に0.28%上乗せとなり毎月の返済と一緒に支払う、実質的な団信の値下げ。
✓従来の団信の保障範囲は高度障害と死亡が条件だったが、今後は身体障害(身体障害者福祉法1級or2級)についても保障の範囲に含まれる、範囲の拡大。
新制度になっても、フラット35の団信加入は任意です。これはリニューアル後も変わりません。ちなみに、団信に加入しない場合は団信込みの金利から0.2%引き下げとなります。
✓団信保険料としては値下げと充実。
✓金利としては見かけ上は値上げ。
従来の団信保険料は年に1回、1年分を支払う方式になっていましたが、10月の申込からはこの団信保険料がフラット35の金利に込みとなり、毎月の返済額に上乗せされることになりますので、こちらで10月の金利を予測しています。是非読んでみてください。
千日のブログ【金利予想】10月のフラット35の金利は新団信制度で1.36%と予想しました。
フラット35の基本から気になる情報までまるっと知りたい方は、こちらの記事も合わせて読んでみましょう。
まとめ~複数の金融機関、金利タイプで審査を出しておきましょう
金融市場の動きというのは、こうなったら必ずこうなる、というセオリー通りには行かないのが常です。
家の購入、または住宅ローンの借り換えというこの一大事に不安定な情勢が重なってしまった我々としては、2重3重に打つ手を用意しておく必要があります。つまり、一つの金利タイプや一つの金融機関に決め打ちしてしまうのではなく、複数審査を通しておいてその時々の情勢によって切り替えられるようにしておく必要があるんです。
金利が決まる仕組みの異なる商品でそれぞれ審査を通しておき、情勢の変化に応じて有利な方を選べるようにしておくことを強くお勧めします。
つまり、こんな感じです。
✓市場の金利が大きく上がってしまったら連動してフラット35の金利も上がりますが、民間金融機関の住宅ローンはそれほど上がらないこともあります。
→民間金融機関が有利
✓市場の金利が大きく下がった場合は連動してフラット35の金利も下がりますが、民間金融機関の住宅ローンはそれほど下がらないこともあります。
→フラット35が有利
今回は民間の住宅ローンとフラット35の金利の決まり方についてお話しました。次回は変動金利と固定金利の決まり方についてお話しようと思います。お楽しみに!
家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本
千日 太郎 (著) / 日本実業出版社
文:千日太郎
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