一括返済っていいの?
住宅ローンの残高が減ってくると、一括返済をお考えになる方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、メリットやデメリットを確認しないと損をしてしまうかもしれません。今回は50代男性の方よりいただいた住宅ローンの一括返済に関する相談に、住宅ローンスペシャリストの赤神がお答えします。
住宅ローンの一括返済とは?
現在、借りている住宅ローンを全額返すことを、一括返済と言いますよね?
そうですね。一括返済にも2つのパターンがあります。
今回は、一点目の一括返済する場合について詳しく教えてください!
住宅ローン一括返済のメリットは金利!
早速ですが、一括返済のメリットは何だと思いますか?
一括返済ができれば返済期間も早まるので、その分の利息を払わなくて済みますよね?
正解です!
例えば、35年ローンの固定金利1.5%で借入金が3,000万円の場合、どのくらい利息を払うと思いますか?
えーっと、その条件だと返済総額は約3,900万円なので、約900万円の利息を払うことになりますね。
はい、そうです。もし、20年後の支払い240回目に一括返済した場合は、元本は約1,500万円で利息分は約700万円支払うことになります。
約200万円の利息が削減できますね!
保証料が返ってくる
他にもメリットがあります。住宅ローンを組むときに保証料を払うことを知っていますか?
はい!住宅ローンを組むときの諸費用に含まれていますよね。
住宅ローンの保証料は一括で払う場合と金利に組み込む場合があるのですが、一括で支払う場合は、一括返済した後に返ってきます。返ってくる金額は、それぞれの金融機関や保証会社によって違うので、事前に聞いておくといいでしょう!
住宅ローン一括返済のデメリットは何か?
一括返済できる状況であれば、なるべく一括返済した方いいと感じたのですが、逆にデメリットはないのでしょうか?
するどいですね。実際にいくつかデメリットがあるんです。
利息の削減はとても魅力的ですが、気を付けて行わないといけません。
詳しく教えてください!
住宅ローン控除が受けられなくなる?
住宅ローン控除をご存知ですか?
住宅ローンの残高に対して1%の税金が控除される制度のことですが、これが受けられなくなる可能性があります。
住宅ローン控除といえば最大10年間、受けることのできる制度ですよね!
つまり、住宅ローンを借りて10年以内は一括返済しない方がいいのでしょうか?
そうですね。先ほどと同じ条件で、35年ローンの借入金3,000万円で固定金利1.5%の場合、総額約260万円が控除される計算になります。
焦って返済して損をする場合があるなら、10年間しっかり控除を受けた方がいいということですね。
返済額次第で家計が大変に!
焦ってはいけない理由がもう一つあります。
先程のアドバイスを聞く限りでは、住宅ローン控除が終了した11年目に一括返済するのがお得だと思ったのですが、違うのでしょうか?
確かに11年目に一括返済するのはお得です。しかし、例えば一括返済のために無理をして貯金残高がゼロになったらどうでしょうか?
それは考えただけでも怖いことですね……。
万が一の出費が必要なとき、貯金がゼロだったら対応できなくなってしまいます。
それだけではありません。
住宅ローンを一括返済した後に、住宅ローンよりも金利の高い消費者金融でお金を借りたり、カーローンでクルマを購入したりする人も損をしてしまう可能性が高いですね。
つまり、一括返済は貯蓄にある程度余裕があるときに行うことをオススメします。
保険の保障が受けられなくなってしまう
タイミングさえ気にしておけば、一括返済しても大丈夫なのでしょうか?
タイミングを気にすることも大切ですが、他にも気にしなければならないことがあります。
う〜ん、それは一体何でしょうか?
住宅ローンを契約する際、多くの人が生命保険である団信(団体信用生命保険)に加入することでしょう。一括返済すると、その団信の保障がなくなります。
一括返済をしたにも関わらず、貯蓄が底をついたタイミングで借主がお亡くなりでもしたら、残された家族が大変ですね…
一括返済するときに充分な貯蓄があることも大切ですが、保険の保障がなくなることも含めて考える必要があります。
住宅ローン一括返済後の注意すべきポイント!
ポイントをしっかり確認しよう
一括返済に隠れているリスクを知ることが大切なのは理解できました。
それでは、一括返済時や一括返済後に注意すべきポイントはありますか?
はい、ありますよ。
注意すべきポイントを詳しく教えてください!
住宅ローン一括返済の手続きと手数料はどうなっているの?
そもそも、一括返済をするためには、手続きをしっかりと踏まないといけません。
そうですよね。
住宅ローンの口座に残金を支払えば、住宅ローン契約終了とはいかないですよね。
ちなみに、手数料は必要なのでしょうか?
金融機関によって別途手数料を取る場合もあれば、まったく手数料がかからない金融機関もあります。基本的には手数料がかかるものと思ってください。
手続きはどうなっていますか?
例えば、フラット35で一括返済すると下記のような流れになります。
ホームページや窓口、電話などで申し込むと必要書類がお手元に届きます。記入後に返送し、案内に従って支払います。
フラット35は一括返済の手数料が無料です。細かな手続きの流れは各金融機関で変わるので注意しましょう。
抵当権抹消の手続きはお忘れなく!
まず、手続きを終えた後に忘れてはいけないのが抵当権の抹消です。
抵当権は住宅ローンを借りる際に、購入した住宅に担保を設定するものですよね。具体的には、借主が住宅ローンを返済できなかった時に、金融機関が担保としている不動産などを売却して弁済を受ける権利のことですよね?
でも不思議ですね。完済と同時に外れてもよさそうなのですが……
抵当権の設定登記は金融機関指定の司法書士が行いますが、抵当権を抹消する登記は自身でしなければいけません。
どこで手続きを行えばいいんですか?
融資を受けていた金融機関から必要書類をもらい、法務局で手続きを行います。司法書士に手続きを依頼できますが、1万〜2万円ほどの手数料を支払わなければいけません。
自分で手続きをすれば、不動産1件につき1,000円でできるのでオススメです。
(土地・建物で通常1,000円×2、複数に土地が分かれている場合はその件数分が必要)
詳しい方法は法務局に確認してみてください。
税務署から税金についての連絡が来るかも!
税務署から連絡が来るとは、どういうことなのでしょうか?
住宅ローンの一括返済は大きな金額なので、そのお金について税務署から連絡が来ることがあるんです。
そうなんですね。でも、なぜ税務署から連絡が来るのですか?
例えば、一括返済の資金を親から譲渡されたり、妻と共働きで妻の口座から自分の口座に振り替えたりすると贈与税がかかります。
え!奥さんからのお金も税金がかかってしまうんですか?
そうなんです。
贈与税は年間110万円以上を受け取ると発生します。しかし、親から住宅ローン返済用の資金をもらうときは、特例によって非課税にすることが可能です。
特例を受けるには、どうしたらいいのでしょうか?
主に下記のような条件を満たす必要があります。
(1)贈与金額上限が、省エネ等住宅で1,200万円、通常の場合は700万円。
(平成32年3月末までの上限額)
(2)贈与される側の合計所得が2,000万円以下であること
(3)贈与税の申告を行うこと
詳しくは、
国税庁のHPで確認しましょう。
夫婦で一括返済を考えている場合は注意しなければいけませんね。
そうですね。他にも、お金がどのように発生したのかが分かるように、相手が親であってもしっかり契約書を作ることが大切です。
利息計算で一括返済のシミュレーションしてみよう
借入金3,000万円、年収600万円以上、固定金利1.5%、返済期間35年、元利均等返済の住宅ローンを例に考えてみましょう。下の表は借り入れから5年後、10年後、20年後、30年後に一括返済をした場合、削減できる利息の一覧(目安)です。
|
5年 |
10年 |
20年 |
30年 |
残り利息 |
6,452,262 |
4,588,943 |
1,736,218 |
204,765 |
支払い利息 |
2,126,751 |
3,990,070 |
6,842,795 |
8,374,248 |
住宅ローン控除額 |
1,397,000 |
2,617,000 |
2,617,000 |
2,617,000 |
実質支払利息 |
736,751 |
1,373,070 |
4,225,795 |
5,757,248 |
住宅ローン控除を受け、かつ支払利息−控除額で5年後に一括返済した場合、実質約74万円。10年後なら、実質約137万円しか利息を支払っていない計算になりますね!
住宅ローン残高の一括返済はいつするといいの?
いちばん得する一括返済のタイミングは、住宅ローン控除が終了した後だと思うのですが、本当にそれがベストなタイミングなのでしょうか?
お得さを考えたら、そのタイミングで返済することをオススメします。
しかし、実際は家族構成やこの先に必要になる資金状況によって異なります。
確かに子供の進学や養育費など、時期によって大きな金額が必要になるタイミングがありますよね。
そうです。住宅ローンの残高に対し、これから必要になる資金を照らし合わせ、無理のないタイミングを検討するといいでしょう。具体的には、子供が中学校に進学する前や子供の独立後、借主の定年までの期間などが挙げられます。
無理のない返済を心がけることが大切なんですね。
まとめ
自分の状況や家族の状況によって必要な資金をしっかりと確保しているのであれば、住宅ローンの一括返済は経済的にとてもお得な選択肢と言えるでしょう。住宅ローンの一括返済を行う場合はデメリットを知り、よく検討した上で実行しましょう。
しかし、自分で調べて正確な状況を判断するのには限界がありますよね。そんな方のために、ご自身の現在の収入や住宅ローンの返済状況などから、一括返済や繰り上げ返済が最適かどうかを、専門家が無料相談でサポートします。お気軽にご利用ください。
住宅ローンスペシャリスト
「日本一住宅ローンに強い会社」iYell株式会社に在籍する住宅ローンスペシャリスト。住宅ローンのことならなんでもお任せ。どんな質問にも親身になって答えてくれる。一見怖そうだが、とても気さくで、最近、自身もマイホームを購入して幸せオーラ全開。
住宅ローンについてもっと知りたい・・・
この記事は役に立ちましたか?
もっと知りたいことがあれば、お気軽にお問い合わせくださいね。
住宅ローンに関するご相談はコチラ