住宅ローンで購入した家は、その後何らかの理由で住まなくなったとしてもローンを支払い続けなければなりません。
せっかく購入した家をそのまま空き家にしてしまうのは勿体ないですが、その場合「賃貸に出して他の人に住んでもらう」という方法は可能なのでしょうか。
今回は住宅ローンで購入した家を賃貸に出すことについて、問題があるのか、注意点などについて説明します。
- 住宅ローンで購入した物件は原則「賃貸不可」
- 住宅ローンで購入した物件を賃貸に出したらバレる!?
- 住宅ローンで購入した家を賃貸に出す方法
- 住宅ローンで購入した家を賃貸に出す際の注意点
- 住まない家は賃貸に出す以外に何か方法がある?
- 住宅ローンで買った家は、賃貸に出さないようにしよう
住宅ローンで購入した物件は原則「賃貸不可」
結論から言えば、住宅ローンで購入した物件は原則として賃貸に出すことができません。
その理由は、住宅ローンの条件にあります。
以下で詳細を説明していきます。
住宅ローンのルール
そもそも、住宅ローンは「ローンの借入を行う本人、もしくはその家族が居住するための住宅および付随する土地を購入するための資金を融資する」というものです。
つまり、住宅ローンを融資する金融機関は、借入人がその家に住むという前提でお金を貸してくれるのです。
そのため、住宅ローンを使って家を購入した場合、完済まではその家に住み続けることが融資の条件となります。
もしも賃貸目的で物件を購入するのであれば、不動産投資ローンや賃貸住宅ローンなどを利用しなければなりません。
不動産投資ローンとの違い
借入の目的
不動産投資ローンと住宅ローンでは借入の目的が異なります。
不動産投資ローンでは「他人に貸して収益を得る」ために借りますが、住宅ローンは「自分が住む」ために借りるため、金融機関もそれぞれの目的に沿った審査を行うことになります。
どちらも返済能力や信用度を確認しますが、不動産投資ローンの場合は家賃から得た収益によって返済の資金を得るため、購入する物件の収益性も審査対象となっています。
借入名義人
住宅ローンは借入人本人と家族が住むことを目的に借りるという特性上、法人名義での借入はできません。
不動産投資ローンは法人名義でも可能であるため、収益の安定化のために利用する企業も少なくありません。
金利
ローンを組む側として、最も重要といっても過言ではない金利にも大きな違いがあります!
当然金融機関によっても異なりますが、住宅ローンの金利は一般的に0.4%~2.45%となってるのに比べて、不動産投資ローンは3.00%~4.00%とかなり高めになっています。
数千万円のローンを組むのが一般的である住宅購入なので、この差はかなり大きいですよね。
住宅ローンで購入した物件を賃貸に出したらバレる!?
住宅ローンで購入した物件を無断で賃貸に出した場合、まずバレます!
どうしてバレるのか、バレた場合どうなるのかについて以下に説明します。
どうしてバレる?
バレるきっかけとして最も多いのは郵便物です。
住宅ローンの契約をした金融機関は、住宅ローン控除に関する書類や残高証明書を借入人に送ることがあります。
この時送付する住所は「購入した物件の住所」です。
もしも賃貸に出していた場合、郵便物の宛名と物件の居住者が異なることから、郵便局が発送元に差し戻しを行います。
こうして、金融機関に借入人本人やその家族の居住実態がなく、賃貸を行っていることがバレてしまうのです。
リスク高すぎ!バレたらどうなるの?
では、実際にバレてしまった場合、どうなってしまうのでしょうか。
まず、金融機関は住宅ローンの資金使途として「申込人が居住される住宅の取得資金」ということを定めており、勝手に賃貸に出してしまうと申込人の契約違反を理由にローン契約を破棄することができます!
住宅ローンの申込人側の過失となるため、金融機関は残額の一括返済を求める可能性があります!
住宅ローンの借入金額の数百万円~数千万円を一括で返済するのは相当厳しいですよね。
また一括返済を求められなくても、金利の高い不動産投資ローンへの借り換えが必要になるケースが多いです。
そしてそれだけではなく、なんと悪質だと認められた場合には詐欺罪での刑事告訴が行われることすらありうるのです!
実は不動産投資の営業マンの中には、金利の低さや、審査条件がゆるいなどの理由をつけて、不動産投資用の物件に対し、住宅ローンを勧める人もいます。
「セカンドハウスとして住宅ローンで購入し、賃貸に出せば金利が安く済む」という売り文句で、裏技的に住宅ローンを勧めてくる手口ですが、住宅ローンで不動産投資用の物件を購入するのは上述の通り裏技ではなく明確な「違反行為」です。
リスクを負うのは住宅ローンを借りる本人なので、このような悪質な営業マンの話には絶対に乗らないようにしましょう。
住宅ローンで購入した家を賃貸に出す方法
先述した通り、住宅ローンで購入した物件は「無断で」賃貸に出すことが禁じられています。
つまり逆に考えれば「賃貸に出したい」と金融機関に相談すれば住宅ローンで購入した家を賃貸に出すことが可能です。
以下に、その方法を具体的に説明します。
金融機関と交渉する
何はともあれ、まずは金融機関に相談してみましょう。
購入者にやむを得ない事情があると金融機関が認めた場合、賃貸への切り替えを認めてくれることがあります。
やむを得ない事情の例としては以下のようなケースがあります。
- 突然遠方への転勤が決まって住居を移さざるを得なくなった
- 両親の介護が必要になり、実家に居住することになった
その事情を考慮してくれる可能性がありますが、住宅ローンのまま賃貸への切り替えを認めるか、改めて不動産投資ローンに契約をし直すかはケースバイケースです。
また、賃貸に切り替える上で何らかの条件が付けられる場合もありますので、まずは金融機関に相談して判断を仰ぎましょう。
不動産投資ローンに借り換え
不動産投資ローンへの借り換えを行う場合、住宅ローンを借りていた先が民間の金融機関か、住宅金融支援機構かで対応が若干変わります。
民間の金融機関の場合、ローンの種類を変えて同じ金融機関と契約することになります。
一方、民間金融機関とともにフラット35を提供している住宅金融支援機構では、不動産投資ローンの取り扱いがないため、新たに民間の金融機関と不動産投資ローンの契約を行うことになります。
いずれにせよ、金利は住宅ローンに比べて上昇するため、返済費用が増えることに注意しましょう。
住宅ローンで購入した家を賃貸に出す際の注意点
住宅ローンで購入した家を賃貸に出した場合、様々な注意点があります。
その中でも特に注意すべき「住宅ローン控除」と「賃貸に出す準備費用」の2点について説明します。
住宅ローン控除が受けられなくなる
住宅ローンを組んでいる物件を賃貸に出すと、住宅ローンにかかる税金の控除がなくなる点に注意しましょう。
住宅ローン控除は、年末の住宅ローン残高の最大1%を10年間、所得税や住民税から控除を受けられますが、ローンの支払中に住居を移転してしまった場合、控除もなくなります。
控除金額は数十万円になることもあり、非常に大きな金額ですよね。
その控除がなくなることで、税金を多く支払わなければならなくなります。
この10年の控除期間は延長ができず、賃貸に出している期間の節税はできませんので、注意しましょう。
賃貸に出す準備の費用がかかる
賃貸に出すにあたって、準備のために様々な費用が必要です。
不動産投資ローンに切り替える際の諸経費として、繰り上げ返済手数料、事務手数料、印紙税、抵当権の費用などがは30万円から100万円程度かかります。
特に注目すべきは保証料です。
不動産担保ローンは大半が住宅ローンと同じ保証会社の融資となり、融資金額の約0.2%程度の保証料が発生します。
賃貸に出す上ではこうした費用が捻出できるかどうかも検討材料となります。
住まない家は賃貸に出す以外に何か方法がある?
住まなくなってしまった家は、賃貸に出す以外にも次のような方法が考えられます。
- 売却する
- 定期的に住むセカンドハウスとして活用する
以下に賃貸に出す場合も含め、それぞれのメリットとデメリット記載します。
賃貸に出した場合
メリット
- 家賃による不労所得が見込める
- 経費計上できる項目が多いため、高い節税効果が期待できる
- 空き家による老朽化防止
デメリット
- 住宅ローンよりも金利が高くなる不動産投資ローンを使わなくてはならない
- 住宅ローン控除が受けられない
- 空室により賃料を得られないリスクがある
- 借り手が賃貸契約を更新した場合住みたい時に住めない
売却した場合
メリット
- 売却益を得ることができる
- 固定資産税などのランニング費用がかからない
デメリット
- いつ売れるかわからない
- 売却価格が希望を下回る可能性がある
セカンドハウスにした場合
メリット
- その家に戻ることができる
- 財産として残すことができる
デメリット
- メインで居住する物件の費用の他、セカンドハウスの返済もし続けなくてはならない
- 住宅ローン控除が受けられない
- 定期的に住む必要がある
いずれの方法もメリットとデメリットが存在するため、自分のライフスタイルや経済状況、将来のこともよく吟味した上で、最適な方法を選ぶようにしましょう。
住宅ローンで買った家は、賃貸に出さないようにしよう
住宅ローンで買った家を賃貸に出す場合には、かなりの手間と費用がかかります。
そして何より、やむを得ない事情で住宅ローンを組んでいる住宅に住めなくなった場合は、まず金融機関に相談するということを念頭に置いてくださいね。
「勝手に賃貸に出しても自分はバレない」と思っていると痛い目に合ってしまうかもしれません。
もちろん、無断で賃貸に出すことはご法度ですが、不動産投資ローンに切り替えた上で賃貸に出す場合にも、よく考えた上で行動をするようにしましょう。
監修者からのコメント
今回は住宅ローンの物件を「賃貸」に出すことがテーマとなりました。
本文中にもありましたが、万が一家を離れなければならない事情が発生したら、まず借入先の金融機関に相談をしてください。
フラット35の場合は、借入手続きを行った金融機関に相談しましょう。
ローン対象物件に住めなくなった理由と、いつ同物件に戻るのかは必ず確認されますので、正直に伝えて金融機関の指示に従ってください。事前にきちんと借入先に話をすることで、あとで後悔せずに済みますよ。
この記事を監修した人
株式会社フィナンシャルクリエイト
FP2級技能士・宅地建物取引士
金井 一樹
保険代理店業と不動産業界の経験があり、FP資格だけでなく宅地建物取引士の資格も所持。
現在は「日本にもっとお金の教育を」をミッションに掲げ、金融教育や資産運用アドバイスを行う株式会社フィナンシャルクリエイトで執行役員を務める。
また自身も資産運用のアドバイザーであるIFAとなり、ウェルスマネジメントとリスクマネジメントの両方の観点からコンサルティングを行う、お金の専門家として活動中。
⇒Youtube「お金の教育チャンネル」にて住宅ローンについて解説
https://www.financial-create.co.jp/
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