住宅ローンの返済途中でも、返済者を変えることは可能なの?
住まいそのものや家の在り方は、そこに暮らす家族構成の変化によって変わってくるものです。しかし、住宅ローンの返済が終わっていない時はどうすればいいのでしょうか。
いくら身内とはいえ、お金絡んでくると急にややこしくなり、理解するのも困難になってしまいます。
そんな住宅ローンと物件の名義変更について、住宅ローンスペシャリストの田辺が分かりやすく解説します。
フラット35の名義変更は可能なの?
住宅ローン返済期間中に「住宅ローン返済者を変えること」はできますか?
住宅ローンの名義変更に関する質問ですね。法律的には名義変更は可能です。
法律的には…というと、実際には難しいのですか?
現実的には債務引き受けという手続きが必要となり、難しい場合が多いです……。
フラット35の名義変更で必要な手続き
住宅ローンは契約者がその家を「所有」し、その家に「住む」ことを必須条件にしています。そのため、住宅ローンの名義変更には2つの手続きを要します。
物件の名義変更
物件の名義変更とは、物件の所有権を変更する手続きです。専門用語で所有権移転登記とも言います。
マイホーム購入の”物件引き渡し”で、物件の所有権を売主から自分の名義に変える時に行う手続きと同じですか?
その通り。司法書士や銀行の方と一緒に行う手続きです。
住宅ローンの返済途中でも、抵当権の持ち主の承諾なしに物件の名義を変更することは法律上、可能となっています。
ところで抵当権ってなんですか?
あと、抵当権の持ち主が分からない場合、いったい誰に承諾を取ればいいのでしょう……。
日常生活では馴染みのない言葉ですよね。
抵当権とは「家を担保として、住宅ローン借入者がお金を返せなくなった場合、その家を売却し、売却したお金を融資返済の一部にしますよ」という権利のことです。
また、抵当権の持ち主は、住宅ローンの貸し出しを行っている金融機関です。
なるほど。
では、法律上では金融機関の許可なしに名義を変更できる。しかし、現実的には金融機関の許可をとらなければいけないということですね。
その通りです。
なぜ、金融機関は許可を取らせるようにしているのですか?
金融機関にとって物件の所有者が変わるということは、住宅ローンの返済者が変わることを意味しています。返済者が変われば、そのぶん返済リスクが伴います。
つまり、金融機関が名義変更を承諾しないのは、新たなリスクを発生させることは避けたい、という意図が伺えますね。
住宅ローンの名義変更
では、住宅ローン自体の名義変更はどのように行うのですか?
住宅ローンを借りている金融機関で申請します。これを債務引受といいます。
具体的には、どのように行うのですか?
まず、新しく借入を行う人(債務を受ける人)の収入や勤務先などを総合的に考慮し、審査を行います。そして、審査が通った場合
1.債権者:金融機関
2.現債務者:住宅ローンを払っている人
3.債務引受人:住宅ローンを払うことになる人
の三者で契約を結びます。これを『免責的債務引受契約』といいます。
言葉は難しそうですけど、残りの住宅ローンを引き継ぐ手続きは金融機関で行える可能性があるということですね。
名義変更に必要な書類と費用
では、名義変更の際に必要になってくる書類や費用はありますか?
書類や費用は物件や人によって大きく変わります。
人それぞれ決まった要件ではありませんので、金融機関の方に詳しく聞いてみましょう!
夫婦間で名義変更する場合
夫婦間で名義変更できるのはどんなケース?
夫婦で名義を変更するとは、どういうことですか?
夫婦間で名義変更を行う場合は、大きく分けて以下の3つのケースが考えられます。
夫から妻、妻から夫へ。(免責的債務引受)
共有名義を単独名義に。(免責的債務引受)
単独名義を共有名義に。(併存的債務引受)
夫から妻、または妻から夫に名義が変わるというのは、どのような状況ですか?
一般的には離婚される元ご夫婦によく見られる状況です。
例えば……妻の不貞行為が原因で離婚した夫婦がいたとしますね。
もともと夫が住宅ローンを返済していましたが、夫が家から出ていき妻が家に残った場合、妻が住宅ローンを払うことになります。
しかし、ほとんどの家庭で夫の収入の方が多いと思うのですが、その状況でも妻に名義を変更することは可能なのでしょうか?
妻も夫と同様の収入があれば、問題なく名義を変更できると思います。しかし、そうでない場合、金融機関の承諾を得るのは難しいでしょう。
離婚時の名義変更は、かなりハードルが高そうですね。
では、共有名義を単独名義にするとは、どういった状況なのでしょうか?
例えば……
妻が退職したために、夫のみの収入で返済するとなった状況です。
この場合、単純に収入が減っているため、銀行側の承諾を得るのは難しいでしょう。
しかし、残りのローンが少なかったり、高額なローンでなければ、承諾してもらえる可能性はあります。
夫婦間で名義変更に必要な手続き&注意点
夫婦間での名義変更の際に、注意することなどありますか?
物件の名義変更の際に、場合によっては贈与税がかかることもありますので、注意してください。離婚における慰謝料としてであれば非課税です。
これには家の持分割合が関係してきます。
家の持分割合は出資金額によって決まります。しかし、その出資金額の割合を無視して持分を変更してしまうと贈与と見なされ、課税対象となってしまうのです。
名義変更をする際は、誰がどのくらい出資しているのか把握して、名義変更をするのがいいということですね。
確認しておくと安心でしょう。
しかし、様々なケースがありますので、税務署や金融機関など専門家に確認することをおすすめします。
親子間で名義変更する場合
親子間で名義変更できるのはどんなケース?
子どもが自分の住宅ローンを借りていても、親の住宅ローンを引き継ぐことはできますか?
同時に2つ以上の住宅ローンを組むことはできません。
親の代わりにローンを返済し、その家を子の名義にする場合は、以下の様な条件を満たさないと厳しいでしょう。
子が十分な返済能力を持っていること
子がその家に住むこと
そうですよね。
他に親子間で名義変更するケースはありますか?
親子リレーという返済方法の場合、親から子へと名義を変更する機会があります。
親子リレー……?
住宅ローンの商品の一つで、リレーのように親子で住宅ローンを返済していく方法です。
親から子にローンの返済を引き継ぐ際に、名義が変更されます。
そのような種類の住宅ローン商品があるのですね!
購入段階から子に家を譲りたいと考えている場合には、親子リレーで返済していけば、後々贈与税のことで頭を悩ます必要もなくなりそうですね。
親子リレーについては、以下の記事で詳しく説明しています。
親子間で名義変更に必要な手続き&注意点
親子のローン返済には、親子ペアローンという返済方法もあります。
これは親と子がそれぞれローンを組んで、協力して住宅ローンを返済していく方法です。
リレー返済とは異なり、同時並行で協力して返済していくのですね!
その際、家の名義はどうなっているのですか?
返済中はその負担額によって持ち分が決まります。
しかし、親がローンを完済した後、家の名義をすべて子に譲るとなった場合、贈与税がかかる可能性があります。
やっかいな贈与税ですね……。
親子でも例外なく、人から人へ大きな資産を譲った場合、贈与税は発生します。ぜひ頭に入れておいて下さいね。
名義変更が許可されないのはどんなケース?
住宅ローン返済中に名義変更が難しい場合が多いです。
元々の返済者より、新しく変更しようとしている返済者の返済能力が明らかに低い場合、名義変更は許可されないでしょう。
つまり、今返済中の人より、明らかに返済能力が高い人に変更しようとしているのであれば、名義変更は許可される可能性も上がるということですね!
兄弟間の名義変更は難しい?
兄弟間であっても、新しい名義人の返済能力が十分にあれば可能でしょう。
今の名義人と同等、またはそれ以上の返済能力があれば、銀行も名義変更を承諾してくれるのですね。
フラット35の基本から気になる情報までまるっと知りたい方は、こちらの記事も合わせて読んでみましょう。
【超絶まとめ】フラット35の仕組みと金利を徹底解析! 銀行系ローンとの違いとは!?
収入が安定しない場合、審査は厳しい
上記からもお分かりの通り、住宅ローン返済中に名義を変更することは難しいといえます。
新しい住宅ローン返済者が、元の返済者よりも返済能力が高ければ、名義を変更出来る可能性は高いでしょう。
元の契約のまま名義を変更するのが難しい場合は、住宅ローンの借り換えを行う方法があります。
住宅ローンの借り換えに関しては、以下の記事をご参照ください。
住宅ローンの借り換えってなに?|住宅ローンのプロ、借り換える。Vol.1
住宅ローンの窓口ONLINEでは、住宅ローンの無料相談を行っています。ぜひお気軽にご相談ください。
住宅ローンスペシャリスト
「日本一住宅ローンに強い会社」iYell株式会社に在籍する住宅ローンスペシャリスト。
大人の色気を漂わせて、住宅ローンを手取り足取り教えてくれる。
なお、紙面では公開しがたいあらゆる経験をしてきているため、社員からは住宅ローンはもちろんのこと、恋愛相談されることもしばしば。
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