団体信用生命保険(団信)とは、ローン返済中に契約者が高度障害もしくは死亡した場合に、ローンの残高を保険金によって返済するというものです。
住宅ローンと団信は原則セットです。団信に加入できなければローンが組めず、夢のマイホームが遠のいてしまうでしょう。
この記事では、団信の査定内容や、査定を通過するためのポイントについて紹介しています。後半では、査定に落ちた場合の対処法も触れているので、団信の査定に不安のある方はぜひ一読ください。
住宅ローンを組むうえでは団信の加入がかかせませんが、ネットで口コミを確認すると、なかなか査定が厳しいとの声が上がっています。そのため、団信の査定は厳しいのかと不安に思う方も多いでしょう。
たしかに民間の住宅ローンは、団信の加入をローンの契約条件としているため、査定に通らなければローンは組めません。しかし、一概に「厳しい」「簡単」ということはできません。査定の基準は保険会社によって異なっており、また開示されてもいないからです。
一般的には、ふたつの要件をクリアしていれば、査定は通りやすいとされています。ひとつめは健康状態が良好であることです。健康かどうかは、持病や病歴、健康診断の結果などで総合的に判断されます。
そしてふたつめが、危険な職業についていないことです。職業によっては事故を起こしやすい、または怪我をしやすいものもあります。たとえばレーサーやスタントマン、プロボクサー、登山家などです。
これらは一般的な職業とくらべて、就業不能リスクや死亡リスクが高いため、保険会社も査定を通しにくいのです。
団信は、申込書兼告知書を提出することで申し込めます。以下で、団信の告知書で質問される内容について見ていきましょう。
告知書に記入した日(告知日)より3か月以内に治療を受けていないか、薬をもらっていないかを聞かれます。直近で大きな病気はないか、就業不能リスクのある病気ではないかを確認するための質問です。
3か月以内の治療や投薬歴は、軽微な病気や怪我もあてはまります。たとえば、虫歯やぎっくり腰・ねんざ・中耳炎などで、歯医者や整骨院、耳鼻科などに1回だけ通院したケースです。
また、投薬に関しては、病気を治すためだけでなく大きな病気にならないための予防投薬もあてはまるので、注意しましょう。
一方で、怪我や病気になった際に病院に通院しておらず、市販薬ですませた場合は告知書に記入する必要はありません。市販薬のかぜ薬や胃腸薬、痛み止め薬などの服用です。
告知日より3年以内に手術や治療をしていないかを確認されます。一般的にがんや心疾患・脳血管疾患といった大きな病気から、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病・精神病や神経症・アルコール依存症まで対象にふくみます。
そして精神病のなかで、とくに注意が必要なのがうつ病です。うつ病は、審査に通りにくい病気のひとつとされています。
厚生労働省の資料によると、うつ病や統合失調症などの精神病の外来患者は、平成14年には約239.9万人であったが平成29年には約419.3万人と増加傾向にあります。うつ病になると、完治がむずかしく、再発の可能性が高いため、保険会社も査定を通しにくいのです。
また、リウマチやポリープといった比較的身近な病気も対象です。胃潰瘍や貧血症といった病気も例外ではありません。
持病や病歴があったら査定に通らないといわれていますが、必ずしも通過できないわけではありません。査定は、治療歴や検査時の数値、投薬の種類や量、期間などの複数の要素で総合的に判断されるため、同じ病気であっても結果は異なるからです。
ただし死亡リスクが高い病気は、この先完治したとしても長い間就業がつづけられず、ローン返済がストップする可能性が高いとみなされ、査定が不利になります。
一方で、適切に治療や投薬がなされており、数値から回復の見込みが高いと判断されるような場合は、査定が通るケースもあります。
身体障害の状態も質問されます。手や足の欠損、言語やそしゃく機能の障害などです。
障害があれば査定が通過できないというわけではなく、あくまでも保険会社は、加入時の身体障害の状態を把握しておくために質問しています。団信は、死亡時だけではなく、高度障害になったときにも保険金がおりる保障だからです。
団信の告知書に関する注意点について紹介します。団信に加入するためには、以下のポイントに気をつけましょう。
既往歴はできるだけ詳細に書くようにしましょう。あいまいな記憶で書いた場合、査定が不利になるケースがあるからです。記入する内容は、病名や検査の種類、検査結果の数値、通院状況、薬の名前や服用量などです。
こうした細かい情報がなければ、保険会社も適切に判断できません。不備のために再提出を求められれば、住宅ローンの審査が遅れてしまいます。
検査結果の数値は、平均値よりも高いと指摘を受けたものだけではなく、病気に関連する値をすべて記入しておきましょう。複数の値が関与する病気ならば、たとえひとつの数値が高くても、ほかの数値が平均値であれば査定が通る可能性があるからです。
薬の名前や量も具体的に記入することで、病状がわかります。病状が安定して薬の服用量が減った場合は、その旨を記載しましょう。
また、自宅に診断書や検査結果の紙がない場合は、かかりつけの医療機関に連絡をとりましょう。普段から健康手帳に検査結果の紙を貼り付けておくことで、紙の紛失をふせげます。
告知書で該当する病気や障害がなければ、査定が通りやすくなります。しかし、虚偽の情報は書かないようにしてください。事実を隠す、または事実とは異なる内容を書いてしまうと、告知義務違反となる可能性があるからです。
告知義務違反となった場合は、保険会社からローン契約を解除されてしまいます。死亡や高度障害になったとしても、団信の保険金は受け取れません。
とくに、現代医療では治らない病気と知っていて告げずにいた場合は、悪質とみなされてローンの一括返済を求められることもあります。返済できない場合、家を差し押さえられ、最悪の可能性としては自己破産もありえます。
大切な家やローン契約をなくさないためにも、たとえ軽微な状態、現在は完治している状態であっても、質問内容に記載の内容はかならず申告するようにしましょう。
同じ病歴でも、書き方次第では審査結果が異なることもあります。保険会社が正しく査定できるように、ありのままを正確に書くことが大事です。
告知書に書いてある質問だけに答えるようにしましょう。聞かれていない質問に答えても査定が不利になるだけだからです。
たとえば治療歴では、高血圧や糖尿病など、保険会社が対象とする病気の有無だけを答えます。告知書にのっていない病気については、書く必要はありません。
また、告知書に書かれている期間より前に完治している病気も書かなくて構いません。直近や3年以内の病歴を聞かれるため、たとえば4年以上前に完治している病気については、申告する必要はありません。
団信の査定に落ちた場合、住宅ローンを借りられなくなるケースもあります。
夢のマイホームも遠のいてしまいます。団信の査定に落ちてしまったらどうしたらよいのか、その対処法について解説します。
別の団信に加入することで、住宅ローンの融資を受けられる場合もあります。1か所の団信に落ちたからといって、あきらめる必要はありません。なぜなら、別の団信の審査では通る可能性があるからです。
そもそも団信の査定基準は、保険会社が個別に決めています。そのため、落ちてしまった団信の査定基準と細かな部分で異なるケースがあります。
同じ病名でも、他の団信では告知対象としていないケースもあります。病気が理由で落ちてしまった場合は、その病気を告知対象としていない保険会社を選ぶとよいでしょう。団信はどの保険会社でも採用しているため、何度でも申し込みが可能です。
また、ワイド団信という選択肢もあります。ワイド団信とは、一般の団信よりも基準が緩和されている団信のことで、持病があっても加入できる可能性が高いのが特徴です。たとえば高血圧症や糖尿病・潰瘍性大腸炎・痛風などでも査定を通っている事例があります。
しかしワイド団信を取扱っている保険会社は少なく、また金利が通常の団信よりも高いため、総返済費が増えるなどの負担もあります。保障内容は通常の団信と同様のため、よく検討してから申し込むとよいでしょう。
フラット35で住宅ローンを組む方法もあります。フラット35とは、国の機関である住宅金融支援機構と民間の金融機関との連携による住宅ローンのことです。
団信の加入が任意のため、団信なしでも住宅ローンが組めるというメリットがあります。買取型と保証型の2種類がありますが、一般的には買取型のほうがメジャーです。
フラット35(買取型)は、証券化ローンという仕組みを利用しているローンです。証券化ローンとは、民間の金融機関の住宅ローンを住宅金融支援機構が借りあげて、投資家に販売する方法です。金利上昇のリスクは投資家が負うことで、契約者側は最大35年間固定の低金利で借りられます。
ほとんどの金融機関がフラット35を取扱っており、利用条件が民間の金融機関よりもゆるやかなのが特徴です。フラット35は、新築住宅以外にも中古住宅+リフォームの「フラット35リノベ」や長期優良住宅を対象とした「フラット50」などがあります。
フラット35を団信なしで組むと金利は下がりますが、万が一の保障が一切なくなるのが不安要素ともいえます。契約者が死亡または高度障害となった場合に、家族がローンを返済しなくてよいように、フラット35と一般の生命保険の併用をおすすめします。
無選択型や緩和型といった生命保険への加入です。緩和型は病気や怪我の申告内容を限定しているため加入条件がゆるく、無選択型はそもそも申告が必要ありません。
団信の査定に落ちた方や、健康に不安のある方でも入りやすいのが特徴です。ただし、無選択型や緩和型とフラット35と併用すると、総返済費が増えます。保障内容も限定されるため、団信やワイド団信に落ちた場合の保険として考えておきましょう。
配偶者の名義で住宅ローンを組むという方法もあります。ただし、団信に加入するためには、配偶者の健康的に問題がなく、ローン審査を通過できるだけの年収がなくてはなりません。
また共働き夫婦の場合は、共有名義で住宅ローンを借りるという方法もとれます。夫婦で住宅ローンを借り、支払いもふたりで行うというものです。
共有名義で住宅ローンを借りる場合は、連帯保証型と連帯債務型の2種類があります。どちらも、契約者が死亡または高度障害になった場合に、ローンが全額なくなる仕組みです。
連帯保証型は、片方が債務者となり、片方が連帯保証する方法です。連帯債務型は、夫婦で連帯債務者となる方法です。
ふたつの違いは、住宅ローン控除にあります。連帯債務型は夫婦それぞれがローン控除されるのにくらべて、連帯保証型は片方しか控除されません。
こちらの記事では、住宅ローンの仮審査と本審査の違いや審査の流れについて解説しています。審査でチェックされやすいポイントなども紹介しているため、ぜひあわせてお役立てください。
告知対象期間が過ぎるまで、団信の加入を待つ方法もとれます。団信で聞かれるのは、直近3か月以内の治療や投薬歴、3年以内の手術や治療歴です。
つまり3年経過した際に告知対象の病気が治っていれば、告知書に書く必要はありません。しかし3年という期間は長く、病気がその間に治る保障はありません。
入院や手術が決まっているときは、今できる治療をすべて終えてしまってから考えるようにしましょう。精密検査の指摘がある場合は、検査を受けて、現在の健康状態を明確にさせてから申し込んだほうが、保険会社も査定しやすくなります。
治療や検査の途中にある人は、今後どうなるかが判断しにくいため、まずは治療に専念することが肝心です。
資金を積み立てていた方は、住宅ローンの審査時に頭金をふやすことでローン審査が通る可能性をあげられます。ローン審査では、健康状態がチェックされますが、年収や勤務期間などもチェック事項のひとつです。
金融機関は、あらゆる事項を確認して、返済が滞ることがないかを判断しています。頭金を増やして総返済額を減らせば、ローン返済が滞るリスクが減ると判断されることもあります。頭金を増やせば団信に加入できなかったとしても、住宅ローンの審査に通る可能性があります。
団信では、過去3年以内に治療歴や手術歴がないかを審査します。既往歴をできるだけ詳細に書くことで、査定通過率を高められる可能性があります。
一方で、貧血症やポリープなど、大きな病気でなくても査定に落とされるケースもみられます。もし団信に落ちた場合は、別の団信に申し込む、フラット35に申し込むなどの方法がとれます。
団信加入に不安のある方や健康に不安のある方は、いえーる 住宅ローンの窓口 ONLINEまでぜひご相談ください。住宅ローン選びは個別性が高く、個々のライフスタイルに合ったものを選ぶことが肝心です。
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