初めまして、千日といいます。普段は「千日の住宅ローン無料相談.com」というサイトで住宅ローンの相談に答えています。色んな人の色んな相談に答えて記事を公開しているのですが、最近気になる相談が「ボーナス払い」に関する相談です。
ボーナス払いにすると、年間の返済を同じ額にしたまま毎月の返済額を減らすことが出来るので、家計のやりくりが楽になりますよね。今までも車のローンを組む時なんかにボーナス払いを入れたことのある人は多いと思います。
でも、住宅ローンに関してはお勧めできません。その理由は……
◆自分が買える価格の家ならば、ボーナス払いにしなくても返済できます。
◆ボーナス払いにしなくても買えるのに、払えなくなるリスクだけを増やしている。
このようにデメリットしかないのが、住宅ローンのボーナス払いなんです。
年収の多くをボーナスが占めているならしょうがない?
『でも、年収の半分位がボーナスなんだけど……?』
確かに入社して間も無いうちは月給が低く、年収に占めるボーナスの率が高い傾向がありますし、会社によっては、そもそもボーナスの割合が高い給与体系のケースもあるんですよね。
でも、ボーナス払いを入れるということは、35年で合計420回の支払いのうち、1年に夏冬2回で合計70回も支払額の多い月があるんです…難易度がハネ上がるんですよ。
支払額の違う月を入れるリスクを甘く見てはいけません。
◆毎月同額の返済である。
◆年2回返済額が高くなる。
このリスクは同じじゃありません。
35年420回ノーミスでやり遂げるタスクにアクセントを入れるのは、それだけで危険です。一定のペースで跳ぶ縄跳びより、ペースが早くなったり遅くなったりする縄跳びの方が引っ掛かりやすいのと同じです。
◆収入に変動があっても返済は一定にする。
◆最も収入の少ない月に合わせて住宅ローンの支払いを決める。
これが収支の構造的に一番安全なのです。何も無い時に楽が出来るモデルではなく、イレギュラーな出来事やアクシデントに強い資金計画を立てましょう。
それに、住宅ローンの約定は最後まで変わりませんが給与の規定は結構変更になります。年俸制になってボーナスではなく毎月均等額になることもあり得ます。そういう会社もあります。
また、昇進によってボーナスが無くなり月収のみになるというケースもあります。
出向や転籍、転職などによってボーナスの支給月が変わることだってあり得ます。
しかし、一度決めた住宅ローンの約定返済額というのは、最後まで変わらないんですよ。
今の自分にとって最適に見えるボーナス払いが今後35年間の自分にとってもずっと最適なのか?そういう視点で、再度考えてみてください。
安定した大企業で必ずボーナスが出るならいい?
『会社は比較的安定した大企業で、ボーナスが出なくなるということはあまり考えにくい状況ならボーナス払いにしてもいいでしょ?』
こういう相談を受けることがありますが、過去35年ボーナスが出たということが、今後35年ボーナスが出る理由にはならないです。
どんなに大企業であろうと、今後何十年にわたって従業員にちゃんとボーナスを払えると保証できる会社はありません。これは断言できます。
多くの会社は営利企業ですよね。赤字になるのはイヤなんです。景気が悪くなって会社が赤字に転落しそうになったら、黒字を維持するためにまず真っ先にカットされるのがボーナスです。
なぜなら、儲かっているから支給するのがボーナスだからです。
会社が赤字になりそうなのに、儲かっている時と同じようにボーナスを払う経営者はいませんよね。経営者の立場に立って考えてみたら、35年の住宅ローンの返済を、ボーナスが出る前提で計画するなんて『あり得ない』ことなのですよ。
ボーナス払いは少額に抑えれば大丈夫?
『ボーナス払いは毎月の元利均等返済額の半分以下にするし……このくらい少額ならリスク無いよね?』
こんな風に聞いて来られる方もいます。でも、本当に『少額だ』というのであれば、毎月の返済額に均してしまえばもっと少額になります。『少額でリスクが無い』というのが本当であればボーナス払いにする必要など無いのですよ。
ボーナス払いにしなければ……と思うのは、その金額が今の自分にとって少額ではないからです。
そこには、将来の自分にとっては少額になるかも、という期待もあると思います。
それは良いと思うんです。年齢や職種によってはまだまだ年収が伸びるはずという考え方はアリです。特に若い人は少しくらい月々の返済額を背伸びするくらいで丁度良いんですよ。
しかし、自分の年収が上がっても会社がピンチになればボーナスは出ません。自分だけの頑張りでどうにもならない要素があるんです。そういう不確定要素を長期間の住宅ローンに入れるのは、リスクが高すぎるんですよ。
早く元金を返したいからボーナス月は返済額を増やす?
『なるべく早く元金を減らしたいなら、ボーナス月はたくさん払ったほうがいいですよね?』
そんなときにボーナス払いにするのは賢明な選択ではありません。
そうではなくて、ボーナス払いにする分の金額を繰上返済するんです。
ボーナス払い:約定返済なので、払えなければ債務不履行になる。
繰上返済:約定返済よりも早く返済することは、債務不履行にならない。
こういうことです。
ネット銀行の住宅ローンなら、ほとんどが繰上返済手数料ゼロ円です。また、最近は都銀を中心に大手銀行でもネットバンクサービスを提供していて、ネットで繰上返済すれば手数料は無料という銀行も少なくありません。
この方法なら、ボーナスが出ない年があったとしても、返済が苦しくなることはありません。リスクを負うことなくボーナス払いと同じ効果が得られるということです。
それに、当初の10年については住宅ローン控除(減税)がありますから、繰上返済しない方がお得な場合もあるんですよね。これを話し始めると長くなっちゃいますので、また次の機会にお話ししましょう。
住宅ローンの一番のリスクは『自分』?
『ボーナスを全部使っちゃって繰上返済に充てられないかも……』
ボーナスを減らすのは他でもない自分なんですよね。これまで計画的に貯金が出来ている人は頭金も多く、ボーナス払いにする必要も無い場合が多いです。ボーナス払いを検討する人は、どちらかというと貯金が苦手な人に多いのかもしれません。
だとすると、ボーナス払いを選ぶ人っていうのは、自分の性格上の弱点を良く知っている人なのかもしれませんね。
だったらボーナス払いにした方が良い、とは思いません。
いざという時に貯金が無い(少ない)というのは、住宅ローンの金利変動リスクなどよりも遥かに大きなリスクです。
住宅ローンとは何か?と聞かれたら私は「35年ならば420回決まったお金を銀行に払うことだよ」と答えます。これが正確な定義ではないことは百も承知ですが、途中で家を売らない人にとっての本質です。
支払日に遅れたら債務不履行です。35年420回の間に病気にかかって何度か払えない月が続き、銀行に「この人はもう払えない」と判断されたら、家を取り上げられてしまうのです。
これからは、どうしていけばいいのか?
これまでの、何をやめればいいのか?
その答えは、自分の中にあるはずです。というより自分の中にしか、無いんですよ。
家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本
千日 太郎 (著) / 日本実業出版社
文:
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人生の一大イベントであるマイホーム購入。せっかく購入するなら、後悔したくないですよね。そして、マイホーム購入をするにあたり必要不可欠な住宅ローン選びも非常に重要です。
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