住宅ローンを組むとき、親からの資金援助を受けるのは珍しいことではありません。
ただし、ポンと現金をもらってそれでおしまい、というわけにはいきません。
そこには贈与税などが派生してきます。
親からの資金援助で頭金を出してもらったのはいいけど、あとから贈与税を支払わなければいけなくなったとなっては、せっかくの援助をフル活用できません。
今回は親からの資金援助を
- 贈与
- 借り入れ
- 共有
の3つの方法に分けて、それぞれについて考え方と注意点を説明します。
また贈与税が節税(免除)される2つの制度についても紹介します。
【方法1】「贈与」には贈与税がかかることをお忘れなく
親から現金をもらうのは、税金の計算では「贈与」という扱いになります。
贈与されたお金には贈与税がかかってくるのです。
贈与税は、原則として年間110万円を超えて贈与を受けたら発生します(この年間110万円のことを、基礎控除と言います)。
1年間に贈与を受けた額で税率が変わり、以下の率によって税額が計算されるのです。
基礎控除後の課税価格 | 200万円以下 | 400万円以下 | 600万円以下 | 1,000万円以下 | 1,500万円以下 | 3,000万円以下 | 4,500万円以下 | 4,500万円超 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
税 率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ‐ | 10万円 | 30万円 | 90万円 | 190万円 | 265万円 | 415万円 | 640万円 |
たとえば1000万円の贈与を受けた場合は以下の計算になります。
【1000万円-110万円(基礎控除)】×30%(税率)-90万円(控除額)=177万円
せっかく1000万円も支援してもらったのに、177万円も税金として払わなければいけないのです。
※この計算は、親から贈与を受けた場合のものです。兄弟等からの贈与の場合は計算が変わってきますのでご注意ください。
※平成28年4月1日現在法令等による「特例贈与財産用 (特例税率)」による計算。
ポイント1:マイホームの購入にあたっては贈与税の特例が!
さて、通常の贈与の場合は上記のようになりますが、実は住宅取得用の資金の贈与については、特例があります。
一定の条件を満たせば、以下の金額までは贈与を受けても税金が発生しないのです。
■売買契約の締結時ごとの非課税限度額
○平成28年1月1日~平成29年9月30日まで 700万円(1200万円)
○平成29年10月1日~平成30年9月30日まで 500万円(1000万円)
○平成30年10月1日~平成31年6月30日まで 300万円(800万円)
※括弧内の金額は、省エネ住宅の場合です。
ポイント2:「相続時精算課税」も1つの選択肢?
節税を検討できる選択肢として、相続時精算課税というものがあります。
これは、贈与を受けた際に2500万円までは贈与税を支払わずに、相続時に精算することができる制度です。
通常、相続時精算課税は親が60歳以上の場合にしか使えない制度ですが、平成33年12月31日までは、住宅の購入にあたっては親が60歳未満でも適用できる特例があります。
相続時に精算しなければならないため、結局は税金を払わなければいけませんが、相続する財産によってはお得に使える場合もあるので検討してみましょう。
【方法2】「借り入れ」の場合は必ず借用書を作ろう
親からお金をもらうのではなく、借りるという方法もあります。
これなら贈与ではないので、贈与税はかかりません。
ただし、親子だからといって口約束にするのではなく、必ず「借用書」を作りましょう。
なぜなら、あくまでも借り入れであることを形にして残しておかなければ、贈与と見なされることがあるからです。
そうなると、前述したように贈与税を払わなければいけなくなってしまいますので、きちんと借用書を作って、「いくらを、いつまでに、どのようにして返すか」を明文化しておかなければなりません。
そして、返済もしなければなりません。借用書通りに返済が行われていない場合も、贈与とみなされてしまうことがあります。
返済する場合は現金で手渡すのではなく、銀行振込などを利用して、間違いなく返済しているという証拠を残しておくことが大切です。
【方法3】「共有」は将来的な問題にも対策を
そして最後が「共有」です。
これは、親と子供が共同で住宅を購入するという方法です。
共有にも、きちんと正式な形にして残す必要があります。つまり、親が支払ったお金に応じた住宅(土地や建物)の持ち分割合をきちんと登記して、住宅を親子で共有する形にするのです。
もちろん、持ち分を共有するだけなので、必ずしも親と同居する必要はありません。
このような形にして資金負担に応じた持ち分割合を登記すれば、贈与とは見なされず、当然、贈与税の問題はありません。
親の負担額がどんなに多くても、贈与税は一切かかりませんし、同居する必要もないので、この方法を選ぶ人も少なくありません。
ただし、親のほうは住宅の一部を取得することになるので、親に対しても不動産取得税がかかってきます。
また、持ち分に応じた固定資産税や都市計画税などの負担が必要になります。
そういう意味では、子よりも親のほうにさまざまな問題が起こるのです。
そして、子供には将来に問題が発生します。
もしも親が亡くなった場合には、親の持ち分を子供が相続することになります。
そうなると今度は相続税が発生しますので、共有を検討する際は、相続税とあわせて考えましょう。
贈与税が節税(免除)される2つの制度
住宅の購入について、贈与税が免除される2つの制度があります。
1.住宅取得等資金の非課税制度
「住宅取得等資金の非課税制度」とは、住宅の新築・購入、またはリフォームをする際、その資金を補うために父母、または祖父母から贈与金を貰った場合に贈与税の一定額を免除する制度です。
なお、非課税の限度額は住宅の種類や契約の締結日、または消費税に応じて変わります。
例えば、夫の父母から1,500万円、妻の父母から1,000万円の贈与金をもらい、平成30年、消費税8%の時に省エネ住宅を購入したと仮定します。
上記表に照らし合わせると、非課税の限度額は1,200万円です。
この場合、夫の父母からの贈与に関しては300万円が課税の対象に、妻の父母からの贈与に関しては全額非課税の対象になります。
ただし、この制度を適用するためには住宅を共有名義にする必要があります。
共有名義にすれば、それぞれが制度を活用できます。
1.住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合
住宅用家屋の取得等に係る契約の締結日 | 省エネ等住宅 | 左記以外の住宅 |
---|---|---|
平成31年4月1日~平成32年3月31日 | 3,000万円 | 2,500万円 |
平成32年4月1日~平成33年3月31日 | 1,500万円 | 1,000万円 |
平成33年4月1日~平成33年12月31日 | 1,200万円 | 700万円 |
2.上記以外の場合
住宅用家屋の取得等に係る契約の締結日 | 省エネ等住宅 | 左記以外の住宅 |
---|---|---|
~平成27年12月31日 | 1,500万円 | 1,000万円 |
平成28年1月1日~平成32年3月31日 | 1,200万円 | 700万円 |
平成32年4月1日~平成33年3月31日 | 1,000万円 | 500万円 |
平成33年4月1日~平成33年12月31日 | 800万円 | 300万円 |
「省エネ等住宅」とは、省エネ等基準
- 1,断熱等性能等級4若しくは一次エネルギー消費量等級4以上であること
- 2,耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上若しくは免震建築物であることまたは
- 3,高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること
に適合する住宅用の家屋であることを一定の書類により証明されたものを指します。
この制度を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。
2,贈与を受けた年の1月1日の時点において、20歳以上であること。
3,贈与を受けた年の年分の所得税に関わる合計所得額が2000万円以下であること。
4,平成21年から平成26年までの贈与税申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと(一定の場合は除く)。
5,自己の配偶者、親族などの一定の特別な関係がある人から住宅用の家屋の取得をしたものではないこと、またはこれらの方との請負契約等により新築若しくは増改築等をしたものではないこと。
6,贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること。
7,贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること(例外あり)。
8,贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること、または同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。
出典:国税庁HP
2.相続時精算課税制度
「相続時精算課税制度」とは、生前贈与の場合に2,500万円までの贈与税を非課税にする制度です。
原則として60歳以上の父母、または祖父母から、20歳以上の子または孫に対して財産が贈与された場合に適用されます。
贈与額が2,500万円を超えた場合には超過額に対し、一律20%の贈与税がかかります。
デメリットとしては、贈与時に払った金額分は、相続時にまとめて相続税が課される点や、基礎控除と併用できない点などが挙げられます。
例えば、贈与は年間の贈与額が110万円以下であれば無税となりますが、相続時精算課税制度の場合は年間の贈与額が110万円以下であっても相続時に相続財産に加算され、相続税が課税されてしまいます。
また、一定の要件を満たすと土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度を小規模宅地等の特例といいます。
相続時精算課税制度を利用して土地を贈与した場合、その土地に小規模宅地等の特例を適用することができません。
お得なことばかりではないので、しっかりと考えて制度を利用しないといけません。
夫婦それぞれの親から贈与された場合はどうなるのか?
住宅購入の際に夫婦それぞれの親から贈与された場合は、夫と妻、それぞれの贈与に関して上記で挙げた特例を活用することができます。
1.住宅取得等資金の非課税制度の例
まず初めに、住宅取得等資金の非課税制度を活用した場合をみてみましょう。
例えば、夫の父母から1,500万円、妻の父母から1,000万円の贈与金をもらい、平成30年、消費税8%の時に省エネ住宅を購入したと仮定します。
上記表に照らし合わせると、非課税の限度額は1,200万円です。
そうです。
ただし、この制度を適用するためには住宅を共有名義にする必要があります。
共有名義にすれば、それぞれが制度を活用できます。
2.相続時精算課税制度の例
相続時精算課税制度に関しても、夫婦それぞれに適用することが可能です。
例えば夫の父母から3,000万円、妻の父母から2,500万円の贈与を受け取った場合、前者に関しては500万円が課税の対象になり、後者に関しては全額非課税となります。
どの制度を選ぶかは、各制度の特徴を考えた上で決めましょう。
【よくある勘違いに注意】現金で貰ったらバレないから贈与税は払わなくていいの?
基本的に贈与税の申告は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日の間に税務署に対して行います。
申告をしなかった場合は、ペナルティー分を加算して税金を支払わなければなりません。
それでは、現金で貰ったにも関わらず贈与税を支払わなかったらどうなるでしょうか?
結論から言うと、すぐに未支払いが判明することはありませんが、最終的には発覚します。
相続が発生したタイミングで判明することが多いですね。
相続税を申請したタイミングで税務署は亡くなった人のお金の流れを調査します。
その過程で贈与税未払い分に関して、追加で支払いを課されます。
まとめ
今回は親からの援助を
- 贈与
- 借り入れ
- 共有
の3つの方法について解説しました。資金援助額によって、得する場合と損する場合があるので注意しましょう。
また、贈与額が節税される各制度についてもメリットとデメリットがともに存在しますが、うまく使いこなせば、贈与税額を少なくすることができます。
両親の援助と住宅ローンを賢く利用して、住まいを手に入れましょう!
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