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一定期間固定金利のミックスローンとは?|住宅ローンの選び方【中級編 (後編)】

千日の住宅ローンの選び方(中級編)シリーズの5回目です。
異なる金利タイプの住宅ローンを組み合わせるミックスローンについてお話しようと思います。この回が総まとめです。

第1回:自分にとっての住宅ローンとは何か?をあなたは知らない
第2回:変動金利とは何か?をあなたは知らない
第3回:固定金利とは何か?をあなたは知らない
第4回:「当初固定金利」とは何か?をあなたは知らない
第5回(前編):固定金利と変動金利のミックスローンとは何か?をあなたは知らない
第5回(後編):一定期間固定金利のミックスローンとは何か?をあなたは知らない

ミックスローンとは単純に言うと、1つの住宅を担保にして2枚の住宅ローン契約書を結ぶことです。

✓住宅は一つ
✓借入は異なる金利タイプで2本

多くの利用者が固定金利か変動金利かを決められずに複数の金利タイプをミックスしたローンを組んでいますが、固定と変動は水と油です。固定金利と変動金利のミックスローンでちゃんとメリットが出せる人は、少数派のとても限られた人達だということを『第5回(前編):固定と変動のミックスローンとは何か?をあなたは知らない』で説明しましたね。

『だからミックスローンを選んではいけない』

もしこのように思っているのだとしたら、私の話を聞く価値があると思います。固定期間のミックスという選択肢もあるのです。

2.10年固定と20年固定又は30年固定のミックス

金利タイプのミックスについては、お勧めできる人はかなり限られてきます。しかし、固定期間の長さをミックスするミックスローンは比較的多くの人にお勧めできる方法なんですよ。

(1)当初固定期間をミックスするメリットとリスク

では10年固定と20年固定をミックスするという例で、固定期間をミックスするというミックスローンにどういうメリットがあり、どういうリスクがあるかを説明しますね。

✓10年固定の方は固定期間が終わる10年後に残りを一括返済します。
✓20年固定の方は固定期間が終わる20年後に残りを一括返済します。
縦軸に利息、横軸に期間でグラフにすると下のようになります。

利の低さを利用して、当初固定の10年が終わった瞬間に一括返済してしまう方法です。

✓当初10年の固定期間が終わった瞬間に一括返済してしまえば、金利変動リスクは無い。
✓当初20年の固定期間が終わったところで、元本が安全圏まで減っていれば、少々金利が上がっていても怖くない。

当初10年のタスクは一括返済です。これが出来ない金額を設定してはいけません。これがこのミックスローンのリスクです。

(2)住宅ローン控除との相性が抜群

20年、30年という超長期の固定金利で借りようと考えている人には10年という固定期間をミックスするのがお勧めですよ。10年固定金利の住宅ローン控除のメリット最大化効果を取り入れることが出来るからです。

住宅ローン控除とはローン残高の1%を税金からマイナスして還付(返金)される減税措置でしたね。つまり住宅ローン残高が高い方が、還付される税金は大きくなるんです。

このミックスローンの繰上返済は10年固定の方を10年の固定期間が終わった瞬間に行います。これによって当初の10年は住宅ローンの残高を高く維持して住宅ローン控除の恩恵をより多く受けられる仕組みになっているのです。

3.フラット35Sで10年後に繰上返済してもOK

フラット35Sはわざわざミックスしなくても、最初から固定期間がミックスされている住宅ローンです。フラット35Sで10年後に多額の繰上返済を行うことでも上記のミックスローンと同様の効果を得ることが出来ます。

(1)フラット35Sは当初10年(5年)の金利が0.3%引き下げになる

フラット35Sとは、住宅金融支援機構のフラット35の申込みする人が、省エネルギー性、耐震性などに優れた住宅を取得する場合に、フラット35の借入金利を一定期間(5年又は10年)、0.3%引き下げる補助金制度です。

✓当初の10年又は5年についてはフラット35よりも0.3%低い金利。
✓その後はずっと固定のフラット35の金利。

ですから、10年(又は5年)固定金利と35年固定金利が最初からミックスされた住宅ローンだと言えるんですよね。どちらも借入時点で決まっていて固定されているというのがミソです。ですから、

フラット35Sで借りて10年経過したところで残高の半分を繰上返済する。

こうしても、同じような効果を得ることが出来ます。10年経過したところで元本を半分にするわけですから、その後の毎月の元利均等返済額はそれまでの半分になります。そして、当初の10年は住宅ローン控除がありますので、ローン残高は多い方がトクです。これは10年固定を混ぜるミックスローンの時と同じことですね。

(2)金利変動リスクが無いというメリットと団信が別料金というデメリット

10年固定と20年固定又は30年固定のミックスには金利変動リスクがあります。例えば10年固定の方の残高を10年後に全額繰上返済出来なかったとしたら、そこから先はその時の変動金利になります。

一方でフラット35Sについては、例えば10年後に繰上返済出来なかったとしても今の時点で金利が固定されていますよね。金利の変動リスクはありません。これは明らかなメリットです。

これに対してデメリットもあります。フラット35Sは団信(団体信用保険)が任意加入で加入する場合は我々利用者が保険料を負担しなければならないという点です。団信に加入する場合は、民間金融機関でミックスローンを組む場合よりも保険料分だけコストが上乗せとなります。

4.固定期間のミックスローンはどんな人に向いているか?

住宅ローンの金利タイプを知ることのみならず、返済計画についても戦略を持つことが最も失敗の無い選択につながると思っています。

とにかくミックスローンなんて組むもんじゃない…

もしも、こういう認識であったのなら、ひとつレベルアップできたのではないかと思います。銀行はお金を貸すまでがお仕事です。もちろん回収もしますけど、住宅ローンをどうやって返すか?という返済計画は他でもない自分が決めるのです。

固定期間のミックスローンが合っているのはどんな人か?どんな人に固定期間のミックスローンがお勧めかを最後にお話ししておきましょう。

(1)計画的な貯蓄が得意な人

固定期間のミックスローンは短い方の10年固定をまず10年後に全額繰上返済する必要がありますので、繰上返済資金を計画的に貯蓄する必要があります。ですから、計画的な貯蓄が得意という人にはオススメです。

いずれにしても定年までには完済することが必要だということを第1回:自分にとっての住宅ローンとは何か?をあなたは知らないでお話ししました。計画的な貯蓄はミックスローンを組まなくても必須です。しかし固定期間のミックスローンを組む場合は、2段階で一括返済の貯蓄が必要なのですね。

(2)年の差婚の共働き夫婦

夫婦共働きで住宅ローンを返済するつもりだけど、年の差婚で夫があと10年位で定年になるようなケースです。

定年まであと10年ということは年収も平均より高めでしょうが、さすがに住宅ローンを10年で完済するのは難しそうです。残りの期間は世帯年収か半分以下になることが、最初から確実に予測されるケースです。ならば、前半の10年で住宅ローンの半分を完済して、残りの期間の毎月の返済額を半分にするという固定期間のミックスローンがマッチするでしょう。

(3)子どもの大学入学など後半に多額の支出が見込まれる人

住宅ローン期間の後半に大きな支出が確実に予測されるケースにも固定期間のミックスローンは有効ですよ。典型としては、子どもの大学の授業料です。子どもが大学に入学する前までに住宅ローンの元本を半分に減らし、多額の授業料の支出に備えるというものです。

文部科学省によると、40年前に年間3万6千円だった国立大学の授業料は、15倍の約54万円になっており、15年後の2031年度には国立大の授業料が年間93万円程度にまで上がる可能性があるそうです。

今3歳のお子さんが大学生になる頃には、国立大学に進学したとしても、一人あたり400万円の学費が必要な計算なのですよ。国公立なら授業料は安いという今の常識は15年後には過去のものになっているかもしれません。

5.まとめ~家を持つことの意味

『変動金利は安いけど金利上昇が怖い、固定金利は高い、どっちか決められない…』

そして安易にミックスローンを選ぶ人が一定数います。銀行の方も利用者のニーズに応えるためにミックスローンを販売します。彼らは貸金の元本と利息が回収できればそれで良いのです。

しかし、住宅ローンの金利タイプの選択は、これまでの5回のシリーズで解説してきたその本質をしっかり理解したうえで妥協の無い決断をするべきなのですよ。そして、自分のライフプランに合った繰上返済を行うために計画的に貯蓄していく必要があります。

銀行はただお金を貸してくれるだけです。自分のライフプランに合った返済計画は、ほかでもない、自分で作りださなくてはなりません。家を持つということは不動産としての家だけでなく、自分と家族の人生を守る資金計画を持つことをも含むものなんです。

家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本
千日 太郎 (著) / 日本実業出版社

文:

住宅ローンの選び方【中級編】by 千日太郎
第1回:自分にとっての住宅ローンとは何か?をあなたは知らない
第2回:変動金利とは何か?をあなたは知らない
第3回:固定金利とは何か?をあなたは知らない
第4回:「当初固定金利」とは何か?をあなたは知らない
第5回(前編):固定金利と変動金利のミックスローンとは何か?をあなたは知らない
第5回(後編):一定期間固定金利のミックスローンとは何か?をあなたは知らない

千日 太郎

ブロガー

この記事を書いた人

関西地方在住のブロガー。昭和47年生まれの男性という以外は、詳細を明らかにしていない。自身もリーマンショックの年の2008年に新築マンションを購入し、住宅ローンを借りている。
インターネット上には家の購入や住宅ローンを選ぶときに役立つまともなサイトが少なすぎるという思いから「千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える」及び「千日の住宅ローン無料相談ドットコム」を運営しており、一般の人からの住宅ローンや不動産購入についての相談に無料で答え、個人を特定できない形でその質問と回答を公開している。

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