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固定金利と変動金利のミックスローンとは?|住宅ローンの選び方【中級編 (前編)】

住宅ローンに関するブロガーとして著名な千日太郎さん。過去にお話しいただいた「ボーナス払い ダメ、絶対」「今の低金利時代に定期預金なんて勿体ない?ならば住宅ローンを繰上返済しよう」が大変好評だったため、今回はシリーズで住宅ローンの選び方について語っていただきます。自身がマイホームを購入した経験と、ブログで受け付ける住宅ローン相談に答えることによって蓄積される知識を元に編み出された「千日メソッド」を大公開。(いえーる 住宅ローンの窓口 ONLINE編集部)

千日の住宅ローンの選び方(中級編)シリーズの5回目です。
異なる金利タイプの住宅ローンを組み合わせるミックスローンについてお話しようと思います。題名としては中級編ですけど、これまでの4回の総まとめ的なテーマです。上級編といっても差し支えないと思います。
書いているうちに2つに分けなければ、まとめきれないことに気づきまして、前編と後編に分けることにしました。

第1回:自分にとっての住宅ローンとは何か?をあなたは知らない
第2回:変動金利とは何か?をあなたは知らない
第3回:固定金利とは何か?をあなたは知らない
第4回:「当初固定金利」とは何か?をあなたは知らない
第5回(前編):固定金利と変動金利のミックスローンとは何か?をあなたは知らない
第5回(後編):一定期間固定金利のミックスローンとは何か?をあなたは知らない

ミックスローンとは単純に言うと、1つの住宅を担保にして2枚の住宅ローン契約書を結ぶことです。

✓住宅は一つ
✓借入は異なる金利タイプで2本

銀行の担当者はこういう説明をすると思います。なんでこんなことをするんでしょうか?多くの利用者が変動か固定かを決められずにこうしたミックスローンを組みたいという需要があるからです。

✓金利上昇リスクが怖いので固定金利を混ぜる。
✓固定金利だけだと高いので変動金利を混ぜる。

こうすると、変動金利と固定金利のデメリットを少なくすることが出来ます。しかし、同時に変動金利と固定金利のメリットも減ってしまいます。

✓変動金利のみで借りるよりも高い金利になってしまう。
✓固定金利だったら無かった金利上昇リスクがある。

それに加えて2本の住宅ローン契約を結ぶことで諸費用も2倍近くかかってしまいます。

✓銀行に払う手数料:約3万円×2本
✓印紙税:2万円×2本
✓登録免許税:借入×0.4%☜変わらず
✓司法書士報酬:5~10万円×2本

『だからミックスローンを選んではいけない』

もしこのように思っているのだとしたら、私の話を聞く価値があると思います。そんな単純なものではありません。もっと奥が深いのですよ。

1.変動金利と固定金利はミックスできない水と油

まず、多くの人が一度は考える変動と固定のミックスについて解説しておこうと思います。まずは変動金利と固定金利はどういうものだったかを確認します。

✔変動金利とは短期プライムレート(※)によって銀行が金利を上げたり下げたりする金利タイプです。金利は安いですけど上がるリスクがあります。
※短期プライムレート
金融機関が最優良の企業に対し融資する1年以内の短期貸し出しの最優遇金利。

✔固定金利とは借入時の適用金利が全期間にわたってずっと適用される金利タイプです。金利は変動より高いですけど上がるリスクはありません。

『確かに、お互いのメリットを打ち消しあってしまうかもしれないけど、同時にデメリットも小さくなるんだから、それはそれでアリじゃないの?』こんな風に考える人もいるでしょう。しかし、2つの大事なことを忘れているんですよ。

✓金利タイプは2つあっても、借りる人は1人しかいません。
✓金利タイプは2つあっても、担保となる家は1つしかありません。

どういうことなのか、これから分かりやすく説明していきますね。

2.複数の収入がある人なら良いけれど

これまでの4回のシリーズで、変動金利が向いている人、固定金利が向いている人について書いてきました。

固定金利が向いている人は、公務員など収入が景気の影響を受けにくい人です。

好景気のインフレ時には金利は上がり、不景気のデフレ時には金利は下がる法則があります。今は不景気のデフレで低金利なので、公務員のように収入が景気の影響を受けにくい人にとっては、固定金利で借りることでとても有利に働きますね。公務員のように、収入が景気の影響をあまり受けない人にとって、ローンの負担を一定にする効果があるということです。

なので、固定金利に変動金利を混ぜると、せっかく一定にしたローンの負担を変動させてしまうことになります。

一方で変動金利が向いている人は、収入が景気の影響を受けやすい業種のサラリーマンや自営業の人です。

不景気でデフレの時は収入が減りますが、金利が低く抑えられているので負担は軽減されます。逆に好景気でインフレの時は収入も増えてますので金利が高くても負担は大きくありません。

今は不景気でデフレ、超低金利です。かつて日本がインフレでバブル期だった頃の住宅ローンの金利は7%位でしたがその負担は同じなんです。かえって今は先行きの暗さがある分だけ負担感が大きいともいえます。変動金利は景気と連動する傾向があるので、収入が景気の影響を大きく受ける人にとっては負担を一定にする効果があるのです。

なので、変動金利に固定金利を混ぜると、景気で上下する収入に関係なく一定の高いローン負担を負うことになります。

つまり、金利タイプをミックスすることで『それぞれのデメリットを相殺している』という面もありますが、同時に『自分の収入タイプに合っていない金利タイプを混入させている』という面もあるのです。しかし、自分の収入が固定と変動のミックスになっているのなら良いのではないでしょうか。

3.家を二つに分けられるんだったら良いけれど

さっきは住宅ローンを『借りる人の収入面』から金利タイプをミックスする意味を説明しましたので、今度は住宅ローンの『担保に入れる家の面』から考えてみましょうか。

変動金利が向いているのは、これから家族が増えるかもしれない、また海外への転勤などで家を手放す可能性もある。こういった理由から、この家にずっと住むとは限らない。という人です。なんと言っても、金利が一番低いのが変動金利ですから、売却するまでの利息の負担が最も軽くなる可能性が高いです。

一方で固定金利が向いているのは、基本的にこの家にずっと住み続けるつもりなので、この住宅ローンを長く借りるという人です。固定金利にはその期間の金利を固定するというコストが乗っているんです。住宅ローン契約の全期間にわたって金利が変わらないのが固定金利ですから、買い替えなどによって大幅に早く完済するというのはロスになるんです。

家は一つしかありません。

変動金利の部分だけを売却して完済し、固定部分には長く住むので借り続ける…?不可能です(笑)。つまり、形だけ金利タイプをミックスしたところで、家についての方針は一つしかありえません。けして馴染むことのない水と油だということです。

4.固定金利と変動金利のミックスローンはどんな人に向いているか?

住宅ローンの金利タイプの本質をしっかりと理解して、自分に合った金利タイプを選択することが、最も失敗の無い選択につながると思っています。

固定か変動か決められないから、とりあえずミックスにしておいて…

もしも、こういう認識であったのなら、ひとつレベルアップできたのではないかと思います。銀行は借りたい人にお金を貸すのがお仕事です。金利タイプをミックスしたいという利用者にミックスローンを提供するだけです。自分に合った商品を選ぶのは自分しかいません。

固定金利と変動金利のミックスローンが合っているのはどんな人か?どんな人に固定金利と変動金利のミックスローンがお勧めかを最後にお話ししておきましょう。

(1)いつでも片方を繰上返済できる貯蓄のある人

今、変動か固定を決めなくても、いつでもどちらか一方だけに出来るなら問題ないですよね。つまり、変動金利と固定金利のどちらか一方をいつでも全額繰上返済できるほどの貯金がある人にとっては、決断を保留しても問題ないです。

(2)収入タイプの違う共働き夫婦(変動固定ミックス)

固定と変動の金利タイプのミックスについてお話ししたように、固定金利と変動金利とではマッチする収入のタイプが違うのですよね。ということは、

✔︎夫婦共働きで住宅ローンを返済する。
✔︎夫婦それぞれの収入が固定金利タイプと変動金利タイプに分かれている。

こんなケースなら固定と変動をミックスした住宅ローンを組むことが合理的だと言えるでしょう。千日の髪を切ってる美容師さんは数年前に独立して自分の店を持ちました。奥様は公務員です。この美容師さんのようなケースなら固定と変動のミックスも十分にアリだと思いますよ。

5.まとめ~住宅ローンの選択に『妥協』は禁物

『変動金利は安いけど金利上昇が怖い、固定金利は高い、どっちか決められない…』

そして安易にミックスローンを選ぶ人が一定数います。銀行の方も利用者のニーズに応えるためにミックスローンを販売します。彼らは貸金の元本と利息が回収できればそれで良いのです。

しかし、住宅ローンの金利タイプの選択は、これまで4回のシリーズで解説してきたその本質をしっかり理解したうえで妥協の無い決断をするべきなのですよ。

家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本
千日 太郎 (著) / 日本実業出版社

文:

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人生の一大イベントであるマイホーム購入。せっかく購入するなら、後悔したくないですよね。そして、マイホーム購入をするにあたり必要不可欠な住宅ローン選びも非常に重要です。
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住宅ローンの選び方【中級編】by 千日太郎
第1回:自分にとっての住宅ローンとは何か?をあなたは知らない
第2回:変動金利とは何か?をあなたは知らない
第3回:固定金利とは何か?をあなたは知らない
第4回:「当初固定金利」とは何か?をあなたは知らない
第5回(前編):固定金利と変動金利のミックスローンとは何か?をあなたは知らない
第5回(後編):一定期間固定金利のミックスローンとは何か?をあなたは知らない

千日 太郎

ブロガー

この記事を書いた人

関西地方在住のブロガー。昭和47年生まれの男性という以外は、詳細を明らかにしていない。自身もリーマンショックの年の2008年に新築マンションを購入し、住宅ローンを借りている。
インターネット上には家の購入や住宅ローンを選ぶときに役立つまともなサイトが少なすぎるという思いから「千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える」及び「千日の住宅ローン無料相談ドットコム」を運営しており、一般の人からの住宅ローンや不動産購入についての相談に無料で答え、個人を特定できない形でその質問と回答を公開している。

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