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変動金利は怖くない!|住宅ローンの選び方

住宅ローンに関するブロガーとして著名な千日太郎さん。過去にお話しいただいた「ボーナス払い ダメ、絶対」「今の低金利時代に定期預金なんて勿体ない?ならば住宅ローンを繰上返済しよう」が大変好評だったため、今回はシリーズで住宅ローンの選び方について語っていただきます。自身がマイホームを購入した経験と、ブログで受け付ける住宅ローン相談に答えることによって蓄積される知識を元に編み出された「千日メソッド」を大公開。(いえーる 住宅ローンの窓口 ONLINE編集部)

千日の住宅ローンの選び方シリーズ、今回は全5回シリーズの2回目です。
住宅ローンの変動金利についてお話しようと思います。

第1回:自分にとっての住宅ローンとは何か?をあなたは知らない
第2回:変動金利とは何か?をあなたは知らない
第3回:固定金利とは何か?をあなたは知らない
第4回:「当初固定金利」とは何か?をあなたは知らない
第5回(前編):固定金利と変動金利のミックスローンとは何か?をあなたは知らない
第5回(後編):一定期間固定金利のミックスローンとは何か?をあなたは知らない

賭けてもいいですけど、不動産屋がまず一番に我々に見せる住宅ローンのシミュレーションは変動金利で組んだものです。新築マンションの広告チラシなどでは『月〇万円代で73平米3LDK』とアピールしてます。

今の家賃より安い支払いで新築マンションが手に入る!

これほど強烈に魅力的な広告はありませんよね。千日も思わず2度見することしばしばです。

変動金利は、短期プライムレート(※)によって銀行が金利を上げたり下げたりする金利タイプですよね。数ある住宅ローンの金利タイプの中でも金利が安いので、初めて住宅ローンを組もうという人が必ず一度は検討する金利タイプです。

※短期プライムレート
金融機関が最優良の企業に対し融資する1年以内の短期貸し出しの最優遇金利。

今後金利が上がる可能性があるので怖いな、と思って固定金利を調べる。と、固定金利は高いな、と思うわけですよね。それで変動か固定かでずっと心が揺れている。そんな人は是非読んでみてください。

今回は金利動向に左右されない変動金利の選び方と返し方についてお話しようと思います。

変動金利なのに金利動向に左右されない方法があるのか?と思われるかもしれません

あるんです。

1.金利の上昇リスクは怖くない

やっぱり元本が数千万という未知の領域ですから、みんな金利の上昇リスクを過大評価する傾向があるんです。実はみんなが思うほど怖くは無いのですよ。

かつて千日が住宅ローンを組もうとしていた時、変動金利は金利上昇リスクがあるから怖いと思っていました。そしてある銀行に相談に行った時に専属のFPにその不安をぶつけてみたんです。

千日『…でも、変動金利は上がるかもしれないでしょ?』

FP『そうですね~でもたぶん上がらないですよ』

千日(ポカン顔)

いやはや、ですね。そこそこいい歳のFPさんだったんですけどね。銀行の専属FPでもこんな認識の人が居るんです。

これからお話するのは、金利の予測ではありません。住宅ローンの千日メソッドでは金利を予測しません。当たる保証が無いからです。当たるも八卦当たらぬも八卦の予測に人生の重要な選択を委ねるほど愚かなことは無いと思っています。

(1)変動金利の5年ルールと125%ルールで『固定』される支払額

まずは通り一遍の話しですけど、5年ルールと125%ルールについてお話しておかねばなりません。

5年ルールとは、金利が上昇しても5年間は直前の元利均等返済額を維持するというものです。つまり、急に金利が上がったからといって毎月の支払いが急に増えるわけでは無いんですよね。

そして125%ルールとは、金利が上昇してから5年経過して毎月の元利均等返済額を増やす時には、直前の125%までを上限にするというものです。つまり大きく金利が上がっても毎月の支払いは125%までしか上がらないということです。この125%はまた5年間は維持されます。

ですから、元本が多い当初の10年間の元利均等返済額については、最大でも最初の125%までしか上がることは無いのです。

とは言っても、金利が上がって返済額が変わらないと元本の減りが遅くなりますよね?でも、大丈夫なんです。

(2)住宅ローン控除で相殺される

住宅ローン控除とは当初の10年間について、住宅ローン残高の1%を税金からマイナスする減税措置です。変動金利だと今金利は0.5%位ですよね。つまり、払う利息よりも税金から返金される(還付される)金額の方が大きいので、逆に利息が貰えるような状態なんです。

0.5%-1%=-0.5%の利息を払う。つまり、0.5%利息が貰えるということです。

例えばこの10年の間に金利が0.5%から1.5%に上がったとしても、こういう式になります。

1%-1.5%=0.5%の利息を払う。つまり、当初払うつもりだった利息を払うだけということです。

当初の10年間というのは、元本が多くなかなか減らない時期です。そんな時期に金利が上がると、さらに元本の減りが遅くなってしまいますよね。でも、住宅ローン控除は元本が多い方がその恩恵も多いです。元本の減りが遅い方が有利に働くわけです。

金利の上昇リスクが無いとは言いません。上がるときには上がるでしょう。

しかし、上がったとしてもそれが家計に及ぼすダメージは、変動金利のルール(5年ルールと125%ルール)と住宅ローン控除という制度よってかなりの部分が緩和されるように設計されているのですね。

銀行の経営が危なくなったら金利を上げてくるかもしれない…

たまに、こんな風に言う人が居ますが、銀行の経営が傾く可能性よりも、一般的には個人的に仕事でしくじって給料が下がったり、病気になって働けなくなって無収入になってしまう可能性の方がよっぽど高いはずです。

どうしても自分には甘くなってしまうのですよ。

2.金利の上昇リスクに備えるには?二つの「4」

それでも、金利の上昇リスクにはある程度の備えが必要です。住宅ローンの千日メソッドでは、変動金利で借りる場合は以下の2つの条件をクリアすることをお勧めしています。題して『変動金利の2つの「4」』です。

✓毎月の元利均等返済額の4分の1以上を貯金する。
✓上記の貯金と元利均等返済額を手取り月収の4割(40%)以下にする。

(1)返済額の4分の1以上を貯金する理由

毎月の返済額の4分の1以上を貯金出来るということは、銀行が1度に上げる上限の125%にいつでも対応可能ということです。

元利均等返済額
100%→5年→125%→5年→156%→5年→195%→…
対応する金利
0.7%→5年→ 2.3%→5年→ 3.6%→5年→ 5.3%→…

このように、最短で15年で約2倍になることもあり得るのですが、返済額が2倍になる場合の変動金利は約5.3%です。これはバブル期の変動金利の水準です。ここまでになる可能性も否定は出来ませんが、少なくとも一段階上がるケース、125%になるケースについては、想定しておく必要があるでしょう。

(2)手取り月収の4割以下にする理由

銀行の審査で住宅ローン融資の審査で判断するラインはローン返済額が収入の4割以下というものがあります。4割超が住居費というのは、何か不測の出費があったときに返済が滞る可能性が高いという銀行の経験則から導かれた割合です。

年収で計算する方法もありますが、住宅ローンの支払いは月ごとですから、月収、それも手取り月収をベースに判断する方式がより実践的です。年収だとボーナスも込みになってしまいます。

ボーナスは35年間ずっと必ず一定以上が出るとは限らないですよね。

4分の1の貯金+ローン返済額を手取り月収の40%以下に抑えるというのは、金利が上がった場合も、今まで通りの生活水準を維持出来るラインということです。

以上が変動金利で『毎月の返済を無理なく行える』ための千日メソッドです。では次は、『住宅ローンを完済した上で老後の生活資金を残す』にはどうしたらいいか?という方法についてお話しましょう。

3.60歳残高を安全圏にする繰上返済のタイミングは?10年後の折り返し時点

これは、変動金利だけに限らず、全ての金利タイプについて共通のルールです。住宅ローン控除がある10年間は繰上返済せずに貯金を温存しておき、住宅ローン控除が終わってから繰上返済するというものです。

住宅ローン控除は各年の12月31日のローン残高×1%をその年の所得税と翌年の住民税からマイナスする減税措置ですから、住宅ローン控除がある間にローン残高を減らしてしまうのは損なんですよ。

特に変動金利の場合、金利は1%を下回りますから、ローン残高が多ければ多いほど『収入』になるんですよね。

なので、繰上返済は10年後にまとめて一気に行うのがお勧めです。10年の住宅ローン控除が終わった瞬間は、いわば折り返し地点なんです。

✓当初の10年は元本をなるべく高く維持して住宅ローン控除の恩恵を受ける。
✓10年経過したら、60歳の残高を安全圏にするべく積極的に繰上返済する。

【参考』
今の低金利時代に定期預金なんて勿体ない?ならば住宅ローンを繰上返済しよう

4.変動金利はどんな人に向いているか?

いかがでしたでしょうか。住宅ローンの金利タイプについて、正しい認識を持つことが最も失敗の無い選択につながると思っています。

変動金利は変動するから何となく怖いな…

もしも、こういう認識であったのなら、ひとつレベルアップできたのではないかと思います。金利タイプというのは銀行が売り出す住宅ローンという『商品の種類』です。単に金利が安いということではなく、自分に合った商品なのか?という判断をする必要があります。

変動金利タイプが合っているのはどんな人か?どんな人に変動金利がお勧めかを最後にお話ししておきましょう。

(1)二つの『4』をクリア出来る人

前に書いてますが、変動金利を選ぶ場合には以下の二つの『4』をクリアすることを推奨しています。

✓毎月の元利均等返済額の4分の1以上を貯金する。
✓上記の貯金と元利均等返済額を手取り月収の4割(40%)以下にする。

いま、変動金利は低いですが、固定金利も歴史的な低金利です。固定金利の場合は前者の条件は不要ですから、実は『高い』と思われている固定金利の方がハードルは低いんです。

それと、コツコツ貯金が出来る人は変動金利に向いています。条件的に二つの『4』をクリアしていても、4分の1を貯金しなかったら、結局クリアできていないのと同じですよね。

(2)今後家を買い替える可能性がある

これから家族が増えるかもしれない、また海外への転勤などで家を手放す可能性もある。こういった理由から、この家にずっと住むとは限らない。という人にも変動金利はお勧めです。

なんと言っても、金利が一番低いのが変動金利ですから、売却するまでの利息の負担が最も軽くなる可能性が高いです。なので比較的若い人で、将来の家族の人数や仕事のスタイルや場所がまだまだ変わる可能性があるという人にも変動金利はお勧めです。

確かに固定金利も歴史的な低金利です。しかし、固定金利にはその期間の金利を固定するというコストが乗っているんです。固定期間の金利が変わらないのが固定金利ですから、それより早く完済するというのはロスになるんです。いわばオーバースペックな商品ということです。

当初の10年間は住宅ローン控除によって金利の上昇による損失は相殺されますから、10年以内に家を買い替える可能性が高い場合は変動金利がお勧めです。その場合は変動金利の2つの『4』の条件については少し緩和しても良いと思います。

5.まとめ~住宅ローンの選択に『何となく』は禁物

住宅ローンの金利タイプを選ぶのに『何となく』は禁物ですよ。

✓何となく金利が安いから…という理由で変動金利を選ぶと金利上昇に耐えられないリスクを負います。
✓金利上昇リスクが怖いから…という理由で固定金利を選び、その後数年で買い替えたならその分割高な利息を払ってしまったことになります。

住宅ローンの金利タイプをちゃんと把握し、自分のライフプランに合った商品を選ぶようにしましょう。

家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本
千日 太郎 (著) / 日本実業出版社

文:

最適な住宅ローン選びをお手伝い!専門家による無料相談

人生の一大イベントであるマイホーム購入。せっかく購入するなら、後悔したくないですよね。そして、マイホーム購入をするにあたり必要不可欠な住宅ローン選びも非常に重要です。
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住宅ローンの選び方【中級編】by 千日太郎
第1回:自分にとっての住宅ローンとは何か?をあなたは知らない
第2回:変動金利とは何か?をあなたは知らない
第3回:固定金利とは何か?をあなたは知らない
第4回:「当初固定金利」とは何か?をあなたは知らない
第5回(前編):固定金利と変動金利のミックスローンとは何か?をあなたは知らない
第5回(後編):一定期間固定金利のミックスローンとは何か?をあなたは知らない

千日 太郎

ブロガー

この記事を書いた人

関西地方在住のブロガー。昭和47年生まれの男性という以外は、詳細を明らかにしていない。自身もリーマンショックの年の2008年に新築マンションを購入し、住宅ローンを借りている。
インターネット上には家の購入や住宅ローンを選ぶときに役立つまともなサイトが少なすぎるという思いから「千日のブログ 家と住宅ローンのはてな?に答える」及び「千日の住宅ローン無料相談ドットコム」を運営しており、一般の人からの住宅ローンや不動産購入についての相談に無料で答え、個人を特定できない形でその質問と回答を公開している。

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