こんにちは、ブロガーの千日太郎です。最近、アメリカの長期金利が急上昇して、住宅ローンの金利が高騰し、アメリカのマイホーム市場に不穏な影を落としているそうです。
そもそもの発端はFRBのパウエル議長(日本でいう日銀総裁)が利上げに対して強気な発言をしたことにある、と言われています。中央銀行のトップの発言に対して金融市場が過敏に反応することは、よくあることです。
これに対して日本は?というと現任の黒田東彦総裁の再任が濃厚です。黒田総裁は2016年のマイナス金利政策をはじめとする「異次元の金融緩和」の立役者であり「2%の物価上昇率の目標」をかかげ、今の時点で出口対応(利上げ)を考える局面ではないと強調しています。
当分の間金利は上がらないのでは?
ということになるのですが、市場関係者の間ではそろそろ利上げすべきタイミングが近づいてきているのではないか?という見方が優勢になってきているようです。
そこで今日は、2018年の住宅ローンの金利の動向についてみんなが疑問に思うところをお話していきましょうか。
黒田総裁でさらにマイナス金利になることはあるの?
黒田総裁は再任の所信として「強力な金融緩和を粘り強く続けていくことで2%の物価目標を実現できる」と言っています。これは黒田総裁がこれまでの5年間に行ってきた大規模な金融緩和路線をこれからも続けていくということを言っているのです。
つまり、これまでの日銀が行ってきた金融緩和政策、黒田総裁の金融緩和政策を知ることで、これからの5年間の黒田総裁の方針というものが見えるのですね。
いまさら聞けないゼロ金利政策
ゼロ金利政策とは、1999年にバブル崩壊後の不況を脱するために日銀が民間銀行に貸す短期金利(無担保コール翌日物金利)を史上初の0.15%まで下げた政策です。当時の日銀総裁が「ゼロでも良い」と発言したことからそう呼ばれるようになりました。その後ITバブルで景気は回復し、一時は0.5%まで上昇させましたが2008年のリーマンショックによる世界金融危機で再び短期金利を0.1%とし、今に至っています。
住宅ローンの変動金利は、日銀が民間銀行に貸す短期金利の影響を受けると言われています。これは銀行の銀行である日銀が短期金利を操作することによって景気を操作する(金融調節)ということが伝統的に行われてきたからです。
✔ 不況の時は短期金利を下げてみんながお金を使いやすくする。
✔景気が良くなったら短期金利を上げてお金の使い過ぎにブレーキをかける。
今の激安の変動金利は、この2008年のリーマンショックからスタートしているんです。何を隠そう千日もこの時期に変動金利で住宅ローンを組みました。その当時で0.975%です。安くなったといっても今の倍くらいの金利ですよね。
リーマンショックのデフレ不況は根が深く、短期金利を0.1%まで下げても全く浮上する兆しが見えませんでした。これ以上短期金利を下げたらゼロ%になってしまいますから、もはや短期金利で景気を操作するという伝統的な方法では、にっちもさっちも行かなくなってしまったわけです。
そこで登場したのがアベノミクスです。
いまさら聞けないアベノミクスのリフレ派政策
アベノミクスとは、安部首相の名前とエコノミクスとかけ合わせた造語で「 財政出動」「金融緩和」「成長戦略」という「3本の矢」で、長期のデフレを脱却し、経済成長を目指すものです。3本の矢のうち、住宅ローンの金利に直結する「金融緩和」を担うのが日銀の黒田総裁です。アベノミクスの理論的な柱になっているのが経済学で『リフレ派』と呼ばれる人達の考え方です。
リフレ派政策とは、緩やかな物価上昇を継続することで、デフレの不況を脱して経済成長を達成しようとする政策です。
日銀の黒田総裁は、緩やかな物価上昇率(年に2%)の目標を定め、それを達成するまで世の中に出回るおカネの量(マネタリーベース)を増やすために行ったのが「国債の大量買入れ」です。
国債の大量買入れによって物価が上昇に転じ、長く続いたデフレを脱却出来たという分析結果が出ています。しかし、なかなか目標の物価上昇率2%には達しなかったのです。日銀が市中に送り込んだお金の大半が金庫で眠る、タンス預金になっていたからです。
いまさら聞けないマイナス金利政策
マイナス金利政策とは、民間銀行が日銀に預けている当座預金の一部にマイナスの金利を適用するというものです。
日銀としては、民間銀行が急いで預金を引き出し、貸し出しを増やして市中の流通量が増えるという絵を描きました。でも、銀行は引き出したお金でこぞって国債を買いに走ったんですよね。これによって国債の価格が高騰し、国債の利回り(長期金利)が史上初のマイナスとなりました。
2016年に住宅ローンの金利が歴史的な低金利になったのはわたし達にとって嬉しいことですが、その背景には、マイナス金利政策によって国債の価格が異常に高騰してしまったという日銀の誤算があるのです。
いまさら聞けないイールドカーブ・コントロール政策
イールドカーブ・コントロール政策とは、マイナスになってしまった長期金利を0%で安定させるために、日銀が金融市場に介入して国債の価格を操作する政策です。
住宅ローンの金利が低いのは嬉しいですけど、これによって民間銀行の利益が圧迫されてしまい、投資を海外に移したり、国内では貸し渋りに振れるリスクが高まってきたからです。日本国内で流通するお金を増やしたいのに、海外投資にお金を使われ、国内で貸し渋られてしまったら本末転倒ですものね。
あの手この手で、世の中に流通するお金を増やそうとしてきましたが、大半がタンス預金となってしまい頭打ち。それを打破しようとしたマイナス金利政策という「劇薬」によって、長期金利がマイナス金利になってしまった。その対処療法として長期金利を操作するイールドカーブ・コントロール政策が打ち出され、今に至るのです。
なので、黒田総裁がさらにこれから5年間は再任されるということは、2%の物価上昇率を達成するまでの間は、長期金利の上昇が抑えられ、住宅ローンの金利上昇も抑えられる可能性が高いということになります。
黒田総裁の任期中に利上げはあるの?
冒頭に書いたように、アメリカの中央銀行は利上げに積極的です。日本だけがずっと今の低金利を続けていくのは難しいんじゃないのか?という声が、市場関係者の中から上がっていることは確かです。
しかし、金利を上げたときに住宅ローンを払えない人がたくさん出てくると、再びリーマンショックのような大きな混乱が起こる心配がありますよね。
何のために利上げするのか?過度なインフレを防止するため
そもそも何で利上げするのか?お金の使い過ぎにブレーキをかけるためです。
景気が上がって人々の購買欲が上がっている時に大量のお金が市場にあると、その国の貨幣の価値がどんどん下がってしまいます。同じモノを買うのに必要な価格が上がる状態です。これをインフレ(インフレーション)と言います。インフレには正常なインフレと過度なインフレがあります。
✔給与上昇=物価上昇となっていれば「正常なインフレ」。上がった価格が人々の労働に分配されていく。
✔給与上昇<物価上昇となった時が「過度なインフレ」で原材料や税金など、労働者の所得以外の部分が上がり、人々の生活を圧迫してしまう。
あまりに景気の上昇スピードが速いと、過度なインフレになってしまい却って国民の生活を脅かしてしまうので、日本銀行は国民の生活を守るために適度なブレーキをかけようとするのです。
デフレでは無くなったが利上げにはまだ早い←いまここ
黒田総裁は所信表明で「もはやデフレでない状況ははっきりしている」と言っていますね。じゃあ、利上げするの?というとそんなに簡単ではないんですよね。この利上げ(金融引き締め政策)というのは、タイミングとさじ加減がとても難しいのです。
これからの5年間の任期中に今までの大規模緩和の金融政策から「引き締め」に移行するタイミングに関しては、黒田総裁は、「直ちに議論するのは適切ではない」と述べていますね。
✔遅ければ、また、利上げが少なければ価格の上昇にブレーキがかからず過度なインフレになってしまいます。
✔逆に早すぎると、また、利上げしすぎるとせっかく上向いた景気が減速し、不景気に逆戻りしてしまいます。
少しタイミングと量を間違えば、失敗します。どんなタイミングでどれくらい上げればベストかというのは、やってみないとわからないのです。
2018年はどっちに転ぶか?不安定な状況にある
2018年というのは、アメリカやヨーロッパなどの中央銀行が利上げに舵を切る中で日本だけが低金利を維持する金融緩和政策をとり続けている状況です。
今までよりも、不安定な状況と言えるでしょうね。数か月先の住宅ローンの金利はどうなっているのか?それが分かるという人はマジの預言者かタダの詐欺師かのどちらかでしょう。
金利タイプや金融機関を早くから一つに絞ってしまうのではなく、金利の決まり方、対応の仕方が異なる複数の金利タイプ、金融機関で審査を通しておくことが重要なのです。
そんな2018年初頭にの著書「家を買うときに「お金で損したくない人」が読む本」が発売となりました。
こちらの著書では、それぞれの金利タイプに合わせた住宅ローンの賢い組み方、返済方法について詳しく書いています。その金利タイプごとに、どういう心構えと準備が必要なのか?他の本には無い踏み込んだ内容になっていると自負しています。ぜひお手に取ってみてくださいね。
文:千日太郎
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