配信元ARUHIマガジン
住宅ローンの返済期間は30年、35年といった長期の借り入れが一般的ですから、どのような住宅ローン金利タイプの商品を選ぶのか、どのように返済していくのかで、利息額も大きく変わってきます。ここでは固定金利と変動金利のそれぞれの特徴をご説明するとともに、返済額のシミュレーションを踏まえて、おすすめの金利タイプとその理由をお話します。また何歳までに住宅ローンを組むべきかも考えてみました。
できるだけ低い金利で、できるだけ長い期間で借り入れする
マイホームは人生最大の買い物といわれます。数千万円ものお金を一括で支払える人はそうそういないため、ほとんどの人は住宅ローンを組んで購入することになります。
家計のことを考えると、借金は1日でも早く返して安心したいと考える人は少なくないことでしょう。ですが、家計を安定させるためには、「お金はできるだけ低い金利で、できるだけ長い期間で借り入れする」ことが望ましいということをご存知でしょうか。
同じ金利で借り入れをした場合、返済期間が短ければ短いほど利息額は少なくなりますが、毎月の返済額は大きくなります。“できるだけ低い金利で、できるだけ長い期間”借り入れすることは、毎月の返済額を抑え、手元にある程度の現金を置いておくことができ、実は、家計の安定につながるといえるのです。実際、会社の資金繰りにおいては、この考え方が「常識」とされています。
早く借金を完済したいからと、返済期間を短くして毎月返済額が大きくなっても、余裕を持って返済を続けていければいいのですが、もしも毎月ギリギリの返済を続けて、手元に現金がほとんどない状態になっていたらどうなるでしょうか。そんな状況で収入が減ってしまったり、予想外の大きな出費がかかることになってしまったりしたら、最悪の場合、家計が破綻して新たな借金を抱えることになってしまう、せっかく購入したマイホームを失うことになってしまう、という事態も起こり得ます。まず、このことはしっかりと認識しておいていただきたいところです。
住宅ローンの金利タイプは3つある
住宅ローンには数多くの商品がありますが、返済額に最も大きな影響を与えるのは金利タイプ選びといえるでしょう。そこで、まずはおすすめの金利タイプから考えてみましょう。
住宅ローンの金利タイプには、「変動金利型」「当初固定期間選択型」「全期間固定金利型」の3つがあります。
「変動金利型」は、半年ごとに市場金利の動きに応じて金利が見直されるタイプです。民間金融機関の主力商品となっており、3つの金利タイプの中で最も金利が低く設定されています。
「固定期間選択型」は、一定期間(2〜20年)、金利が固定されているタイプです。固定期間が終わった後は、固定金利型か変動金利型かを選ぶことができるのが一般的です。その場合の金利は、固定期間が終わった時点での金利が適用されます。
「全期間固定金利型」は、借り入れ当初から完済するまでの金利が一定の住宅ローンです。全期間固定金利型の代表的な住宅ローンが【フラット35】になります。金利変動がないので、借り入れをした時点で総返済額が確定しますし、毎月返済額も一定なので返済計画が立てやすいのが大きなメリットです。
全期間固定金利型の【フラット35】と変動金利型、返済額の違いはどれくらい?
この3つの金利タイプのうち、固定期間選択型については、固定金利型と変動金利型の特徴を持ち合わせた金利タイプといえるため、ここでは、「変動金利か固定金利のどちらがおすすめか」という視点から変動金利型と全期間固定金利型の2つのタイプについて比較検討してみましょう。それぞれの金利タイプで35年ローンを組んだ場合、総返済額はどちらが大きくなるかシミュレーションしてみます。
借入金額は3,000万円、返済期間は35年間とし、変動金利型は楽天銀行の金利0.527%(2018年2月現在)、全期間固定金利型はARUHIフラット35の実行金利1.40%(団信加入・借り入れ9割以下、2018年2月現在)を適用するものとします。なお、融資手数料などは考慮しません。
また、前述したように、変動金利型のほうが金利は低いので、完済するまで金利の変動がなければ、当然、変動金利型のほうが総返済額は小さくなります。ですが、金利変動リスクを考慮しないシミュレーションをしても意味がありませんので、ここでは10年ごとに1%の金利上昇があるという条件で考えることとします。
【試算条件】 借入金額:3,000万円 返済期間:35年 金利(変動金利型):0.527% 金利(全期間固定金利型 【フラット35】):1.40% ※変動金利型については、10年ごとに1%の金利上昇があるものとする |
【変動金利型の返済額】
期間 | 金利 | 毎月返済額 | 各期間の返済額 | 返済額の内の利息額 |
---|---|---|---|---|
借入当初 | 0.527% | 7万8,234円 | 844万9,272円 | 125万5,159円 |
10年目以降 | 1.527% | 8万8,609円 | 1,063万3,080円 | 291万2,855円 |
20年目以降 | 2.527% | 9万5,604円 | 1,147万2,480円 | 276万7,610円 |
30年目以降 | 3.527% | 9万8,459円 | 708万9,055円 | 70万8,253円 |
総返済額 | 3,764万3,887円 | 764万3,887円 |
【全期間固定金利額の返済額】
金利 | 毎月返済額 | 総返済額 | 利息の総額 |
---|---|---|---|
1.40% | 9万392円 | 3,796万4,640円 | 796万4,640円 |
【試算結果】 変動金利型の総返済額:3,764万3,887円 全期間固定金利型の総返済額:3,796万4,640円 ※総返済額の比較:全期間固定金利型のほうが約30万円ほど高くなる |
おすすめはどんなローン商品? 変動金利型よりも全期間固定型?
このシミュレーションでは、「全期間固定金利型のほうが、総返済額が約30万円ほど高くなる」という結果になりました。もちろん、金利がいつどれくらい上昇するのかは誰にもわかりませんので、このシミュレーション以上に金利が上昇して総返済額が逆転する可能性も十分あります。仮に、10年ごとに金利が1.2%ずつ上昇した場合には、総返済額は逆転して、変動金利型のほうが負担は大きくなってしまいます。
ここでいえるのは、変動金利型を選んだ場合、「ローンを完済するまでは総支払額が確定しない」ということです。つまり、マイホームは人生で最大の買い物であるにもかかわらず、自分がその家をいくらで買うのかがわからないまま購入してしまうということです。これは非常にリスクの高いことなのではないでしょうか。
一方、全期間固定金利型であれば、前述したように、借り入れをした時点で総返済額が確定しますし、毎月返済額も一定です。確定した総返済額が増えることはない上に、家計に余裕ができたときに繰り上げ返済をすれば、確実に総返済額を減らすことができます。
もちろん、お金に余裕があれば、変動金利型でローンを組んで、繰り上げ返済をすることで総返済額を抑えることができますが、それはあくまでも短期間で多くのお金を返済しても家計に影響がない場合に限られます。
単純に金利だけを比較すると、変動金利型のほうが魅力的に思えるかもしれませんが、現在はかつてないほどの超低金利時代です。全期間固定金利型を選択した場合でも、十分に低金利の恩恵を受けることができますし、むしろ、ローン完済までその恩恵を受けられるのは非常に大きなメリットといえるでしょう。前述した「お金はできるだけ低い金利で、できるだけ長い期間で借り入れする」という考え方からいっても、超低金利時代の今は全期間固定型でローンを組むことをおすすめします。
また、技術革新がものすごいスピードで進んでいる現在、AI(人工知能)の発達により、今後10〜20年程度で多くの仕事が機械によって代わられるとも言われています。このような不安定な時代に長期の住宅ローンを組むには、返済額が上がることのない全期間固定型のほうが安心といえるのではないでしょうか。
全期間固定型を借り入れするなら、30年と35年のどちらがお得?
お金はできるだけ長い期間で借り入れするとはいっても、全期間固定型の住宅ローンを借り入れする場合、30年ローンと35年ローンではどれくらいの返済額の差が出るのでしょうか。ARUHIフラット35を例に考えてみましょう。
<ARUHIフラット35(団信加入)の2018年3月金利>
借入期間 | 融資比率9割以下 | 融資比率9割超10割以下 |
---|---|---|
15年〜20年 | 1.290% | 1.730% |
21年〜35年 | 1.360% | 1.800% |
この表を見ていただければわかるように、借入期間30年の場合と35年の場合では、金利は同じです。このARUHIフラット35で3,000万円を借り入れた場合、借入期間30年と35年では返済額にどのような差が出るのかシミュレーションしてみましょう。
【試算条件】 借入額:3,000万円 金利(全期間固定金利型・ARUHIフラット35):1.400%(団信加入・融資比率9割以下) |
借入期間 | 金利 | 毎月返済額 | 総返済額 |
---|---|---|---|
30年 | 1.400% | 10万2,102円 | 3,675万6,720円 |
35年 | 9万392円 | 3,796万4,640円 | |
差額 | 1万1,710円 | ▲120万7,920円 |
シミュレーションの結果、借入期間30年のほうが毎月返済額は1万1,710円の負担増になりますが、総返済額では120万7,920円の負担減という結果になりました。
ただ、先ほどから申し上げている「お金はできるだけ低い金利で、できるだけ長い期間で借り入れする」という考え方にしたがえば、35年でローンを組んで毎月返済額を抑えるべきでしょう。そして、余裕が出た分は貯蓄や運用に回して、子どもの教育資金や自分たちの老後資金といった「将来、必要になるお金」の準備をすることが大切です。その上で家計に余裕ができた時点で繰り上げ返済をすれば、返済負担を軽減することも可能になります。
とはいえ、このくらいの負担増であれば、貯蓄をしながら無理なく返済を続けられるという場合は、30年でローンを組んでも問題ないと思われます。このあたりの判断は、現在の家計状況だけでなく、将来必要になるお金についても計算した上で、資金計画のシミュレーションをして判断されることをおすすめします。不安な場合は、ファイナンシャル・プランナーなどの専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
年齢制限はある? 35年で借り入れするなら何歳までに住宅ローンを組むのがいい?
35年という長いローンを組むとなると、気になるのが何歳までに借り入れすればいいのかという点でしょう。
住宅ローンには年齢制限があります。【フラット35】の場合、申込時現在で70歳未満でなければなりません。もちろん、融資を受けるには審査を受ける必要がありますが、年齢制限を超えていなければ、住宅ローンを借り入れすることは可能です。
ただし、これはあくまでも「金融機関が融資を受け付けている年齢」であって、借り入れしていい年齢とは違うことに留意してください。金融機関が設けた年齢制限とは別に、「返済期限までに無理なく完済できるかどうか」という視点から「何歳までに借り入れするか」を判断する必要があります。
繰り上げ返済を考慮しなければ、サラリーマンの場合、定年が65歳であれば、現役のうちに返済を終わらせるためには30歳で住宅ローンを組むことになります。ですが、40代であっても50代であっても、無理なく完済できるのであれば借り入れすることに何ら問題はありません。貯蓄額や購入する物件の価格など、「無理なく完済できる」条件さえ整えば、たとえ定年後の人であっても住宅ローンを借り入れしても問題ないケースもあるのです。
家計の状況とライフプランを踏まえて、無理のない返済計画を立てた上であれば、何歳でも住宅ローンを借り入れしていいと言えるでしょう。ただし、年齢が高くなってから住宅ローンを借り入れする場合には、借入期間は長く設定したとしても、老後の生活設計との兼ね合いなどから短い期間で返済しなければならないケースも出てくるかもしれません。返済計画を立てる際には、ファイナンシャル・プランナーなどの専門家に相談されることをおすすめします。
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