夫婦で住宅ローンを利用する場合、借り入れ方法によっては、双方が控除を受けられる場合もあることをご存知でしょうか。
たとえばペアローンなどで借入れをすれば、夫も妻も控除を受けられるほか、節税効果を高めることが可能です。ただし、共有名義にすることのデメリットも理解しておく必要があります。本記事を参考に、2人で住宅ローン控除を活用するために必要な情報を確認していきましょう。
控除を適用するためには、借主であること、所得要件や住宅の要件を満たすことなど、いくつかの条件をクリアする必要があります。ここでは、制度と適用するための条件について詳しく解説します。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを活用してマイホームを購入した場合に、一定期間のみ所得税と住民税から控除が受けられる制度のことです。目的は住宅取得者の負担を軽減することと、住宅取得を促進することが挙げられます。
正式名称は「住宅借入金等特別控除」と呼ばれ、毎年末の住宅ローン残高に対して、一定の割合を所得税や住民税から控除できる制度です。控除率は2022年以降に入居した場合、0.7%となっています。
控除期間は新築住宅や買取再販住宅の場合は13年間、中古住宅の場合は10年間です。控除額の上限は住宅の種類や入居時期によって異なりますが、全期間の最大控除額は455万円となっています。
住宅ローン控除は、住宅取得者にとってうれしい支援策です。計画的に利用することで、大きな節税効果を得られるでしょう。
控除の主な条件としては、まず住宅ローンの借主であることが必須です。また、返済期間が10年以上であることや、居住年の合計所得金額が2,000万円以下であることなども条件となります。
住宅は床面積が原則50㎡以上で、その2分の1以上が自己の居住用であることが必須条件です。さらに、住宅の取得日から6か月以内に入居し、入居後引き続き住んでいなければなりません。
また、中古住宅の場合は、築年数や耐火・耐震性能などの追加条件もクリアする必要があります。
控除を適用するためには、これらの条件をすべて満たしていなければなりません。住宅を取得する前に十分に確認しておくことが重要です。
夫婦でローンの控除を受けるための方法としては、ペアローンまたは連帯債務で住宅ローンを組むケースが挙げられます。いずれの方法も控除を受けることが可能ですが、連帯保証を用いてローンを利用すると、保証人となった側は控除を受けられません。
控除の適用条件を満たすためにも借入方法の特徴をよく理解し、自分たちに合った方法を選ぶことが大切です。ここでは、それぞれの借入方法の特徴について詳しく解説します。
ペアローンとは、夫婦が同じ金融機関で個別にローンを借入れる方法です。借主は夫と妻の2人となり、お互いが相手の連帯保証人となります。
メリットとしては、単独ローンよりも借入総額 を増やせる点です。また、それぞれが住宅ローン控除を受けられるため、節税効果も高くなります。さらに2人揃って団体信用生命保険(団信)に加入できる点も強みで、万が一の際の保障も手厚いといえるでしょう。
ただし、事務手数料や印紙税などの諸費用が2人分かかる点はデメリットといえます。また、万一一方が高度障害状態になったまたは死亡した 場合でも片方のローン返済義務が残るため、返済負担は残りますので注意が必要です。
連帯債務とは、夫婦が共同で債務を負う形で住宅ローンを借入れる方法です。どちらかを主債務者とし、もう一方を連帯債務者とします。
メリットとしてはそれぞれの収入を合わせて審査を受けられるため、借入れ限度額を増やせる点です。また、ペアローンと同様にそれぞれが住宅ローン控除を受けられます。さらに住宅ローンの契約は1本になるため、ペアローンに比べて諸費用を抑えられる点も 魅力です。
ただし、連帯債務者の団信への加入可否は金融機関によって異なります。また、夫婦はお互いの借入れ金全額に対して返済義務を負うため、一方が返済できなくなった場合、もう一方が全額を返済しなければなりません。
夫婦で住宅ローンを組む方法としては連帯保証もあります。連帯保証とは、どちらかが主債務者となり、もう一方が連帯保証人となる方法です。収入合算ができるため、借入限度額を増やせるメリットがあります。また、住宅ローンの契約は1本になるため諸費用を抑えられます。
しかし連帯保証人は債務者として扱われないことから、住宅ローン控除を適用できず、団信にも加入できません。さらに主債務者に返済能力がなくなった場合、連帯保証人が住宅ローンの返済を肩代わりしなければならないリスクがあります。
夫婦で住宅ローン控除を受けたい場合は、連帯保証ではなくペアローンか連帯債務を選ぶと安心でしょう。
ペアローンまたは連帯債務で住宅ローンを組み、住宅を夫婦共有名義にすることにはいくつかのメリットがあります。たとえば、2人分の所得税と住民税を軽減できる点です。
また、夫婦の収入を合算することで借入れ可能額を増やせます。さらに相続税の節税にもつながる場合があります。ここでは、共有名義のメリットについてまとめました。
夫婦で住宅ローンを組むと、夫と妻それぞれが控除を受けられます。結果、2人分の所得税と住民税を軽減することが可能です。
控除を適用するためにはそれぞれが所定の要件を満たす必要がありますが、すべてを満たしていれば2人分の控除を受けられるため非常に高い節税効果を発揮します。ローンの返済負担を大きく軽減したい場合には、非常に有効といえるでしょう。
とくに2人ともに安定した収入がある場合は、控除による節税効果を最大限に得られます。一方で、どちらかの所得税額が少ない場合は控除額が所得税額を上回ってしまい、控除しきれない可能性もあるため注意が必要です。
ローンの審査では、借主の年収などをもとに借入れ限度額が決定されます。夫婦で住宅ローンを利用する場合、ペアローンなどを利用することで借入可能額を増額できることは先述のとおりです。
夫婦の収入を合算することで単独でのお申込みより高い年収で審査され、結果的に借入れ限度額が増額される可能性が高いです。結果、単独で借入れするよりも希望にそった好条件な物件を購入できるようになるでしょう。
ただし、借入れ額が増えれば返済額も増えるため、2人の収入や返済能力を十分に考慮しなければなりません。無理のない借入れ 額を設定することが何よりも重要です。
住宅を夫婦の共有名義にしておくことで、将来の相続税の節税につなげられる場合があります。たとえば一方が亡くなった場合、残された配偶者は相続税の配偶者控除の適用を受けることが可能です。
配偶者控除とは、配偶者が相続した財産のうち、一定額まで相続税が非課税になる制度です。共有名義の場合、相続税の課税対象となるのは被相続人の持分のみのため、単独名義に比べて相続税の負担を軽減できる場合があります。
ただし、相続税の節税効果は物件の価値や相続人の状況によって異なります。専門家に相談するなどして慎重に検討しましょう。
夫婦で住宅を共有名義にすることには、メリットだけでなくデメリットもあります。とくに夫婦のどちらかが退職した場合の返済リスクや、将来的に住宅を売却する際の手間などは、よく理解しておく必要があるでしょう。
ここでは、共有名義のデメリットについて具体的に解説します。
夫婦で住宅ローンを利用する場合は、共働きを前提とした返済プランを立てることが一般的です。しかし、夫婦のどちらかが出産や育児、介護などを理由に退職してしまうと、世帯収入が大きく減少し返済が困難になるリスクがあります。
とくに、ペアローンの場合はそれぞれが返済義務を負っているため、相手が収入を失ったときでも自分の分の返済を続けなければなりません。連帯債務の場合も、連帯債務者が返済できなくなれば主債務者が全額を返済する必要があります。
このような事態を避けるためには、一方の退職リスクを考慮して返済計画を立てることが重要です。また、団体信用生命保険(団信)への加入も検討しておくとよいでしょう。
将来的に住宅を売却する可能性がある場合は、共有名義であることがデメリットになるケースがあります。
共有名義の不動産のなかでも、共有持分となっている部分を売却するためには、共有者全員の同意が必要になります。夫婦間で売却について合意が取れない場合や、離婚などで共有者間の関係が悪化した場合には、売却が難しくなるおそれがあるでしょう。
自分の持分のみであれば同意を得る必要はなく、自由に売却できますが、相手の持分は対象外となるため相手の同意なしに不動産全体を第三者へ売却できるわけではありません。こうした制約があることから、意見が一致していない場合においては売却が難しくなります。
このように、共有名義は将来的な売却の自由度を制限する側面があります。十分に考慮してから決断することが重要です。
住宅ローンの控除額は、毎年の年末残高にもとづいて計算されます。控除率は0.7%で、控除期間は住宅の種類や入居年によって異なるので注意が必要です。
夫婦でペアローンを利用する場合、それぞれの借入れ額に基づいて控除額が計算されます。一方で、連帯債務はそれぞれの持分割合に応じて計算されます。ここでは、それぞれの計算方法について詳しく解説していきましょう。
ペアローンを利用して夫婦で住宅を取得した場合、住宅ローンの控除額は、それぞれの年末時点での借入残高に×0.7%で計算されます。
たとえば、年末時点でのそれぞれの借入れ残高が、夫が2,000万円、妻が1,000万円だったとしましょう。この場合、夫の控除額は14万円(2,000万円×0.7%)、妻の控除額は7万円(1,000万円×0.7%)です。
ただし、実際の最大控除額はそれぞれの所得税額や住民税額、入居年度、購入する住宅の性能によっても大きく異なります。
こちらの記事では、2022年度改正に対応した住宅ローン控除上限額について解説しています。2026年以降の住宅ローン予想も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
連帯債務型の住宅ローンを利用した場合、住宅ローンの控除額は夫婦の持分割合に応じて計算されます。
たとえば、年末時点での借入れ残高が3,000万円だとしましょう。持分割合を夫が2/3、妻が1/3とした場合、夫のローン残高は2,000万円、妻のローン残高は1,000万円として計算します。
この場合、夫の控除額は14万円(2,000万円×0.7%)、妻の控除額は7万円(1,000万円×0.7%)となります。
ただし、住宅ローン控除を適用するためには、あくまでも住宅の持分割合と住宅ローンの返済割合が一致している必要があります。これらの割合が一致していない場合、贈与税が発生するケースも考えられるでしょう。
ペアローンを利用して控除を適用する際の注意点としては、育休中は控除額が減少すること、持分割合は安易に決めないこと、夫婦どちらかが条件を満たさない場合があることです。
ペアローンを利用している場合、一方が育休(または産休)に入ると期間中の控除額が減少します。育休中は収入が大幅に減少するため所得税額も少なくなり、結果的に控除額が少なくなってしまうのです。
さらに、育休明けに再就職せずに専業主婦(または専業主夫)になってしまうと、所得税が発生しません。結果、控除を受けられなくなります。ペアローンを利用して住宅を取得する場合は、将来的な育休の可能性も考慮し、控除額の減少リスクを織り込んでおきましょう。
ペアローンを利用して住宅を取得する際は、夫婦の持分割合を決める必要があります。持分割合は、住宅ローンの控除額だけでなく将来的な売却時の税金にも影響するので、注意が必要です。
一般的に持分割合は、住宅の取得資金の負担割合に応じて決めるのが望ましいとされています。安易に持分割合を決めてしまい、負担割合との大きな開きが見られる場合、先述のとおり贈与税が課税されるリスクが高いでしょう。
住宅ローン控除を受けるには、借主が一定の条件を満たす必要があります。こうした条件は金融機関によっても異なっており、夫婦のどちらかが条件を満たさないケースも考えられるため、必ず事前に確認しなければなりません。
夫婦でペアローンや連帯債務を利用すれば、2人とも住宅ローン控除を適用することが可能です。それぞれの収入を合算できるため、より高い借入限度額で住宅を取得できるでしょう。
ただし、共有名義にすることで将来的な返済リスクや売却時の手間など、さまざまなデメリットもあります。将来設計などを考え、最適な方法で住宅ローンを組むようにしましょう。
住宅ローンの返済負担の軽減には、住宅ローン控除の他に借換えをするという方法もあります。借換え後も住宅ローン控除を 利用するためには「返済期間が10年以上あること」などといった一定の適用要件があります。借換えを検討している方は、この点も考慮して検討する必要があります。 「いえーる 住宅ローンの窓口 ONLINE」では、住宅ローンの専門家が無料で借換えのご相談を承ります。 ご自身にとってメリットのある借換えのタイミングなど、お気軽にご相談ください。