住宅ローンを組む際、加入する人も多い団体信用生命保険。
団体信用生命とは、マイホームを購入した後に万が一の事態が起こり、住宅ローンを支払い続けることが困難となった場合に返済が免除される保険です。
そんな団体信用生命保険ですが、加入の際には他の医療保険などと同様に「告知事項」というものがあります。
一体どのようなことが聞かれるのか、またスムーズに加入するためにはどのような点に注意すれば良いのか、今回は団体信用生命保険の告知事項をテーマに詳しく解説していきます。
住宅ローンの団体信用生命保険の告知書では、必ず聞かれることが3点あります。
それぞれどういった内容か詳しく見ていきましょう。
ひとつ目は、加入する直近3カ月の通院や投薬状況を聞く質問です。
風邪はもちろん、歯医者や整骨院に行った場合でも該当するので記入する必要があります。
加入する直前で大きな病気をしていないか、治療中の病気がないかなどを明らかにすることが目的といえます。
直近の健康状態を明らかにして、保険に加入できるか審査するために非常に重要な項目といえます。
2番目の質問は、直近ではなく過去3年間の病気や手術、また2週間以上の治療や投薬についての質問です。
がんや三大疾病だけでなく、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病や精神病などの病気も含まれ、該当すれば正直に告知する必要があり、定期的な健診であれば、通院である旨も記載します。
この質問は、簡単に言えば「持病」を聞く質問ともいえます。
該当の病気に該当した場合、持病にはよりますが、加入者に比べてリスクが高いと見なされ、団信審査に落ちてしまう可能性があります!
しかし、審査基準は引受先保険会社により異なり、一般に公開されていません。
主に、障害について聞く質問です。
これは必ずしも障害があると保険に入れない、という意味ではありません。
団体信用生命保険は死亡だけでなく高度障害状態でも保険金が下りることから、事前に確認しておく必要があるためです。
視力や聴力の障害は記載漏れしやすいポイントなので注意しましょう。
以上の3点が必ず聞かれることになります。
ただし、これらに該当するからといって団信に加入ができないのかというと、そういうこともありません。
治療中なのか完治しているのか、病気の危険度などによっても判断が異なり、保険会社は記載された告知内容を総合的に判断して団信加入可否を決定します。
なお、これら3点の質問に対し、該当しない場合は団信に加入できると思ってよいでしょう。
団体信用生命保険の告知について、必ず気に留めておいてほしい注意点を4つ紹介します。
告知事項に該当するような既往歴がある場合でも、必ずしも加入できないと確定したわけではありません。
持病などがある場合は、正しく詳細に書くようにしましょう。
具体的には、以下のようなことです。
高血圧症の場合には血圧の数値などの記入も必要です。
正しく詳細に書くことで、保険会社も総合的に判断しやすくなります。
意図的に詳細を隠すとかえって不利になってしまうこともありますし、告知内容に不備があると、訂正が必要になってしまうケースもあります。
団信の審査が遅れると住宅ローンにも影響が出てしまう恐れがあるので、あらかじめ正しく詳細に書くことを心がけましょう。
持病や通院歴があると「住宅ローンの審査が落ちてしまうのでは?」という不安から、住宅ローンを借りるために虚偽の告知をしてしまう人も中にはいます。
虚偽の告知は「告知義務違反」といい、いくら住宅ローンを組みたいといっても、当然ながら賢い選択とはいえません。
というのも、告知義務違反が明らかになった場合、契約を解除される可能性があるからです。
せっかく住宅ローンを組んでも、死亡や高度障害になった際、本来保険金が支払われる場面で契約が解除されてしまっては、その後も住宅ローンの返済は続き、重い負担がのしかかることになります。
万が一の際に保険として機能しないのでは意味がありません。
また家を売る側である住宅事業者にとっては、お客さまが団信の審査に通らないと家が買えない可能性があるため、団信審査が通るかどうかは死活問題です。
そのため、一部の悪質な事業者(担当者)は、「団信の告知は全部”いいえ”に〇つけておけばいい」と無責任にいう場合があり、その通りに申告してした結果、告知義務違反をしてしまう人も!!!
その場合に「住宅事業者がだいじょうぶって言ったから」と保険会社に説明したところで、契約解除は免れませんので、テキトーな告知をしないようにしましょう。
ちなみにですが、告知義務違反が発覚したとしても、死亡原因と直接的な因果関係が認められなければ、保険会社は保険金を支払わなくてはなりません。
とはいえ、加入の段階では死亡原因は誰にも予想できませんし、解除されるリスクを考えるとやはり告知義務違反はするべきではないといえます。
中には「バレない」と考える人もいるようですが、万が一のことを考えれば、決して勧められることではありません。
また「時効が過ぎれば大丈夫」と考える人もいますが、わざと嘘の告知を行い、保険会社を騙して団信を適用させようとする行為が、保険金詐欺に問われ、時効に関係なく解除される可能性がありますので、不正確な情報や虚偽の告知を絶対しないようにしましょう。
意外な落とし穴がこちら、「告知書に書いてある質問以上のことを告知しないようにすること」です。
特に、期間についてはよく確認し、自身の既往歴とよく照らし合わせるようにしましょう。
例えば、過去3年以内の既往歴を聞かれていれば、4年前に完治したがんについて記載する必要はありません。
もちろん4年前に罹患したがんを、今も継続して治療している場合には記載する必要があるので、お薬手帳や過去の領収書などを手元に集めて、期間や治療状況を把握したうえで正確に答えましょう。
また持病についてはリストアップされている病名以外のものを申告する必要はありません。
該当するものは正確かつ詳細に書く必要がありますが、余計なことを書いて不利にならないためにも、聞かれていないものは書かないようにしましょう。
告知内容をよく読み込んだうえで、該当するものだけを記入することが大切です。
注意点として意外と忘れがちなのが、記入する際に用いるボールペンについてです。
告知書や契約書には黒か青のボールペンを使うのが一般的といわれています。
当然、鉛筆やシャープペンシルなどの消えてしまうもので書いてはいけません。
ボールペンであっても、いわゆるフリクションボールペンのようなこすると消えるペンを使うのは避けましょう。
一度書いてもすぐに消せる便利な消えるボールペンですが、告知書や契約書では後から不都合な箇所を簡単に修正できてしまうため、使うことができません。
後々のトラブルを避けるためにも、最初から通常のボールペンで記入しましょう。
普段からフリクションボールペンを使っている人は、通常のボールペンと区別して保管するようにし、告知書には使わないように注意することが大切です。
一般的に、住宅ローンを組むためには団体信用生命保険に加入することが前提となっています。
言い換えれば、団体信用生命保険の審査に落ちてしまうと、住宅ローンを組めない可能性が高いということです。
それでは、どうしても住宅ローンを組みたい場合に、持病などがあって団体信用生命保険に加入することができないときには、どうしたら良いでしょうか。
ここでは、団体信用生命保険に加入できない時の対策を3つ紹介します。
団体信用生命保険に加入できない場合にまず考えたいのは、別の引受先保険会社の住宅ローンに申し込むという方法です。
実は各金融機関の団信は、引受先保険会社が異なります。
その引受先保険会社を変えると審査をクリアできる可能性がありますので、どこの保険会社の団信なのか確認しましょう。
住宅ローンの審査基準は公表されていないため、仮に同じ告知内容だったとしても、「一方では審査が通らないのに、別の保険会社では審査に通った」なんてこともあります。
一つの保険会社でダメだったからといって諦めるのではなく、別の住宅ローンに申し込んでみるという手段も検討してみましょう。
健康状態に心配がある場合は、フラット35を活用するという選択もあります。
フラット35とは、住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して提供している固定金利の住宅ローンのことですが、団体信用生命保険の加入が任意であることも大きな特徴です。
ほとんどの住宅ローンの利用条件には「団体信用生命保険の加入ができること」が含まれている中、「団信に加入しない」という選択を取ることがフラット35では可能なのです!
ただし、万が一の事態はいつ起きるかわかりませんから、団信に加入しない場合は自身で民間の保険に加入する必要があります。
生命保険などに加入する際にも告知が必要となる商品が多いですが、既に加入している場合など、団体信用生命保険に代わる生命保険に加入できれば、選択肢の一つになるでしょう。
持病などがあって審査が通らない場合は、ワイド団信に加入するという選択もあります。
ワイド団信とは、一般的な団体信用生命保険よりも審査の条件が緩和されている保険です。
明確な基準は公表されていないものの、高血圧症や糖尿病、うつ病などの持病を持っている場合でも、加入することができる可能性があります。
ただし、審査の条件が緩和されている分、金利が高くなる傾向にあるため注意が必要です。
保険に加入できなければ住宅ローンも組めないため、多少は支払金額が高くなっても良いという場合には十分選択肢に入ってきます。
特に高血圧症や糖尿病などの持病を持っている人は意外と多く、心配している人も少なくないので、覚えておいて損はありません。
住宅ローンの団体信用生命保険に加入する際には、必要な告知事項があります。
告知内容に虚偽を書けば解除されるリスクもありますし、保険として意味をなさないので告知内容は正しく記入する必要があります。
スムーズに加入できるよう、今回紹介した注意点を押さえておくとよいでしょう。
また正しく告知した結果、やむを得ず団体信用生命保険に加入できない場合には、別の住宅ローンやワイド団信などの別の選択肢を検討するのも一つといえます。
告知義務違反の恐ろしさを、皆さんしっかり理解しておきましょう。
せっかく保険料を支払っていたのに、いざという時に保険金を受取れないことはもちろん、これまで支払った保険料も返ってきません。
使えないものにずっとお金を払っていたという、最悪な結末が待っています。
そして、告知はあくまでも全て自己責任になりますので、告知書というものには事実を正しく記載しなくてはなりません。
「不動産会社の人が大丈夫と言っていたから記載しませんでした(告知しませんでした)」ということは一切通用せず、後日加入者が告知義務違反をしたとして扱われるので、注意して下さい。
万が一、一つめの団信が通らなかったとしても、いくつかの選択肢はあるわけですので、告知義務違反という大きなリスクは取らないようにしましょう。
株式会社フィナンシャルクリエイト
FP1級技能士・CFP認定者
鈴木 厚
不動産を活用した資産運用のコンサルティングを経験し、その後大手保険代理店で管理職を務める。
現在は独立系ファイナンシャルアドバイザーであるIFAとなり、ウェルスマネジメントとリスクマネジメントの両方の観点からコンサルティングを行う、お金の専門家として活動中。
⇒Youtube「お金の教育チャンネル」にて情報を発信
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