「私達と一緒に人生の終わりについて考えましょう」
何だか宗教の勧誘のように聞こえてしまったかもしれませんが、如何なる団体の回し者ではないのでご安心を。
今回は、終活についてのお話です。
人類の寿命は有史以来徐々に伸びてきており、今は人生100年時代なんていわれるようになりました。
日本においては平均80歳前後まで生きる人が多くなってきましたよね。
老後の不安から老後について考える時間も増え、併せて「人生を終える準備」を考える人も増えてきました。
本記事では、終活という言葉が持つ意味の変遷をふまえ、その上で終活の進め方やどんな世代からでも始められる人生の記録方法についてご紹介いたします。
終活と聞くと、死ぬ準備くらいのイメージがあるかもしれません。
しかし、実はどう死ぬかをよりもどう生きるかを考えられる絶好のチャンスなのです。
終活という言葉は2009年(平成21年)に週刊朝日で掲載されたことがキッカケで徐々に認知され始め、当初は人生を終えるにあたってお葬式やお墓などの準備をすることという意味で使われていました。
しかし、時が経つにつれてその言葉の持つ意味が徐々に変わっていき、今は残りの人生をしっかりと見つめ直し、精一杯生きることで、悔いなく人生の終わりを迎えることも終活に含まれるようになっています。
つまり、満足する逝き方を考えることが、満足する生き方を考えることに繋がっているのです。
また、終活は年配の方が行うものというイメージを持ちがちですが、自分の人生をしっかりと見つめるのに若過ぎるということはありません。
終活は何歳からでも始められるのです。
終活に明確なガイドラインはありませんが、一般的に以下のような活動が挙げられます。
《遺言書の作成》
財産の相続などについて記すことで、あなたの希望を反映してもらえる
《お葬式の準備》
葬儀を生前予約しプランニングしておくことで、自分の望む形で旅立てる
《生前整理》
使えない物は捨て、使えるけれどもいらない物は誰かにあげてしまいましょう。
自分の生きた歴史を振り返ることも、生前整理の大事なポイントです
自分の気持ちや希望を周囲に伝えておくことは、満足のいく人生の終わり方が叶いやすくなるだけでなく、残された人達の負担を減らすことにもつながります。
終活でやることの中でも一番取り組みやすく、どんな世代でもすぐに始められるのが自分の人生を記録することではないでしょうか。
まず思い付くのはエンディングノートです。
最近では2011年(平成23年)に公開された映画『エンディングノート』などの影響もあり、知名度が高まってきました。
エンディングノートは遺言書と異なり法的効力はありませんが、作成することで自分の死後にやってほしいことを伝えられたり、自分の人生を振り返って死ぬまでにやりたいことなどを整理できるようになります。
エンディングノートの記録方法には、従来のように紙のノートに記す方法とPCやスマートフォンを用いてオンラインで記す2つの方法があります。
以下にご紹介いたしますので、自分に合った使い方を検討してみましょう。
紙版のエンディングノートについて、一般的な記入事項と筆者オススメ記入事項を紹介いたします。
使用するノートは、書店や文房具店で販売されているエンディングノートを使っても、普通の大学ノートを使ってもどちらでも構いません。
そして、エンディングノートを作る時に頭の片隅に置いて欲しいことがあります。
それは、ノートは文字以外も記録できるということです。
もちろん文字を書くだけのノートでも良いのですが、それだけだと飽きてしまうという方もいらっしゃると思います。
そんな時は思い出の写真を貼り付けたり、絵を書いたりしながら楽しく作っていきましょう。
エンディングノートに必ず書くべきことというものはありませんが、一般的に以下のようなことを書くケースが多いです。
「身分を証明してください」と言われた時に伝える情報です。
この情報は死後の諸手続きのために必要となります。
名前、生年月日、住所、SNSのIDやパスワードなどがそれにあたります。
免許証やパスポートをコピーして貼るのもアリです。
あなたは死ぬ直前に誰を脳裏に浮かべるでしょうか?
ぜひ、周りにいる大切な人達の連絡先やメッセージなどを記入しておいてください。
記入することによって想い出が鮮明に蘇り、大切な人を想いながら余生を過ごすことにも繋がります。
今は自分で病院に行ったり、薬を摂取したりすることができたとしても、人はいつ認知機能が低下したり、意識不明になったりするか分かりません。
そのような状態にならないことが理想ではありますが、そうなってしまった時に備えて持病や常用薬、アレルギーやかかりつけの医師などについて記しておくことをオススメします。
お葬式の形態や規模、どこに骨を埋めて欲しいか、誰に見送ってもらいたいか、喪主を務めてほしい人、遺影の希望などを書いておくと、残された人達もあなたの意向を汲むことができます。
ちなみに筆者は自分のメッセージを動画データとして残し、お葬式で流してもらいたいと思っています。
法的効力はありませんが、金融機関や保険などの情報を記しておけば、残された人達のトラブルを防げます。
遺言があるのであれば、その旨も記しておきましょう。
筆者オススメのエンディングノート・コンテンツを紹介します。
人生グラフとは、人生における気持ち(あるいは幸福度や満足度)の上下を縦軸、年齢を横軸とした折れ線グラフを指しています。
積み重なった記憶を一発で可視化できるのが、このグラフの良いところです。
人生観が変わるといった転換期には、グラフの形が変わることも珍しくはありません。
数年おきにやってみると面白いのでオススメです。
好きなものや好きなことというのは、考えているだけでも楽しいですよね。
好きなものや好きなことの集合体を日頃からたくさん記録して、あなたらしい足跡を残しておきましょう。
もしかしたらこのリストを見た人があなたの棺に「お気に入りのアレ」を入れてくれるかもしれませんよ。
また、好きなものを直接ノートに貼ってしまうのもグッドアイディアです。
例えば、お酒のラベルやパンフレット、チケット、雑誌や新聞記事の切り抜きなどはノートにそのまま貼り付け可能なので、自分だけの作品集を作ることができますよね。
作ったものを見返すだけでも楽しいこと間違いなしです。
この世に置いていくエンディングノート。
せっかくなら自分視点の言葉だけでなく、他者視点の言葉も記されていたら面白いと思いませんか?
家族や友人に対して「私ってどんな人?」とアンケートをとってみてください。
あなたの知らないあなたがたくさん発見できるはずです!
あくまで個人的な意見ですが、死後の世界を考えると死への恐怖が和らぐように思います
死生観は本当に人それぞれです。
「死んだあとの世界はなんだか怖い」という人には、ネガティブな影響が出てしまうかもしれないのでオススメはできませんが、「どうなるか興味がある」という人は死後はこういう世界に行ってくるなどと書いておくと、残された人達とあとで待ち合わせができるかもしれませんね。
ここまでは、紙版のエンディングノートについてお伝えしました。
ここからは、オンライン版のエンディングノートの特徴やメリット、デメリットなどをお伝えしていきます!
続いては、若い人達にも身近な存在であるPCやスマホなどを使って、オンラインで自分の人生を記録する方法をご紹介いたします。
さまざまなことをオンラインですませられる昨今。
まずは終活アプリと呼ばれるアプリを2つ紹介します。
今回ご紹介するアプリは、iPhoneとAndroid両方に対応しています。
終活アプリ『エターナルメッセージ』は“ETERNAL MESSAGE(エターナルメッセージ/動画を送る)”、“PHOTO ALBUM(フォトアルバム/写真を届ける)”、“ENDING NOTE(エンディングノート/主にお葬式の希望について伝える)”の3大項目について記録できるアプリです。
動画や写真であれば、文字では伝わりづらい情報も残せる上に、シンプルで見やすいですよね。
特に“ENDING NOTE”内に「好きな曲について」という欄があるのは、お葬式でどんな曲を流してもらうのかを決めてもらうのにありがたい機能になります。
こちらも同じく終活アプリですが、エターナルメッセージよりも細かく「ご自身のこと」「身近な人」「伝えたいこと」「ペットのこと」「ご預金のこと」「財産のこと」「病院のこと」「介護のこと」「弁護士・遺言」「葬儀のこと」「保険のこと」「登録サービス」という12項目について記録することができます。
伝えたい情報を音声で記録できることに加え、閲覧権限を設定できるので情報を届けたい人に届けることができます。
無料で利用できますが、情報開示を請求する場合は有料なのでご注意ください。
続いて、ライフログアプリと呼ばれるアプリを2つご紹介いたします。
こちらのアプリでは日々の行動を記録できるので、エンディングノートをつける際に役立ちます。
本来は終活用アプリではありませんが、入れておくだけで日常が豊かになること間違いなしの一押しアプリです。
こちらもiPhoneとAndroid両方に対応しています。
「寝る前の5分で日記をつける」のコンセプト通り、短時間で1日のできことを記録できるアプリ。
カレンダーの日付をタップして一言書くだけなので、とっても簡単にその日1日を記録することができます。
もちろん長文でも大丈夫ですよ。
写真も追加することが可能なので、より分かりやすく記録できますね。
また、過去に書いたワードを検索することもでき、いつ何をしていたかを簡単に振り返ることができるのもオススメポイントの1つ。
エンディングノートに記しておきたいできことと時系列を確認するのに最適です。
Swarmは自分が行ったお店や施設などの場所を写真を添えて記録することができるアプリです。
エンディングノートをつける際に「あの時行ったあそこ、すごく楽しかったんだけど、どこだっけ?」となることを防ぐことが可能です。
訪れた場所にチェックインするとタイムライン上に表示されます。こちらも写真を添付することも可能です。
地図表示もあり、訪れた場所が一目で分かります。さらにTwitterなどのSNSと連携可能で、フォローしている友達のチェックイン場所もタイムライン上に表示させることができるもいいですよね。
最後に、より身近なSNSについてご紹介します。
SNSを中心に人生を記録している人は多いでしょう。
しかし、実は死後に追悼アカウントとして残し、エンディングノートの代わりにできることをご存知でしょうか?
FacebookやInstagramでは追悼アカウントを作成することができます。
《Instagram》
追悼アカウントリクエスト
https://help.instagram.com/contact/452224988254813
ちなみにTwitterやLINEは追悼アカウントを作成することができませんが、削除することは可能です。(2020年8月現在)
今回は、人生を記録する方法を中心とした終活についてご紹介しました。
エンディングノートと聞くと「そんなのまだ早いし、今は必要ないかな」と思うかもしれません。
しかし、負担の少ない範囲で少しずつ人生を記録することによって、日常がより有意義なものになります。
紙にペンでひたすら書くだけでなく、アプリなどを使って気軽に楽しめるのも今の時代ならではですよね。
歳を重ねてからだけでなく、何歳からでも始められる人生の記録。
ぜひ、この機会に自分の足跡を辿ってみてはいかがでしょうか?