リバースモーゲージ信託『ゆとりの約束』を取り扱う三菱UFJ信託銀行の執行役員、石崎浩二氏とiYellの代表取締役社長、窪田光洋が対談。
超高齢社会と言われる昨今。老老介護、介護施設不足、介護離職などが社会課題となっています。
どうすればこれらを解決することができるのか、現役世代はどう備えればよいのか、両者が意見を交わしました。
内閣府の「国民生活に関する世論調査」(平成29年)では、老後の日常生活に不安を感じる高齢者が6割以上というデータがありますよね。
石崎さんは高齢化による社会課題の解決に取り組んでおられるとのことですが、どのような問題が今後考えられますか?
人生100年時代と言われている中、老老介護、介護施設不足、介護離職等が社会課題となっています。
まず老老介護ですが、これは、65歳以上同士で介護している割合は、現在、50%以上にもなっています。
これは、核家族化が進み、親と子の同居が減った結果で、介護する高齢者の負担は非常に大きいものです。
※【2016年 厚生労働省「国民生活基礎調査」の結果に基づき加工】
なるほど。
ライフスタイルの変化に伴って、介護問題も大きくなっていますね。
また、介護施設が不足しているということもよく取り上げられています。
そうですね、介護度が悪化した場合、ご自宅での生活に不自由が生じるため、介護施設の利用も検討しなければいけません。
一方、特に都心では介護施設が不足しており、いざというときにすぐに入れないという問題もあります。
※【2015年 「日本創生会議首都圏問題検討分科会資料」に基づき加工】
そして最後は、介護離職です。
介護を理由に離職された人は増加傾向です。
企業にとっても人材流出にもなり、労働力不足という社会問題にもつながるような状況です。
この対談をご覧になられている方は、おそらく30~40代の方だと思います。このような問題に直面されている方はまだ少ないかもしれませんが、今後はますますこういった問題が大きくなってくると考えています。
※【2018年 厚生労働省「雇用動向調査」の結果に基づき加工】
※10年間で介護離職は約2倍に増えた
このような問題は徐々に起こるときもあれば、ある日突然起こるときもあります。
いざというときに備えて、ご両親とお話しする機会を持つことが大事ですね。
確かに、事前に家族間で話をしておくのは大切ですね。
信託銀行といえばご高齢の方からの相談が多いかと思いますが、どういうご相談が多いですか?
自分にもしものことがあったときの財産の分け方のご相談等が多いのですが、そのお子さま、すなわち40~50代の方からのご相談も多いです。
例えば「親が住んでいた自宅をどうするか?」等ですね。
それは相続についてのご相談が多いということですね。
昔と比べて親と同居する人は大分減ったと思います。
そうですね。
私たちのライフスタイルは、戦後のように一つ屋根の下に3世代が住むのではなく、各々の代で世帯を持つのが主流になっています。(子供との同居率は40年前5割だったのが、現在は1割に)。
ご自宅を相続してもそこに住むのではなく結局売却するケースも多いです。
※【内閣府「令和元年版高齢社会白書」の調査結果に基づき加工】
確かに、子供が複数いたら大変という話を聞いたことがあります。
また、ご自宅を子供に残さなくてよいと思っている人も前より多くなっていると思いますね。
そのとおりです。
誰かが親のご自宅に住むことが明確になっている場合は、遺言で準備されることが望ましいですが、遺言がないと皆さんで協議することが必要になってきます。
でも実は、子供に家を残したいと思っている高齢者の方は、半分程度にとどまっている状況です。
※【2018年 三菱UFJ信託銀行 「ニーズ調査」の結果に基づき加工】
確かに当社も住宅ローンの窓口を運営しているためさまざまなデータがありますが、約2割程度の方が親から住宅取得資金の援助をしてもらっていますね。
一方、人生100年時代で長生きはいいことだけれども、健康寿命が追い付かず介護が必要になるなどの将来の不安もあります。
バリアフリー化や老人ホーム等、万が一のときに備えてお金を準備することは必要ですね。
※【2019年 不動産流通経営協会「不動産流通業に関する消費者動向調査」の結果に基づき加工】
そのとおりです。
最初にも申し上げましたが、いつか起こりうる介護の問題などを事前にご両親と話すことで、もしかしたらご自宅を今後どうするか等、元気なうちに考えがまとまるかもしれません。
確かに、先に考えがまとまると今後について話しやすいですね。
そういうことですね。
家を子供に残さないのであれば、ご両親がご自宅を活用して自分の生活費を賄うことができます。
例えば、お子さまがご両親のご自宅に住むつもりがないのであれば、親はご自宅を売却して少し小さいサイズの利便性のよいマンションに引っ越すとか、またはご自宅に住み続けながら価値に見合った現金を手に入れるリバースモーゲージを活用するとかですね。
なるほど。
そうなれば老後の暮らしに余裕が生まれますし、残される子供の負担も軽減されますね!
リバースモーゲージといえば、石崎さんは新商品としてリバースモーゲージ信託『ゆとりの約束』を開発されましたね。
こちらの商品はどういった特長があるのでしょうか。
そうですね。
現在、リバースモーゲージの取扱い金融機関は増えてはいるのですが、あまり普及していません。
通常のリバースモーゲージは、担保物件を売却して残債がある場合はご相続人が支払うことになるので、お子さま等に借りたお金の返済義務を負わせたくないと考える方は利用を躊躇してしまいます。
一方当社の『ゆとりの約束』では、お子さま等ご相続人の負担を軽減する新しいリバースモーゲージの商品にしました。
契約終了、すなわちご両親が亡くなられた場合にそのご自宅は手放していただくことになりますが、ご相続人による返済負担や相続にかかる手続きが軽減できます。
※【2018年 三菱UFJ信託銀行 「ニーズ調査」の結果に基づき加工】
ご相続人、すなわちこの対談をご覧になられている世代の方が、将来、ご両親の家に住む予定がないのであれば、ご両親はお元気なうちにゆとりのある生活を送ることができます。
それに加えご相続人の方は返済の必要もないし、さらにご相続のときの面倒な手続きが軽減されるということですね。
そのとおりです。
もちろん、お子さまがその都度、ご両親の生活費等を工面する選択肢もありますが、その時々のライフイベント(進学等)やご兄弟間での調整等でご苦労されることも考えられます。
また、ご自身の家を購入するタイミングでご両親に相談される機会もあるかと思います。
その際にちょっと先のことかもしれませんが、ご両親とご自宅の話をするのも一つのよいタイミングかもしれませんね。
当社もリバースモーゲージの比較サイトで、自分にあった商品を選べるように日々工夫しております。
ご両親、お子さま双方が満足いただけるご自宅の活用方法が見つかるといいですよね。
窪田さんの「住宅ローンの窓口」といったサービスをご利用されている方は、住生活のリテラシーが高いと思います。
住まいとどのように向かいあっていけばよいか、ご両親がお子さまにご相談したくても言い出せないときに、お子さまからお話の場を設けてあげるとよいのではないでしょうか。
人生100年時代というのは、窪田さんの会社に関係ある話ですね。
そうですね、当社は「最高に気持ちよく暮らせる社会の実現」を長期ビジョンに掲げていますので、老後の住生活とは密接に関係しているかと思います。
「最高に気持ちよく暮らせる社会の実現」とは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。
現在、日本では高齢社会による人材不足や保険対象基準の変更により、医療や介護の現場が病院から在宅へ変わってきています。
在宅での対応が必要になると、それまで住み続けていた住宅をバリアフリー化して機能性を高めるための工事や、自動車を使わなくても移動が可能な立地へ住みかえが必要になる等、同じ住宅に住み続けることが難しくなります。
このような老後に抱える「住まい」に関する課題や検討事項は年々増加傾向にありますよね。
確かにそうですね。
その「老後の住まい」についての課題を解決するために、金融機関や不動産会社とのコネクション、住生活に関するノウハウを活用し、住宅を利用して老後の資金作りが可能な金融商品の「リバースモーゲージ」を紹介・比較するサイト、『いえーる リバースモーゲージの窓口』のリリースに至りました。
今後、このサービスのように、金融機関とも連携しながら社会課題に取り組んでいきたいと考えています。
これからの時代、老後の住まい問題と金融機関との連携は欠かせなくなりそうですね。
今日はお時間いただきありがとうございました。
こちらこそ、本日はありがとうございました。
三菱UFJ信託銀行株式会社 執行役員
石崎 浩二
1988年慶応大学経済学部卒業、三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)株式会社入社。年金、相続、不動産等の信託事業に幅広く従事。社会課題を解決するために開発した新商品「ずっと安心信託」「教育資金贈与信託まごよろこぶ」は日経ヴェリタス賞を連続受賞。
iYell株式会社 代表取締役社長
窪田 光洋
2007年青山学院大学経営学部卒業、SBIグループのSBIモーゲージ(現アルヒ)株式会社入社。最年少で執行役員に就任、住宅ローン商品の組成から販売、審査、債権管理等住宅ローンのすべてのフェーズにおけるトップを歴任。2016年に独立し、iYell株式会社を設立。