マイナス金利の導入以降、住宅ローンやマイカーローンは利用しやすい状態が続いています。中にはすでにマイカーローンを借りている人もいらっしゃると思いますが、その場合、住宅ローンの借り入れにどんな影響が出るのでしょうか。2つのローンをうまく活用してマイホームとマイカーを手にいれる方法はあるのでしょうか。ここでは、住宅ローンとマイカーローンの関係と賢い利用方法についてお話しします。
マイナス金利が導入されて以降、金利水準が低い状態が続いています。低金利の今だからこそ、マイホームもマイカーもローンを利用することで手に入れやすくなっていますが、返済を続けていくことができなければ、ローンを借りてはいけません。
また、ローンを組む順番を間違えると、住宅ローンの借り入れが難しくなってしまうこともあり得ます。ローンとうまく付き合って、マイホームとマイカーの両方を手に入れる方法を考えていきましょう。
金融機関が住宅ローンの審査を行う時に重視するのが、返済比率です。返済比率とは、年収に占める返済金額の割合で、金融機関はその基準を決めて審査を行っています。一例として、2017年12月現在の【フラット35】の基準を見てみましょう。
<【フラット35】の返済比率の基準>
年収 | 返済比率の基準 |
400万円未満 | 30%以内 |
400万円以上 | 35%以内 |
ここでいう年収はボーナス込みの額面金額です。
たとえば、年収500万円の人であれば、返済比率35%となる年間の住宅ローン返済額は175万円(500万円の35%)、毎月の返済額は14万5,800円となります。返済額がこの金額を超えなければ、返済比率の審査基準はクリアできることになりますが、住宅ローン以外の借り入れがある場合には話が違ってきます。
<年収500万円の返済比率例>
年収 | 返済比率 | 年間返済額 | 毎月返済額 |
年収500万円 | 35% | 175万円 | 14万5,800円 |
返済比率は、住宅ローン以外のマイカーローンや教育ローンの返済額も組み込んで計算するからです。そのため、住宅ローンの融資を申し込んだ時点で、すでにマイカーローンや教育ローンを組んでいると、その分だけ、住宅ローンの借り入れ可能額は少なくなってしまいます。
(参考記事:住宅ローンを借りる前に確認しよう! あなたの返済負担率は大丈夫?)
では、すでにマイカーローンを借りている場合、住宅ローンの借入額にどれくらいの影響があるのでしょうか。年収500万円の人が住宅ローン申込時に、すでにマイカーローンを借りている場合と、借りていない場合について、それぞれ借入上限額を比較してみましょう。
返済比率は【フラット35】と同じく35%以内とし、金利などの融資条件は下記の通りとします。ボーナス返済はなしとして、事務手数料等は考慮していません。
【融資条件】
(年収)500万円
(返済比率)35%以内
(住宅ローン)固定金利:1.2%、借入期間:35年
(マイカーローン)固定金利:2.5%、借入期間:10年、借入金額:300万円
【マイカーローン有り/無しの住宅ローン借入上限額比較】
毎月返済額の上限(返済比率35%の場合) | マイカーローンの毎月返済額 | 住宅ローンの毎月返済額の上限 | 住宅ローンの上限額※1 | |
マイカーローンあり | 14万5,800円 | 2万8,280円 | 11万7,520円 | 約4,028万円 |
マイカーローンなし | 0円 | 14万5,800円 | 約4,999万円 |
※1【フラット35】年収から借入可能額を計算シミュレーションより算出
マイカーローンをすでに借りている場合には、マイカーローンの毎月返済額が2万8,280円となり、住宅ローンの毎月返済額の上限は11万7,520円となります。この場合、住宅ローンの借入可能額は約4,028万円です。
一方、マイカーローンを借りていない場合には、住宅ローンの毎月返済額の上限は14万5,800円となり、住宅ローンの借入可能額は約4,999万円となります。
300万円のマイカーローンを組んでいるかいないかで、住宅ローンの借入上限額に約960万円もの差が出る結果になりました。これはかなり大きな金額と言えるのではないでしょうか。
なお、このシミュレーションでは、返済比率を35%以内としていますが、実際に無理なく返済を続けていくためには、返済比率は20〜25%程度に抑えるべきと言われています。
【フラット35】では、年収400万円以上の場合、返済比率は35%以内という基準になっているため、「貸してもらえるのだから大丈夫」と考える人がいるかもしれません。ですが、「借りられる金額」と「借りてもいい金額」は違うということを、しっかり認識しておいてください。
(参考記事:住宅ローンの適正な返済比率は? “借りられる金額”と“借りていい金額”はどう違う?)
ただ、住宅の購入予算を少しでも増やしたいという人は、毎月の返済負担を抑えて家計を安定させるためにも、マイカーローンを一度完済してから住宅ローンの審査に臨まれることをおすすめします。
マイカーローンを借りていることで、住宅ローン審査で重視される返済比率が引き上げられてしまいますし、マイカーローンの金利は住宅ローン金利よりも高いので、それだけ毎月の返済額が増えて、家計を圧迫することになってしまいます。
「金利の高いマイカーローンを住宅ローンにまとめることはできないか」という相談を受けたことがありますが、そもそも資金使途が違うため、金融機関は認めてくれません。また、金利の高いローンを1本にまとめて、返済負担を軽減する目的の「おまとめローン」も、そもそも金利がマイカーローンよりも高いので利用するメリットはありません。
すでにマイカーローンを組んでいて、マイホームの購入予算を多く見ておきたい人は、マイカーローンの完済を目指すのが一番の近道といえるでしょう。
それでは反対に、すでに住宅ローンを組んでマイホームを購入した人が、マイカーローン組む場合を考えてみましょう。
マイカーローンも年収に対しての返済比率を考えるので、住宅ローンを返済比率ぎりぎりまで借りてしまっている場合には、マイカーローンを組むのが難しい可能性があります。
ただ、マイカーローンは住宅ローンより金利が高い分、たとえば返済比率を40%以内とするなど、審査基準が緩い場合もあるので、借りられる可能性はゼロではありません。
毎月の返済額などをしっかりシミュレーションした上で、融資を申し込むかどうか判断してください。
また、これから同時にマイカーとマイホームを手に入れたいという場合についてもお話ししておきましょう。
マイホーム購入のために貯めてきた頭金がある場合は、貯めてきた頭金はマイカーへあてるようにして、住宅ローンを多めに組むことをおすすめします。理由としては、住宅ローンは金利が低く長い期間で組めるからです。
借入総額を2000万円として、住宅ローンとマイカーローンの両方を借りた場合と、自動車は現金で購入し、ローンは住宅ローンだけにした場合の返済額を比較してみましょう。金利など融資の条件は先ほどのシミュレーションと同様とします。
【融資条件】
(年収)500万円
(借入総額)2000万円
(住宅ローン)固定金利:1.2%、借入期間:35年、借入金額:1,700万円
(マイカーローン)固定金利:2.5%、借入期間:10年、借入金額:300万円
<住宅ローンとマイカーローンを借りた場合>
毎月返済額 | 総返済額 | |
住宅ローン | 4万9,569円 | 2,082万7,380円 |
マイカーローン | 2万8,280円 | 339万3,600円 |
合計 | 当初10年:7万7,869円,11年目以降:4万9,589円 | 2,422万980円 |
【融資条件】
(年収)500万円
(借入総額)2,000万円
(住宅ローン)固定金利:1.2%、借入期間:35年、借入金額:2,000万円
<住宅ローンだけを借りた場合>
毎月返済額 | 総返済額 | |
住宅ローン | 5万8,340円 | 2,450万2,766円 |
このケースでは、住宅ローンだけを借りた場合のほうが総返済額は多くなりますが、マイカーローンとダブルで借りた場合には、マイカーローンを完済するまで、毎月2万円近く返済額の負担が増えてしまいます。これだけの負担増があっても、十分な資金的余裕があればいいのですが、家計のことを考えれば、この2万円は返済にあてるのではなく、貯蓄に回すことをおすすめします。
たとえば、何らかの事情で収入が減ってしまったり、急に現金が必要になったりすることは、誰にでも起こりえることです。そのときに手元に現金がなければ、新たに借金をすることにもなりかねません。
そうした家計のリスクに備えるためだけでなく、子どもの教育資金や老後資金を確保するためにも、できるだけ毎月の返済負担は減らして貯蓄や運用を行うべきでしょう。順調に貯蓄ができれば、その資金で繰り上げ返済をして、総返済額を減らすことも可能です。
このように考えれば、やはり金利の低い住宅ローンを多く借りたほうが、家計は安定するといえるでしょう。
ローンをうまく活用できれば、憧れのマイホームもマイカーも手に入れることは難しくありません。自分たちのライフスタイルを考えて、マイカーが必要だと考えるならば、まずは金利の低い住宅ローンを優先し、その後にマイカーローンという優先順位をつけることが、賢いローンの活用方法だといえるでしょう。
ただし、前述したように、借りられる金額と借りていい金額は違います。マイホームもマイカーも購入するのであれば、それだけ借入額は大きくなりがちです。返済比率を計算する際は、年収をボーナス込みの金額で考えますが、今後もずっとボーナスが支給され続ける保証はありません。
できれば、ボーナスを除いた月収の範囲内で、返済を続けていける借入額に抑えて、マイホームもマイカーも手に入れることを目指すのが理想といえるでしょう。
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配信元:ARUHIマガジン
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