配信元ARUHIマガジン
マンションにしろ、戸建てにしろ、マイホームの購入は数千万円もかかる、多くの人にとっては一生に一度ともいえる大きな買い物です。ですから、「できるだけお得に」「損をしないように」「ローンの負担はなるべく軽く」と考えるのは当然のこと。2019年10月の消費税増税まで1年を切り、「消費税が上がるまでに住宅購入を」と焦っている方もおられるかもしれませんね。
マイホームを「お得に」買いたいなら、消費税増税だけでなく、不動産価格の今後も、ローン金利の上昇も気になるところ。「思い切って購入した物件がしばらくしたら値下がりしていた」とか、「購入を迷っている間にローン金利が上昇していた」など、「損した!」と感じられるような情景が想像しやすいだけに、住宅購入のタイミングには悩むところです。
しかし、マイホーム購入で「お得」かどうかは、「安く買える」ことだけでは決められません。そもそも、マイホームを購入するのは、自分や家族が「その住宅を購入し、より快適により楽しく過ごすため」ですよね? ですから、消費税増税前に駆け込み購入して税負担を抑えることができようと、高額だった物件を半値で購入できようと、自分や家族のニーズに合った物件を、必要とするタイミングで手に入れられなければ、その後も無理なく返済を続けられなければ、「お得」とはいえないのではないでしょうか。
マイホーム購入のタイミングを考えるなら、まず考えるべきは、「ライフプラン(人生設計)」と「家計の状況」です。不動産価格の今後の動きや、消費税増税、ローン金利の上昇も気にすべきですが、その前に「住宅選びのとき、重視したいのは何か」「子どもが何歳の頃に住宅購入したいのか」「どんな環境で暮らしたいのか」「何歳までに住宅ローンを完済したいのか」「月額何万円なら無理なく返済できるのか」「妻が出産で休職・退職した場合、返済に無理はないか」など、自分や家族、家計の状況や将来の見通しについて考えてみましょう。
たとえば、「自然に恵まれた環境。駐車場完備。小学校まで徒歩10分」という物件は、「自然に恵まれた環境で子育てしたい」というニーズに合った物件ですが、「小学校まで徒歩10分」は、子どもが小学生の間でなければメリットになりません。今の家族の状況に合う不動産は、将来、不動産価格の下落を待って購入する場合には、家族に合わないものになっている可能性があります。
また、転勤族で社宅住まいだが、消費税増税前に、住宅ローン金利が上がる前にと、住宅購入を急ぎ、その後、やはり転勤に。消費税の増税分やローン金利上昇分は抑えられても、家族をマイホームに残した単身赴任が続き、二重生活で生活費負担が重くのしかかる…という場合もあるかもしれません。
社宅や住宅補助があるなら、転勤が多い間は住宅購入を見合わせて、子どもが就職・結婚等で巣立ったあとにでも、夫婦二人にちょうどいいサイズの家を購入する選択肢もあるはずです。50代以降の住宅購入はローン返済ができる期間が短くなるのがデメリットですが、「夫婦2人」の小さい家であればローン借入額も少なくて済むので、短期間の返済でも無理のない毎月返済額に抑えることもできます。また、借入額が小さければ、金利が多少上昇しても利息負担は重く感じるほどではないかもしれません。
住宅ローンについては、下記表1のように、同じ金利であれば返済期間が長いほど毎月返済額は少なく、総返済額は大きくなります。金利が上昇すれば毎月返済額も総返済額も増えますが、返済期間を短くすることができれば、利息負担の増加幅を抑えることはできます。
現在のような低金利時に借り入れできれば何よりですが、そのときがちょうど、ライフプラン上の住宅購入に適した時期にあたるとは限りません。住宅ローンについては、まずはライフプラン上の「購入に適した時期」を優先し、借り換えや繰上返済など「借り入れ後」のローン見直し方法も念頭におきながら、無理のない借り入れプランを考えたほうがよいでしょう。
【表1:住宅ローンの金利と返済期間、返済額の違い】
条件:借入金額3,000万円、元利均等返済の場合
返済期間 | 金利 | 毎月返済額 | 総返済額 |
30年 | 1% | 9.7万円 | 3,474万円 |
25年 | 1% | 11.4万円 | 3,392万円 |
30年 | 2% | 11.1万円 | 3,992万円 |
25年 | 2% | 12.8万円 | 3,815万円 |
※住宅金融支援機構 フラット35ホームページ:「借入希望金額から返済額を計算」ローンシミュレーションで筆者試算
このように、ライフプランや家計のニーズを考えた上ですでに物件選びを進め、購入に向けて動いているなら、2019年10月の消費税増税前に手続きを進めて、増税分の税負担の節約を考えられるとよいでしょう。
「2019年3月31日までに注文住宅は請負契約、それ以外は売買契約を結んでいる」「2019年9月30日までに物件を引き渡す」場合には消費税は8%となります。
ただし、消費税増税後は、「すまい給付金」や「住宅ローン減税」は優遇幅が大きくなり、増税分をある程度カバーできる場合もあるので、むやみに急いで、ニーズに合わない物件を購入することにならないようにしましょう。合わない洋服ならタンスの肥やしにしてもあきらめがつき、買い直すことも容易ですが、購入した住宅が気に入らなくても、高額すぎて気軽に買い換えることは難しいのですから。
また、不動産価格については、2020年の東京オリンピック後には建築需要が減って価格が下がるとか、2022年の生産緑地問題(※)により宅地が供給過剰となり、価格が下がるといった話題も出ています。しかし地域によっても状況は違い、将来の価格を確実に見通すことはできません。ライフプラン上、住宅購入を考えている時期の前後に、不動産価格を動かすような出来事が予定されているなら、家族や家計のニーズに合った物件選びを優先しつつ、最新の情報や動向をチェックして、自分にとって納得のいくタイミングでのマイホーム購入を進められるとよいでしょう。
※生産緑地問題…おもに三大都市圏とその周辺地域で、一定条件を満たし30年間の期間限定で「農地」とみなされていた土地が、2022年に期限切れを迎え、「宅地」として大量に市場に出てくることが予想されている
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