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配信元ARUHIマガジン

リタイア後の年金生活では、住宅ローンの利用は難しいと言われます。年金受給者が住宅ローンを利用できないわけではありませんが、年齢や年収の金額などから、希望通りの金額で利用することは難しいかもしれません。年金受給者の住宅ローン利用について考えてみましょう。

CONTENTS

年金受給者も住宅ローンの利用は可能

リタイア後、年金生活をしている方であっても、住宅ローンが利用できないわけではありません。年金収入のみでは利用できないとされている住宅ローンもありますが、借入条件は住宅ローン商品によって異なります。「収入」の対象として年金が挙げられている住宅ローンもありますし、年金受給者専用の住宅ローンを設けている金融機関もあります。

民間金融機関と住宅金融支援機構の提携ローンである【フラット35】の場合は、公的年金等も「収入」の対象となります。公的年金による収入のみの場合は、「住民税納税証明書」などを提出することで年金の種類及び受給額の内容が確認されます。(※)

※ 住宅金融支援機構【フラット35】ホームページ、よくあるご質問より「収入はどのようなものが対象になりますか。雑所得でも申し込みできますか。

年齢、収入金額等によっては借りにくい

ただし、収入源が年金であることは問題にならなくても、年金の収入額や年齢などから、希望どおりの金額の借り入れができない可能性はあります。

住宅ローンの審査の際には、「返済比率」が確認されます。返済比率とは、年収に占める「すべての借り入れ」の年間合計返済額の割合のこと。「すべての借り入れ」には借入予定の住宅ローンのほか、その他の住宅ローン、自動車ローン、教育ローン、カードローンなどを含みます。返済比率が金融機関の定める基準以下でなければ、借り入れは認められません。

たとえば【フラット35】の場合、年収400万円未満の場合の返済比率の基準は30%です(表1)。したがって、年金収入が200万円だった場合、返済期間15年なら借入可能額は835万円となります(表2)。「借り換え」目的での住宅ローン利用なら借入可能額が少なくても構わない場合もあるかもしれませんが、住宅ローンを中心に住宅購入の資金繰りを考えるには、厳しい金額ですね。

<表1【フラット35】の総返済負担率の基準>

年収 400万円未満 400万円以上
基準 30% 35%

<表2年収から試算した借入可能額>

・金利1% 元利均等返済の場合

年収 返済期間15年の場合 返済期間10年の場合
200万円 835万円(5万円) 570万円(5万円)
300万円 1,253万円(7.5万円) 856万円(7.5万円)

※(  )内は毎月返済額
※返済期間10年は、債務者もしくは連帯債務者の年齢が満60歳以上の場合のみ適応
※住宅金融支援機構【フラット35】ホームページより、「年収から借入可能額を試算」、「借入希望額から返済額を計算」にて、筆者試算

また、高齢の場合は、設定できる返済期間が短くなります。多くの住宅ローンの年齢要件は、借入時の年齢の上限が65歳~70歳くらい、完済時の年齢は75~80歳くらいです。仮に65歳でローンを借り入れた場合、完済年齢の上限まで返済を続けたとしても、返済期間は最長でも10~15年程度になります。同じ金額を同じ金利で借りた場合、返済期間が短いほど月々の返済額が大きくなりますから、毎月の返済可能額を考えると、希望通りの金額の借り入れは難しい場合が多いでしょう。

<表3返済期間による毎月返済額の違い>

・借入額1,500万円、金利1%、元利均等返済の場合

返済期間 毎月返済額(万円) 返済総額(万円)
10年 13.2 1,577
15年 9 1,616
20年 6.9 1,656
25年 5.7 1,696

※【フラット35】ホームページ「借入希望額から返済額を計算」より筆者算出

このように、年金生活に入ってから、希望通りの金額を住宅ローンで調達することは難しくなります。しかし、「二世帯住宅を購入したい」「古くなった自宅のリフォーム・増改築が必要」などのやむを得ない事情があり、家族などの協力が得られるのであれば、「収入合算」や「親子リレー返済」を検討されてもよいでしょう。

家族との収入合算でローンを組む


本人の年収だけでは、希望するだけの借り入れが難しい場合、「収入合算」によって借入額を増やすことも考えられます。収入合算とは、収入基準を満たせるかを審査する際、本人の収入と同居する配偶者や子どもなどの収入を合わせて「収入」として審査してもらう方法です。

ただし、収入合算によって借入額が増えれば、それだけ返済額も増えます。収入合算した配偶者などが退職して収入が減ってからも返済できる金額を考えて、借入額を決める必要があります。

なお、収入合算をする場合、【フラット35】のでは「連帯債務」となりますが、多くの金融機関では「連帯保証」とされます。収入合算によって家族がどんな場合に返済の責任を負うことになるのか、利用する場合にはよく確かめておきましょう。

<表4 連帯債務と連帯保証>

・夫がローンを申し込み、妻が収入合算する場合

連帯債務 連帯保証
1つの債務に対して、夫も妻も全額の債務を負う 夫のみが債務者であるが、夫が返済しないと、夫の返済能力に関わらず、妻は返済する責任を負う

親子リレー返済なら、親の年齢は制限されない

二世帯住宅を建築する場合などは、「親子リレー返済」の利用も考えられます。親子リレー返済とは、親が住宅ローンを申し込み、返済が難しくなる時点から後は子が返済を引き継ぐ返済方法です。年金世代が住宅ローンを組む際のネックになるのが年齢ですが、親子リレー返済を利用する場合は、契約者(親)の年齢制限がない(後継者である子の年齢には制限があります)ので、返済期間を長く取ることができます。また、親と子の収入合算もされるので、借入可能額も大きくなります。

ただし、親子リレー返済では、契約者(親)と後継者(子)がともに債務者となるため、返済期間中は子が新たな住宅ローンを組むことが難しくなります。返済期間中に相続が発生した(親が死亡した)場合には、返済中の物件は原則として親子リレー返済の「後継者」である子に所有権が移ります。「後継者」である「子」に兄弟姉妹がいる場合には、相続財産の分配についてもめる可能性もあります。親子リレー返済を利用する場合には、これらの注意点について、後継者となる子だけでなく、その兄弟姉妹(子全員)とも、話し合っておく必要があるでしょう。

このように、年金生活を行っている方でも住宅ローンは利用でき、家族等の協力があれば、希望する金額の借り入れができる可能性はあります。しかし、快適な住まいを手に入れても、返済に追われていては、快適な生活は送れません。住宅ローン利用を考える際には、自分が、家族が、無理なく返済できる借入計画なのかを、ご家族と一緒に慎重に検討しましょう。

配信元:ARUHIマガジン

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