配信元ARUHIマガジン
ネット銀行の住宅ローンの特徴としては“金利が低い”“繰り上げ返済手数料や保証料が無料”といった「費用面でのメリット」があげられます。ネット銀行はコスト削減によって費用を抑えているのですが、それは同時に借り手にとってのデメリットにもなっています。そこで、ここでは「ネット銀行の費用が安い理由」を整理すると同時に、それが借り手にとってどんなデメリットになっているのかをまとめてみました。
住宅ローンを取り扱う金融機関は数多くありますが、不動産会社の提携ローンを利用する場合には、あまり金融機関選びに悩む必要はないかもしれません。ですが、自分で金融機関を選びたいと考えた場合、まず選択肢としてあげられるのが、“ネット銀行”と“実店舗を持つ金融機関”のどちらを選ぶかということではないでしょうか。
ネット銀行とは、名前の通りインターネット上の銀行で、24時間いつでも手続きが行えるので、銀行の窓口に行く時間がなかなか取れない人や、近くに金融機関の店舗が少ない人にとっては、とても便利な存在といえるでしょう。
ネット銀行の住宅ローンの特徴を一言で言うと、「費用が抑えられること」と言えます。ネット銀行は、実店舗を持たないことでコストを削減して、金利を低くしたり、繰り上げ返済の手数料を無料にしたりといったことを実現しているのです。
ただし、店舗を持たないことは、借り手にとってはメリットだけでなく、デメリットにもなります。言い方を変えれば、金利が低いことや繰り上げ返済が無料になるといった費用面のメリットがあるかわりに、借り手側はデメリットの部分も受け入れなければいけないと言えるのですが、これについては後ほどご説明しましょう。
ネット銀行のメリットとしてまずあげられるのは、“金利の低さ”ではないでしょうか。なぜネット銀行の金利が安いかと言えば、先ほどもお話したように、ネット銀行は「実店舗を持たないので店舗のある金融機関よりもコストを圧縮できる」ため、それが金利に反映されているのです。
では、ここでネット銀行A社と実店舗型の金融機関B社の金利を比較してみましょう(2017年1月時点)。
A社(ネット銀行) | B社(実店舗型) | |
---|---|---|
変動金利型 (自己資金20%以上) |
0.497% | 0.625% |
当初固定金利型 (20年固定) |
0.98% | 1.65% |
【フラット35】 (手数料定率型) |
1.12% | 1.12% |
※2017年1月時点の金利を比較。筆者作成
【フラット35】の金利はどちらも同じですが、変動金利と当初固定金利型の金利は、ネット銀行のほうが低くなっています。このふたつの金利タイプを選択する人にとっては、ネット銀行の金利は魅力的といえるでしょう。
ただし、今は超低金利の時代ですから、住宅ローンを借りるのであれば“長期の固定金利”つまり「全期間固定金利型」をおすすめしたいというのが私の考えです。
そうすることで将来の金利変動リスクを避けられますし、月々の返済負担を少なくして手元にお金を持っておけば万が一の事態にも備えられますし、運用によって住宅ローン金利以上の運用益を得ることも不可能ではないからです。
なお、繰り上げ返済の手数料については、ネット銀行では手数料が無料の場合が多くなっています。インターネット上で手続きを行うため、コストが削減できるためといえるでしょう。
また、中には団体信用生命保険料が無料になる場合もあります。 いまは超低金利時代ですから、繰り上げ返済による返済額の削減効果が小さくなっています(そのため私は基本的に繰り上げ返済をおすすめはしていません)。
繰り上げ手数料を支払うと、繰り上げ返済をする意味がなくなってしまうようなケースも考えられますから、繰り上げ返済手数料がかからないというのは、借り手にとってはメリットと言えます。
また、コスト面だけでなく、店舗の営業時間にとらわれることなく“24時間いつでも繰り上げ返済”や“残高照会”をすることができるのも嬉しいですね。
ただし、先ほども少し触れたように、店舗を持たないということは借り手にとってデメリットにもなります。まず、ネット銀行の住宅ローンが不動産会社の提携ローンになっているケースはほとんどないと言っていいでしょう。
そのため、提携ローンであれば不動産会社が代行してくれる書類作成や提出といった手続きも自分でやらなければなりません。 また、借り入れする住宅ローンそのものも、どんな商品があるのか自分で調べて、比較検討した上で選ばなければなりません。
そんなときでも、実店舗があれば担当者といろいろ相談しながら話を進めることができますが、ネット銀行ではそうもいきません。問い合わせはコールセンターで受けてもらえますが、実店舗の窓口での対応と比較してしまうと不便と感じてしまう人は多いでしょう。
もうひとつ、ネット銀行の住宅ローンを利用する上で、メリットとデメリットが表裏一体になっているものとしては、「保証料」があげられます。ネット銀行では、保証料がかからない場合が多いのですが、これは借り手にとってメリットでもあり、デメリットでもあるのです。
保証料がかからないというのは、費用面で考えるとメリットです。しかし、保証料がかからない理由を考えると、デメリットもあることがご理解いただけるのではないでしょうか。 保証料がかからないということは、実は“保証会社を使っていない”ということを意味しています。保証会社を使った住宅ローンであれば、仮に返済ができなくなった場合でも、保証会社が金融機関へ代位弁済するので金融機関のリスクはほとんどありません。
ですが、保証会社を使わない場合、万が一の時でも金融機関はローンの代位弁済を受けられませんから、融資を回収できなくなるリスクを負うことになります。そこで、考えていただきたいのが、そうしたリスクを回避するために、金融機関はどういった行動を取るかということです。
その答えは、「融資の審査を厳しくする」ということです。融資を回収できなくなるリスクを避けるために、ネット銀行は「確実に返済してくれる人」を厳しく審査して見極めようとするのです。
そのため、収入や勤務先などが、実店舗型の金融機関に比べても厳しく審査されます。実際、審査基準としても、実店舗型の金融機関では年収150〜200万円以上としているところが一般的ですが、ネット銀行の場合は300万円以上などと高めに設定されています。また、審査にも時間がかかり、申し込みから融資の実行まで数ヶ月かかるケースもあるほどです。
私が実際にネット銀行の融資審査の厳しさを感じたケースがありますので、ご紹介しておきましょう。
ある生命保険会社の営業マンで常にトップクラスの成績をあげていた人がいるのですが、その人が系列企業のネット銀行に融資を申し込んだところ、審査が通らなかったのです。
営業成績も収入も申し分ない上に、系列企業であったにも関わらず、融資審査が通らなかったと聞いて、私は本当に驚きました。そのケースでは、他の金融機関に融資を申し込んだところ、一発で審査が通ったのですが、それだけネット銀行の審査が厳しいことの表れといえるのではないでしょうか。
ここまで見てきたように、ネット銀行は確かに金利が低く、繰り上げ手数料や保証料がかからないといった費用面でのメリットがあるのですが、その代わりに融資審査の厳しさや手続きの手間といったデメリットも受け入れなければなりません。
そう考えると、ネット銀行は、安定した高い収入があり、自分で商品を比較検討したり、手続きを進めたりすることが苦にならず、自分からどんどん考えて動ける人におすすめの選択肢だといえるでしょう。
もうひとつ忘れてはいけないのは、繰り上げ返済手数料や保証料が「無料」にはなりますが、多くの場合は融資手数料が「融資金額の2%(税別)」と定率制になっており、融資金額によっては大きな負担となってしまうことです。
金利や繰り上げ返済手数料が無料といったプラスの面だけではなく、融資手数料の負担や、商品選びや手続きの負担、審査の厳しさといったマイナス面も合わせて考慮してネット銀行を選ぶメリットがあるかどうかを判断してください。
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