住宅ローン控除という制度を知っている方は多いと思います。しかし、住宅ローン控除は決まった期間しか受けられず、申告を行う時期によって控除額が変わってきてしまうことも知っていましたか?
そこで今回は「住宅ローン控除の期間や注意したいポイント」について、日本一住宅ローンに詳しいと自負する住宅ローン博士「窪田光洋」が解説いたします。
つい先日、住宅ローンの一部が免除される住宅ローン控除という制度があることを知りました。お金が免除されるなんて、とてもうれしい制度ですね。
では、この住宅ローン控除が受けられる期間は知っていますか?
期間があるのですか!?
最長35年間住宅ローン控除が受けられるのものだと思っていました。
基本的に2017年現在の制度では、住宅ローン控除が受けられる期間は、住宅ローンの借り入れを行い、かつ入居をした年から10年です。
そうなんですね。住宅ローン控除という名前から、ローン契約を行った日からだと思っていました。
また、この住宅ローン控除の制度は頻繁に見直されているため、今後期間が変更する可能性があります。直近の変更では、2007年(平成19年)と2008年(平成20年)に居住を開始した人は、住宅ローン控除期間が10年または15年の2つの期間から選べる制度がありました。
ややこしいですね。もう少し詳しく知りたいです。
それでは、2009年1月以降に入居をした場合と、2007年1月~2008年12月に入居した場合の住宅ローン控除期間についてみていきましょう。
各年で控除額は異なりますが、2009年から2021年の住宅ローン控除期間は10年です。
ですので、来年の2018年に家を購入しようとお考えの方は、2028年まで住宅ローン控除を受けることができます。
入居を開始した年 | 控除期間 | 控除適用年 | 各年の控除額の計算(控除限度額) |
---|---|---|---|
2009年1月1日~2009年12月31日 | 10年 | 2009年~2018年 | 1から10年目 年末残高等×1% (50万円) |
2010年1月1日~2010年12月31日 | 2010年~2019年 | ||
2011年1月1日~2011年12月31日 | 2011年~2020年 | 1から10年目 年末残高等×1% (40万円) |
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2012年1月1日~2012年12月31日 | 2012年~2021年 | 1から10年目 年末残高等×1% (30万円) |
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2013年1月1日~2013年12月31日 | 2013年~2022年 | 1から10年目 年末残高等×1% (20万円) |
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2014年1月1日~2014年12月31日 | 2014年~2023年 | 1から10年目 年末残高等×1% (40万円) (注)上記の控除限度額は、住宅の取得等が特定取得※に該当する場合であり、それ以外の場合の控除限度額は20万円以下である |
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2015年1月1日~2015年12月31日 | 2015年~2024年 | ||
2016年1月1日~2016年12月31日 | 2016年~2025年 | ||
2017年1月1日~2017年12月31日 | 2017年~2026年 | ||
2018年1月1日~2018年12月31日 | 2018年~2027年 | ||
2019年1月1日~2019年12月31日 | 2019年~2028年 | ||
2020年1月1日~2020年12月31日 | 2020年~2029年 | ||
2021年1月1日~2021年12月31日 | 2021年~2030年 |
※特定取得とは住宅の所得等の対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等が、8%または10%の税率である場合におけるその住宅の取得等をいいます。
2007年(平成19年)に、所得税を減らして住民税を増やすという「税源移譲」が行われました。そこで、今まで通り10年間の住宅ローン控除制度を行っていては、国の所得税の総額が減ってしまうという懸念が生まれました。その懸念に対応する策として、2007年~2008年の控除期間は10年と15年から選択することができるようになりました。
2007年、2008年に入居を開始し10年の住宅ローン控除を選択された方は、すでに期間が終了または今年に期間が終了します。
しかし、15年を選択した方は、まだ適応期間内です。
入居を開始した年 | 控除期間 | 控除適用年 | 各年の控除額の計算(控除限度額) |
---|---|---|---|
2007年1月1日~2007年12月31日 | 10年 | 適用終了 | |
15年 | 2007年~2021年 | 1から10年目 年末残高等×0.6% (15万円) |
|
11から15年目 年末残高等×0.4% (10万円) |
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2008年1月1日~2008年12月31日 | 10年 | 2008年~2017年 | 1から6年目 年末残高等×1% (20万円) |
7から10年目 年末残高等×0.5% (10万円) |
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15年 | 1から10年目 年末残高等×0.6% (12万円) |
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11から15年目 年末残高等×0.4% (8万円) |
もし住宅ローン控除の申告を忘れてしまっていた場合、期間内であれば控除は受けられますか?
そうですね、新規一転で1月に引っ越しをしたいです。
そんな!どんな風に影響があるのですか?
確かにそうですね。ということは、12月に入居を開始した場合は、返済をまだ開始していないため、借入金の全額が控除額の対象。しかし、1月に入居を開始した場合は、一年間返済した後の年末残高が対象となるため、控除額は低くなってしまう、ということですね。
では、12月に実際に入居を開始したけれども、ローン契約は1月に行った場合、住宅ローン控除に影響はありますか?
基本的に、住宅ローン控除は入居した年から10年間受けられる物です。しかし、住宅ローンの契約を行っていなければ、年末時点の残高が存在しません。そのため、入居しているのにも関わらず、本来受けられる控除を1年分損することになってしまいます。
ですので「入居開始」と「住宅ローン契約」は年をまたがないように気を付けましょう。
私も近いうちに、住宅購入をし、住宅ローン控除を受けたいと考えています。しかし、住宅ローン控除が受けられるのは2021年12月31日までに入居を開始した人と知りました。となると2022年以降に家を購入した人は住宅ローン控除を受けられないのですか?
そうなのですね。少しでも住宅ローンを軽減したいので、ぜひこのまま続けてほしいです。
先ほども述べた通り住宅ローン控除の申請は、購入物件への入居開始が条件です。
ですので、「あと少し早く入居していたら控除が受けられたのに」、とならないよう物件引き渡しは2021年までに行ってもらいましょう。
先ほどから住宅ローン控除の申請には入居が条件とおっしゃっていますが、どのように証明するのですか?
すみません。確定申告とはなんですか?
「確定申告」では1年間の所得から納税額を確定し、税務署に申告します。多くの会社員の方は、会社が確定申告をしてくれているため、あまりなじみがないかもしれませんね。
しかし、住宅ローン控除を受ける場合、初年度のみ自身で確定申告を行わなければ、住宅ローン控除を受けることができません。
住宅ローン控除を受けるためには必須の手続きということですね。
確定申告には入居の証明だけでなく、ローンの残高証明等、ほかにも必要な書類があります。
詳しくは【住宅ローン控除(減税)】確定申告に必要な書類と手続きの時期を参考にしてみてください。
確定申告を申請する時期はいつ頃ですか?期限などはありますか?
通常の還付申告はおおむね2月16日~3月15日の期間に行われます。(期限の開始日・終了日が土日の場合変更になります。)しかし、住宅ローン控除の還付申告は1月1日から可能です。
期限は約2か月半と長く感じるかもしれませんが、必要書類を準備するのに時間がかかります。ですので、年が明けたらすぐ申請する意気込みで、余裕をもって準備を進めましょう。
確定申告をどこに申請すればいいのか、申請方法を知りたい方は確定申告の時期と提出方法をご覧ください。
これまで住宅ローン控除を受けられる人は、2019年6月30日までに入居を開始した人が対象でした。
しかし、2016年の閣議決定で、消費税10%への増税が2017年4月から2019年10月へ2年半延期されたことで、住宅ローン控除の適用期間も約2年半延長されました。そのため、現在の住宅ローン控除の適用期間は2021年12月31日(平成33)までとなっています。
住宅ローン控除は年末残高×1%の額が免除されるものです。
そのため、住宅ローンの金利が1%以上または1%以下のいずれかで、繰り上げ返済を行うべき時期が異なります。
住宅ローン控除の減少額よりも、繰り上げ返済の利息減少額のほうが高い場合が多いです。
そのため、住宅ローン金利が1%以上の場合、住宅ローン控除の恩恵をあまり感じられないので、住宅ローン控除期間中から繰り上げ返済を早々に行ったほうがお得です。
住宅ローン控除の効果を最大限に活用できる場合が多いため、住宅ローン控除期間中に繰り上げ返済を行わないことをおすすめします。
そのため、住宅ローン控除期間が終了してから、一気にまとめて繰り上げ返済を行う方がお得になります。
借入額や金利の変動によって上記のケースと異なる場合もあります。ですので、ぜひ一度シミュレーションを行って見ることをおすすめします。
住宅ローン控除の期間について、ポイントと注意点をまとめてみました。
家を購入する際には、住宅ローン控除の期間も意識することをお忘れなく。そして、住宅ローン控除をうまく活用しながら、住宅ローンの返済に役立てましょう!