すみかる住生活版

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子どもの健やかな成長を願うなら、あたたかみある無垢の木の床を

無垢の木の床

子育て中の家庭では、子どもの健康と成長に心を配って住まいや家具を選んだり、部屋のアレンジを工夫したりしますよね。
そして子どもの住環境を考える上で気になるのが、床や壁などの内装の素材。
機能性を追求した合成素材が多く占める現代だからこそ、自然素材の木が見直されています。

学校でも推奨されている「木」の優れた特性とは?

住空間で使う自然素材として代表的なのが「木」。
文部科学省が近年、豊かな教育環境を整備するために、学校の床や壁に率先して取り入れることを勧めているのも「木」です。

あたたかみとうるおいのある木の学校(文部科学省)

文部科学省が木を勧める理由は、何といっても「人の感覚に沿う」という特性です。
木を見たり木に触れたりすると心が安らぐ感覚を思い起こせば、みなさんも納得されるのではないでしょうか。

しかも、木を多く使った学校では子どものストレスが緩和され、集中力が上がり、学習効率が高まったという研究結果や、インフルエンザの蔓延が抑制される傾向も出ているというのですから見逃せません。
科学的にも解明されている木の優れた特性を知って、家族が暮らす住まいでも活用していきたいものですね。

木は、快適な温度と湿度を保ってくれる

では、木の優れた特性とは、具体的にどんなものなのか、見ていきましょう。

まずは、熱容量や熱拡散率が小さいという特徴があげられます。
そのおかげで、床や壁に木を使った部屋では、床や壁の温度と大きな差を生じることなく室温が保たれ、心地よいと感じるのです。

また、熱伝導率が小さいのも特徴です。
冷たい金属やコンクリートに触れていると体の芯まで冷たくなるように感じますが、木は寒い冬でもすぐに肌になじんで温かく感じられるのが、その証です。

文部科学省の資料では、足元の冷えは倦怠感や眠気を誘発し、作業能率を下げるという研究分析も報告されています。
あたたかみのある木の床と比べて、「眠気とだるさ」「注意集中の困難さ」を訴える割合も、作業の失敗率も、冷たいコンクリートの床の場合の方が高くなるというのですから、床の素材選びがどれだけ重要かがわかります。

また、木には湿度を吸ったり出したりする性能もあります。
湿気の多い時は空気中の水分を吸着し、乾燥している時は放出し、空間の湿度を快適に保ってくれます。
いわば自然の調湿機として働いてくれるのです。

このように快適な温度と湿度を保つよう機能する上に、元来持っている抗菌性も働きます。
こうした多様な特性が総合的に有効に働くために、内装に木を多く使った学校でインフルエンザの蔓延が抑制されると分析されています。

視覚や聴覚にも、好ましい影響を与えてくれる木

自然な木の木目模様は、見ているとなぜか心が落ち着きます。
それは、人口的な規則的な模様とは異なる「ゆらぎ」を与えてくれるからだと言われています。

また、木の表面から反射される光は柔らかく感じられます。
どんなに平らに削られていても、表面には細かな凹凸があり、光を時間差で拡散反射するためです。
コンクリートや大理石などの無機材料よりも有害な紫外線を吸収する効果も非常に高く、目の疲れが軽減されることもわかっています。

一方、木は音を吸収する性質が高く、耳障りな残響音が少なくなるという特性もあります。
コンクリートと比べると、残響音が1/10になったという実験結果もあるほどで、特に高周波数の音を吸収する傾向が強く、キンキンとした音が緩和されます。
同じ音でも、内装に木を多く使った室内ではまろやかな声や音楽に感じられるのは、そのためです。

おしゃべりしたり、名を呼び合ったり、歌ったり、音楽を聴いたり、テレビを見たり……毎日の暮らしに響く音が、家族の心理にどんな影響を与えるかを考えると、やはり床や壁に木を使いたくなりますね。

心身の健やかさを願うなら、できるだけ木を

ショッキングな実験結果も、文部科学省の資料で取り上げられています。

コンクリートの飼育箱で飼われたマウスは、成長過程が貧弱かつ短命な上に、産まれた子を噛み殺した実験例があるというのです。

鉄筋コンクリートの校舎では木造と比べて、子どもも教師も疲労度が高く、眠気やだるさを自覚し、注意集中力も劣るほか、逃避とみられる保健室利用が目立つという指摘もあります。

無意識のうちに建材から、これほどまでに心身に影響を受けているとは驚きです。

これまで見てきたように、温度や湿度を快適に保ち、視覚や聴覚にも穏やかに働いてくれる木。
香りが気持ちを静め、気分を爽快にしてくれることは、付け加えるまでもないでしょう。
ストレスの多い現代社会だからこそ、心地よく心身のバランスを整えてくれる木の力を求める時代になっているのです。

子どもの暮らしに向くのは、どんな床材?

子育て家庭の床材選びを考える上で、参考になる実験結果があります。
保育園で、仕様の異なる4種類の床材を敷いた部屋を用意し、3〜5歳の子どもに自由に遊んでもらうという実験です。

子どもたちが選んだ心地よい床(住友林業)

突板、無垢、オイルフィニッシュ、シートの4種の床の部屋を、子どもたちが「落ち着いて長時間滞留する部屋」「気持ち良さそうに長時間寝転ぶ部屋」という2つのアプローチで観察したところ、子どもたちに選ばれたのは無垢の床だったというのです。

「汚れにくい」「価格が安い」「施工しやすい」といった大人の事情の先入観のない子どもたちが、自然と選んだのが木の床。
それも薄くそぎ取った木材を表面に貼った突板の合板フロアよりも、オイル塗料を塗った複合フロアよりも、ビニールシートよりも、子どもたちは木そのものを板にした単層フロアの無垢の木を選んだのです。

子どもの心地よさと健やかさを考えるなら、やはり無垢の木の床。
住まいの環境を考える上で、まずは床の素材選びの優先順位を高くしてはいかがでしょうか。

まとめ

床や壁などの内装にも、機能性に優れた合成素材が多く開発されてきた現代ですが、人の生体に調和するバランスのよい住環境を考えるなら木材よりも優れているものはないと考える専門家が増えています。
「木」といってもいろいろな種類がありますが、農産物と同様に「地産地消」が環境にも健康にも優れた面がたくさんあります。
家族の健康はもちろんのこと、お住まいの地域の自然と林業、そして地球環境も視野に入れて選びたいものです。

《執筆》
SMALL WOOD TOKYO 安田知代
http://smallwood.tokyo/

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