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人気ベビーシッターが語る!産後クライシスを乗り越えるヒント

遠くを見つめる女性
「産後クライシス」とは、NHKの情報番組が作った造語で、「産後2年以内に夫婦間の愛情が著しく冷めてしまう現象」をいいます。

これを書いている私はベビーシッター経験者で、ベビーシッター歴10年になります。お子さんのお世話や家事をすると同時に、多くのママの相談にものってきました。

今回は、その中で「産後クライシス」だったママ、Aさんの事例と乗り切り方をお伝えします。

なぜ夫にイライラするのかわからない

1分岐点
産後クライシスに陥ったのは、初めて出産を経験した、30代半ばのAさんでした。彼女は、同じ職場にいた男性と結婚し現在は育児休暇中です。

都心に近い3階建ての一軒家にお住まいでした。『その若さで一等地に一軒家なんて、ご主人はやり手の方なんだなあ。こんな素敵なおうちに住めて幸せなママだな』と思いながら、ベビーシッターのお仕事に伺っていました。

ある日のことです。とてもチャーミングで明るいそのAさんが、少し暗い顔でこうおっしゃるのです。

Aさん「最近、なぜか夫にイライラしちゃうんです」

私「どんなときにイライラしちゃうんですか?」

Aさん「夫を見ているだけで、そうなってしまうんです」

私「見ているだけで?」

Aさん「ええ。夫は、家事にも育児にも協力的なんですよ。家にいるときには、おむつも替えてくれますし、泣くとあやしてもくれます。特にここが嫌いっていうところはないんです。むしろ感謝しているくらいなんです。でも、夫が近くに来るだけで、なぜかイライラしてしまう自分がいるんです」

100件のお宅に伺うと、100通りの家庭があります。
夫が朝食を作ったり、掃除機をかける係だったりという家庭。ウォッシャブルスーツを購入し、それを夫自身で洗濯する家庭。下の子どもが生まれたら、休みの日は夫が上の子どもを外に連れ出して遊んでくれる家庭もあります。

このように、夫が家事や育児に協力的な場合もあれば、仕事が忙しいからと、何ひとつやってくれなかったり、中には「誰のおかげで生活できてると思ってるんだ」と暴言を吐く夫がいる家庭もあります。

家事や育児に協力的な夫がいれば、産後クライシスに陥らないかというと、Aさんの例のように、そうではないことがわかります。

ママは、妊娠、出産という人生の一大仕事を終えてからも、休むことなく赤ちゃんの世話をしなくてはなりません。また、妊娠中に生成されていた女性ホルモンが、出産を終えると急激に減少してホルモンバランスが崩れるという、身体的なこともイライラの原因になることがあるのです。

ご自身も初めての育児で不安がいっぱいで、心に余裕がなく、夫が育児に積極的に参加してくれても、自分ほど上手にこなせず、苛立ちが募ることもあります。

そうは言っても、産後クライシスになった方の多くは、なぜ自分が夫にイライラしてしまうのか、わからないのではないでしょうか。

夫からの感謝の言葉でわかったイライラの原因

それから数か月たったときのことです。夫にイライラする自分をもてあましていたAさんが、明るい顔で、こう話してくれたのです。

Aさん「先日、息子の1歳の誕生日だったんです。夫は、息子にプレゼントを買ってきてくれました。そのときに、一緒に花束を買ってきてくれて、私にプレゼントしてくれたんです」

私「まあ、それは良かったですね!」

Aさん「そのときに夫がこう言ってくれたんです。『1年間、お疲れさまでした。大変だっただろう』って」

私「素敵なご主人ですね」

Aさん「そのときにわかったんです。“私がこんなに大変な思いをして子育をてしてるのに、夫はそのことをわかっているんだろうか。家にいるときに手伝ってはくれるけれど、私の苦労なんてわかってないんじゃないか”って、心のどこかで夫に不満を持っていたんですね。
子育ては、するのが当たり前で、やったから誉めてもらえるものでもないですよね。もしかしたら、頑張って子育てしている自分を誉めて欲しかったのかもしれません。頑張ってることを、認めて欲しかったのかもしれません」

これは、どのママにも言えることかと思います。昔から今に至るまで、子育てで頑張っても、ママが誉めてもらえる機会は少ないですものね。

寒い冬の夜に数時間ごとに起きて授乳したり、お風呂に子どもを入れるのに精いっぱいで、自分はゆっくり入る時間がなかったり、場合によっては食事すら座って食べられないほど忙しい子育て。でも、すごいね! 頑張ってるね! となかなか誉めてはもらえません。

1人でゆっくりする時間もとれず、子どもとだけ向き合う生活に、時として社会から1人、取り残されていく焦りもあることでしょう。

Aさんは続けて言います。

Aさん「夫は無口で、必要なこと以外はあまりしゃべらない人なんです。今回、夫から、大変だっただろうという言葉をもらえたときに、私の苦労をちゃんわかってくれていたんだと嬉しかったんです。でも、それを口にしてもらえなかったから、私にはわからなかったんですよね。なので、夫にお願いしたんです。
『これからは、そういうことも、ちゃんと言葉にして伝えてね』って。」

私「お互いわかっているだろうと思って、口にしないことって、多いかもしれませんね」

Aさん「まだ、ぎこちないですけれど、頑張って伝えてくれようとしていることだけは伝わってきて、お願いして良かったなあと思います」

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