照りつける太陽の光。
にぎやかな蝉の声。
今年も、汗ばむ季節がやってきます。
わが家では、リネンが夏の定番素材として、とても重宝されています。年々、柔らかくなじんでくる風合いは、とり出すときのちょっとした楽しみでもあります。
一般的に、リネンは硬くてゴワゴワしているという印象をもたれており、敬遠する方が多いようですが、硬い質感のものはヘンプ材(大麻)であり、亜麻を原料とするリネンではありません。
ナチュラルな色合いが多く、お部屋のインテリアとしてもなじみやすいリネン。なにより、実際に体感できる涼しさとリラックス効果を、この夏「暑い!」となげく前に、ぜひとり入れてみませんか。
人類最古の繊維 リネンの歴史を知ろう
人類がリネンを使い始めて1万年といわれています。
古代エジプトでめばえ、時を経て、中世ヨーロッパでみがきあげられたリネンは、やがて文化として一般に広がっていきました。
ヨーロッパの良家では、現代でも、家風、品格、美意識の象徴として、母から娘へ、娘から孫へと、嫁ぐ日に託される大切な家伝の品とされています。
英国王室の正式晩餐会のテーブルや合衆国ホワイトハウス、日本の宮中正式晩餐など、格式と権威を重んじる場では、必ずリネンが採用されています。
日本では、明治時代以降に、初めて植物性繊維としてリネンが栽培されました。他国に比べて歴史が浅い分、生活へのなじみが薄いといえます。
(「テイセン」サイトより出典: http://www.teisen.co.jp/teisen_story/story_of_linen.html)
夏こそ発揮 リネンの魅力をもっと知ろう
リネンにはどんな特徴や魅力があるのか、ご紹介します。
リネンって、こんなに優秀な素材だったの?
リネンの強度は、コットンの2倍、ウールの4倍と、天然素材の中で最も強い素材です。熱の伝導性も最も大きく、体温を奪って放熱させ、涼感を与えてくれます。
また、コットンやシルクに比べ、吸水性・吸湿性が高く、発散も速いので、汗ばんでも肌にべたつきません。湿度が高くジメジメとした日本の夏に、まさに最適な素材といえます。
「シワになるから嫌い」と避けていたらもったいない
素材の柔らかさに触れる前に、シワを嫌がる方も少なくありません。確かに、リネンは伸びの回転率が低いため、変形するともとに戻りにくく、シワになりやすい素材といえます。
反面、そのシワによって、身体に接する面積が少なくなり、清涼感をあたえてくれるのです。コットンのシワより、ずっと優しくおしゃれに感じるのは、リネンファンのひいき目でしょうか。
リネンと長く付き合うための心がけ
水に濡れるとさらに強さをましていくリネンは、一部をのぞき、家庭で水洗いできます。
無蛍光洗剤を使う、脱水を軽めにする、手でたたいてシワを整えてから干すなど、少しだけ気をつけてあげることで、ずっと長持ちし、肌になじんで愛着もわいてきます。
アイロンをかけると特有のハリと光沢が出ますが、夏には大変な作業。蒸気でシワが伸びるので、バスルームの中にかけておくだけでも十分です。
心にも優しい素材 リネンのアイテムを知ろう
リネンがどんなアイテムに使われているのか、ご紹介していきます。
清涼感第一の寝具、パジャマなど
リネンの吸収性はコットンの4倍。繊維に張りやぬめりがあるので、肌への張りつきがなく、朝まで爽やかです。
特に汗をかきやすい男性は、快眠のためにも、ひんやり感のあるリネン素材の寝具を取り入れて、夏バテ対策することをおすすめします。
また、夏の素材と思われがちですが、繊維の中に空気が含まれ、天然サーモスタットの役目をしているので、寒い季節にはあたたかく、オールシーズン活躍します。
汚れやすいラグマット、テーブルクロスなど
天然素材の中で最も汚れが落ちやすく、洗濯にも強いリネン。大きな分子が繊維内に入りにくい構造となっているので、もとより汚れにくく、小さなお子さんがいる家庭でも安心して使用することができます。
また、リネンはお部屋の空気を吸ったり吐いたり呼吸をしています。大切な家族の健康はもちろん、環境にも配慮された素材です。
リラックス感をうながすカーテンやインテリア小物など
とり入れやすいリネンのインテリア小物は、柔らかな肌触りのほか、自然由来の優しい発色で、見た目からもリラックス効果を感じることができます。風や光をほどよくとり入れてくれるリネンカーテンは、木漏れ日のように優しい印象で、ホッとする空間をつくります。
また、静電気が起こりにくいので、ほこりが付きにくく清潔です。最近では、防炎・防縮加工などをしてくれるショップも増え、さらに人気が高まっています。
衛生面重視のバス・キッチン周りのマット、タオルなど
リネンは、すぐに乾いて防カビ性に優れ、雑菌の繁殖や臭いも抑えてくれて衛生的です。そのうえ、洗うたびに柔らかくなり、白さが際立っていきます。特に、洗濯回数が増える夏には、一度使ったら手離せなくなる素材です。
また、キッチンクロスは毛羽が少なく、ガラスのコップを磨くときに最適です。多くのソムリエが、ワイングラスのお手入れなどに使っています。
リネンと過ごす快適な夏 心と身体に涼をよぼう
エコロジー時代の繊維として、年々、注目が高まっているリネンは、土の栄養をどんどん吸いとって成長します。一度育てた土地は、次の年から6~7年、畑をお休みさせないといけないといい、リネンの強い生命力を物語っているようですね。
また、肌に優しい素材は、心にも優しく感じられます。リネンは、暑い夏にゆとりをもって生活するために、自然から私たちに送られた最高のプレゼントかもしれません。
ぜひ、使いやすいリネンのアイテムをとり入れて、この夏を、涼しく快適にお過ごしくださいね。
文:ツキヤタケコ