2020年10月22日(2023年01月22日更新) 老後資金の準備
2022年4月より、年金の繰り下げ受給の上限が70歳から75歳に引き上げになったことをご存知ですか?
実は、上限が75歳に引き上げになったことで、年金受給額が最大84%増えるんです!
そこで今回は、年金制度改革で変わることや年金の繰り下げ受給のメリットデメリット、損益分岐点は何歳なのか?などについてお伝えします!
目次
年金制度改革は、2020年5月に参議院本会議で成立した法案です。
まずは、年金制度改革の主な改正内容と変わる時期を見ておきましょう。
豊かなセカンドライフに向け、簡単にできるところからピースをはめてパズルを楽しむように、今後の人生とお金の計画を立てて、老後という大きな絵を描いてみてはいかがでしょうか。
今回の改正は、短時間労働者の適用範囲が拡大されるほか、60歳以上の人生設計の多様化に柔軟に対応できるような内容になっています。
今回の改正は、短時間労働者の適用範囲が拡大されるほか、60歳以上の人生設計の多様化に柔軟に対応できるような内容になっています。
しかし、対象拡大や要件緩和は老後生活を高齢者自身に委ねる部分が増えたともいえますね。
今回はこの中でも、2022年4月より施行となった、「年金受給開始年齢の引き上げ」について詳しくみていきます!
2022年4月より年金の繰り下げ受給年齢が75歳に引き上げられましたが、そもそも繰り下げ受給とはなんなのでしょうか?
ここでは、繰り下げ受給と繰上げ受給の違いについて簡単に説明します。
「年金繰り下げ受給」とは、65歳からもらう年金を65歳以降に遅らせることを指します。
繰り下げ受給をすると、遅らせた期間に応じて、毎月の年金受給額が増額されます。
年金制度改革が施行されるまでは、年金の受け取りを開始できる年齢は、65歳を基本にして60歳〜70歳までの間でした。
これが今回の改正で、60歳〜75歳までの間に拡大されることとなりました。
一方、年金の受給開始年齢を60歳~64歳に前倒しすることを「繰り上げ受給」といいます。
こちらを利用すると、定年退職後すぐに年金を受け取ることができますが、繰り上げた期間に応じて年金受給額が減額となります。
年金を繰り下げ受給するメリットについて説明します!
繰り下げ受給の最大のメリットは、なんといっても1ヶ月あたりの年金受給額が増額されることでしょう。
繰り下げ受給では、年金額が1カ月あたり0.7%の増額されます。
そのため、年金額は70歳までの繰り下げで42%増額、75歳までの繰り下げでは84%の増額になるんです!!
もっと具体的に、近年の1人あたりの平均的な厚生年金(老齢基礎年金を含む)の月額145,000円で計算してみましょう。
となります。
かなり金額に差が生じますよね。
この結果からも、受給開始年齢の選択肢が増えるといえます。
選択肢を多く持てることは、年金受給者にとって悪いことではないでしょう。
年金受給額が最大84%も増えるのは大きなメリットですが、受給額が増えることによるデメリットもあるのです。
まず、繰り下げ受給をして75歳から年金を受け取った場合、その後長生きできれば問題ありません。
しかし長生きできなかった場合には、60歳から年金を受け取っていた場合に比べて年金の総受給額が少なくなるというデメリットがあります。
損益分岐点は12年なので、受給開始後12年以内に死亡してしまった場合は、受給総額が少なくなり、損したことになります。
いつ自分が亡くなるのかを知ることができないので難しい問題ではありますが、いつから年金を受け取るのか決める際には、老後のライフプランや資金問題も考慮する必要があるでしょう。
また、繰り下げ受給によって受給額が増えることは大きなメリットですが、受給額が増えることで税金や社会保険料も同時に増えるため、思ったよりも手取り額が増えていないというデメリットも忘れてはいけません。
税金には所得税や住民税が、社会保険料としては国民健康保険料や介護保険料がそれに該当します。
社会保険料や所得税・住民税は受給する年金から天引きされるのが原則ですので、実際の手取り受給額がどれくらいになるのかを事前にシミュレーションしておく必要があるでしょう。
夫婦の年齢差によっては、年下の配偶者が加給年金を受け取れないというデメリットもあります。
加給年金は、厚生年金の被保険者の厚生年金被保険者期間が20年以上で、かつ65歳になったときに生計を担っている場合、条件を満たした配偶者や子に加算される扶養手当のようなものです。
しかし、被保険者本人が、年金の繰り下げをしている間は加給年金はもらえません。
加給年金は、配偶者が65歳になったときに支給が終了しますので、被保険者が繰り下げをしている間に配偶者が65歳になるかどうかは重要なポイントです。
もちろん、長生きすることが確定してる場合には、繰り下げ受給がおすすめですが、それは誰にもわからないことですよね。
では、繰り下げ受給はどんな人におすすめなのでしょうか?
定年退職後も再就職して働こうと考えている場合には、すぐに年金を受給せず、老後のために少しでも年金受給額を増やしておくのもおすすめです。
ただし、再就職といっても現役の頃と比べ給与が少なくなる可能性が高いため、老後資金にゆとりがあるかどうか、事前に確認しておきましょう。
国民年金のみの場合は、厚生年金にも加入している会社員や公務員と比べて受給できる年金額が多くはありません。
年間で約78万円になります。
そのため、すぐに年金を要しない場合には、繰上げ受給をして、老後に受け取れる金額を少しでも多くしておくのがおすすめです。
また、繰上げ受給に向いてない人としては、
などが挙げられます。
さて、75歳まで繰り下げ受給すれば年金の受取額が最大84%も増える改正は、本当にお得なのでしょうか。
皆さんが気になるところだと思います。
厚生労働省の統計データを見ながら考えてみましょう。
今回は難しい計算式は省略して、できるだけ分かりやすく説明したいと思います。
厚生労働省が公表している統計データ「主な年齢の平均余命」によると、平成30年の65歳と75歳の平均余命は以下の通りです。
※平均余命とは、ある年齢からあと何年生きることができるのかを算出した平均値です。毎年、厚生労働省の「簡易生命表」で発表されます。
日本年金機構が公表している令和2年の毎月の厚生年金受給額220,724円 (注1) を目安として計算すると、75歳まで繰り下げた際の損益分岐点は11年11カ月後の86歳11カ月です。
この時の年齢別受給額は以下の通りです。
ただし、厚生労働省が公表している平成30年のデータによると男性の出生数の半数が84.23歳で死亡しているため、平均余命とともに見ても万人にお得であるとは言いがたいですね。
注1: 夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額
繰り下げ受給によって年金額が増えるのは嬉しいですよね。
しかし、損益分岐点を気にするだけで良いのでしょうか。
繰り下げ受給で受け取る年金額が多いほど、税金や社会保険料も増えます。
そのため、手取金額が少なくなってしまう点には注意が必要です。
受給開始年齢は、1度しか選択できません。
損をしないためにも「いつまで生きているか」という年齢面だけではなく、「今の健康状態はどうか」「いつまで年金を受け取らなくても生活ができるか」なども受給開始年齢を選択する上で重要なポイントです。
よく考えて慎重に選ぶようにしましょう。
今回は、2022年4月より施行された、年金受給開始年齢の引き上げについてお伝えしました。
一番のメリットとしては、受給額が最大84%増えること。
デメリットとしては、受給額増額による税金の負担増や、加納年金の受け取りができなくなることが挙げられます。
ご自身のライフスタイルにあわせて、どのタイミングで年金の受け取りをスタートさせるのがベストなのか、早い段階から考えておくことが大切です。
老後の人生設計は難易度の高いジグソーパズルだという考えもあります。
豊かなセカンドライフに向け、簡単にできるところからピースをはめてパズルを楽しむように、今後の人生とお金の計画を立てて、老後という大きな絵を描いてみてはいかがでしょうか。