生活スタイルの変化や、子どもの誕生、成長にともなってマイホームの理想形も変化します。家具を買い足したり、配置替えをしたり、思い切ってリフォームをしたり。
それぞれのご家庭で工夫を凝らして、住みよい我が家を目指されていることでしょう。今の住まいでは解決出来ない場合は、家そのものを替える(住み替え)ことを考えるご家族もいらっしゃると思います。
今回は、長男のひとり部屋問題を機に、住み替えを考え始めたまんまる家族(仮名)のお話をご紹介します。
4人家族が住み替えを考えるとき
まんまる家族は4人家族。自宅で仕事をすることの多い会社員のお父さん、お料理教室やママ友とのランチに忙しい専業主婦のまんまるさん、小学校高学年の長男と、低学年の長女です。
今の住まいは、10年前に新築で購入した南東向き角部屋、3LDKのマンション。明るいリビングにつながった和室には、父、長男、長女3人分の机を並べ、主寝室は夫婦用、もうひとつの寝室に2段ベッドとピアノ。長男が「自分の部屋がほしい」と言い出す日まではうまく使い分けて、機能しているようでした。
まんまるさんは考えます。「小学生のうちはこれでいい。家事をしながらでも目が届くし、勉強も見てあげやすい。でも中学生になったら?」
中学生になると、部活やテスト勉強などで生活サイクルが変わります。それに、子どもたちの性別が違うので、いずれそれぞれの個室が必要になるでしょう。ここから、まんまる家族の新居探しが始まります。
住み替えの条件を整理しよう!
新居を探すと決まったら、まずは条件を整理しましょう。まんまる家族の最優先の条件は学区でした。小学生にとって、親しいお友だちと離れることは大問題。まして転校となると、生活が一変してしまうので、慎重な判断が必要です。
次に、部屋の数。夫婦の寝室、兄妹それぞれの部屋、できればお父さんの仕事部屋も確保したい。4LDKか、4LDKにリフォームできそうな3LDKを探します。
さらに、日当たり。日当たりの悪い家に引っ越すくらいなら、少しくらい手狭でも現状維持というのが、まんまるさんの希望です。
このように、家族全員の希望や理想形を話し合い、事前に共有しておくことが大切です。
まんまるさんは、インターネットや折り込みチラシでご近所の不動産情報をチェックするようになりました。不動産業者に条件を伝え、「新しい物件が出たら教えて」と言っておくと、情報公開前に声をかけてもらえる場合もあります。
条件の合う物件を見つけたら、いざ内見へ!
学区内、3LDK以上、日当たり良好。なかなかの狭き門です。ただし、長男が中学生になるまでには少し余裕があり、急ぐ必要はありません。
一般的には、新年度が始まる前の2〜3月ごろと、転勤や異動の多い9〜11月ごろが、不動産が動くと言われる時期。その頃なら、希望に近い物件が出るかもしれないと、まんまるさんは「中古マンション」に照準を定めました。
しかし、ハイシーズンを待つことなくその日はやってきます。まんまるさんは、郵便受けから取ってきたばかりのチラシに目を止めます。学区内にあるその物件は、今よりだいぶ広めの3LDK、南東向き角部屋! リビングは、一部屋つぶして広くしたとありました。ならば元に戻して4LDKにすることも可能でしょう。収納スペースもたっぷり、まんまる家族の理想以上の物件です。
紙面で条件をクリアしたら、もう内見しかありません。すぐに担当者に電話をかけました。すると、もっと嬉しい展開が待っていました。上層階に未公開物件があったのです。元々は先の物件と同じ間取りで、なんと4LDKのまま! まんまる家族、テンションマックスです。
中古物件は、設備や内装、壁紙の状態などが物件ごとに全く異なります。床暖房や浴室乾燥機、食洗機などの有無もそれぞれです。大幅な修繕やリフォームが必要になると、その費用も侮れません。たばこの臭い、ペット臭、香水の残り香などは、壁紙などを張り替えても残ってしまう場合があります。そのまま住めそうか、リフォームするのかを考えながら、内見すると良いでしょう。
さてさて、まんまる家族は4人揃っていざ内見へ向かいました。リビングの広い3LDK物件Aと上層階の4LDK物件B。面白いほどに別物だったようですよ。
3LDKの物件Aの売主さんは、初老のご夫婦。日当たりは抜群で、全体的に白を基調とした明るいイメージ。広々としたリビングには上品なイタリア製の家具が整然と並び、モデルルームのようです。「家具付きでいかがですか」と、夢のようなご提案まで。まんまる家族もウキウキしながら内見を済ませました。
続いて上層階の4LDK物件Bです。こちらは、ナチュラルな木目調で、ぐっと落ち着いた印象。驚いたのは、建具や壁紙の状態です。実はまんまるさん、電話の段階で、事前情報をもらっていました。「売主さんは室内でワンちゃんを飼っていて、全面リフォームが必要です」と。それにしても、長女が小声で「このおうち、ちょっときたないね」というほどの荒れ具合。建具に穴があき、壁のいたるところにシミがありました。
正直、心踊る内見ではありませんでしたが、まんまるさんはあることに気づきます。ワンちゃんの臭いが全く気にならないのです。売主さんにお聞きしたところ、臭いの少ない犬種だとか。これは重要なポイントです。
まんまる家族のケースように、かなり希望に近い中古物件を、2件同時に見られることはとても稀です。たいてい、該当の1件が有りかなしかという状況になるでしょう。
家族会議 〜住み替え決行か、保留か〜
まんまる家では、家族会議が始まります。選択肢は3つ。物件Aか物件Bか、現状維持か。長男は住み替えに乗り気。小学校は遠くなりますが、中学校は目の前。小学校生活が残り少ない彼にはむしろ好都合で、何より自分の部屋が手に入ります。長女も「小学校が遠くなってもお部屋が広いほうがいい」と言いました。まんまる家族、住み替え派が優勢のよう。
では、AとBではどちらがいいでしょう。子どもたちは、モデルルームのようなAを推します。「キレイだったし、あのかっこいい家具もつけてくれるって」と。住み替えと同時に、家具も一新するのはなかなかハードルの高いこと。それがいっぺんに叶うチャンスかもしれません。
でもまんまるさんは、もっと楽しいことを考えていました。「Aはとっても素敵だったけど、まんまる家族の雰囲気とはちょっと違う気がしたよ。それならBを、まんまる家族らしくリフォームしたらもっともっと素敵にできるんじゃない?」これにはみんな大賛成!
まんまる家族にとって、これこそ夢のお家になりそうな予感、みんなの胸が高鳴ります。ここまできたら、あとはお父さん次第。今の住まいをどうするか、資金繰りをどうするか。住み替え決行か、保留か……!?
まとめ
まんまる家族の住み替え、どうなったと思いますか? 希望通りの物件に出会い、具体的に動き出そうとした矢先、なんとお父さんに転勤の話が浮上しました。これは全くの想定外。残念ながら、住み替えは無期延期となりました。
しかし、まんまる家族の理想の住まい探しは、これからもずっと続くでしょう。どこにいても、家族そろって笑って過ごせる明るいリビングがあればいいなと、まんまるさんは願っています。
文:なつのはな